「ウエストミンスター・レガシー～室内楽コレクション」から

先日、Ｈ○Ｖさんで、ウエストミンスター・レガシー～室内楽コレクション(59CD）を買いました。少し前に、ネットで発売を知りましたが、その質と量に驚きを禁じ得ませんでした。これは、かのウェストミンスター・レーベルから出ていＣＤを集大成したものであり、それが、59枚セットで、15000円ほど。近年の激安ＢＯＸの中でも、出色のものであり、これは是非買わなければ、と思い、注文した次第です。こんなに安くでいいのか！と思ってしまうものです。

ウェストミンスターは、1949年に設立され、ウィーンで活躍する音楽家を中心にした室内楽の録音で有名なレーベルであります。バリリ四重奏団、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団、ウィーン・フィルハーモニー木管グループや、レオポルト・ウラッハ、イエルク・デムス、バドゥラ=スコダなどウィーン・フィルのメンバーで構成されていたグループやウィーンで活躍していた演奏家たちの名演奏の宝庫ともいうべきもの。いわゆるウィーン風の演奏がそこには展開され、ゆったりとした優雅で情緒たっぷりの室内楽は、かけがえのないものでありました。

私もその昔、ＬＰの時代にこのレーベルの演奏を中古やさんなどで見つけては買っておりました。その後、復刻というふれこみでＣＤ化されていましたが、国内盤しかなく、けっこう高かった印象があります。ですので、ＣＤも中古やさんで買うことが多く、ボツボツ買っておりました。録音は、ほとんどモノラルなんですが、ほとんどそれも気にならないような名盤であり、特に、モーツァルトの室内楽の演奏には好きなものが多かったのです。

ということで、このレーベルの演奏は、このブログでもいくつか言及したものもあります。今回は、ベートーヴェンの七重奏曲です。バリリ四重奏団とＶＰＯ木管グループの演奏。1964年ウィーンのコンツェルトハウスでの録音です。この曲は、その後ウィーン八重奏団やＶＰＯやＢＰＯの奏者たちの演奏を聴くことができますが、やはり原点となるものは、この演奏ですね。実はＬＰでもこの演奏は持っています。

この演奏は、なんと言っても当時のＶＰＯの名手たちの甘く、気品のある名演奏が満喫できるところがいいですねえ。まず、ヴァイオリンのバリリの優美な響きは、第１楽章から堪能できます。甘く上品である上に表情や情感たっぷりのヴァイオリンは他では聴けませんね。そして、第２楽章アダージョ。ウラッハのクラリネットです。これまた繊細で表情豊かなクラリネットは、絶品ですね。これにバリリのヴァイオリンと中心に弦が絡み、もう恍惚とした美しさ、そしてゆったりとしたテンポから醸し出される気品は、時のたつのを忘れてしまいます。このアダージョはほんとにいいです。第３楽章メヌエット。中間部でのフライベルクのホルンが登場しますね。そして第４楽章変奏曲。ドイツ学生歌風の主題に五つに変奏。第一変奏は弦の三重奏、第二変奏は全合奏、そして第三変奏クラリネットとエールベルガーのファゴットが歌う。このファゴットも雄弁であり、かつ優雅です。そして、第４変奏ではホルンに対してファゴットとクラリネットなど、変奏曲の展開の中、身を演奏の中に浸すことができますねえ。第５楽章はスケルツオ。ホルンが活躍し、フライベルクのホルンも優美です。これにバイオリン、そしてチェロが加わるが、この演奏では実に活気あふれる楽章です。ソナタ形式ですべての楽器が活躍。終楽章にふさわしい陣容であります。活気と愉悦感に満ちた表情たっぷり。七つの楽器がそれぞれの役割と表情を生き生きと演奏しているところに、ベートーヴェンの曲の凄さと、名手たちの技を十二分に堪能できます。

このＢＯＸ，韓国ユニバーサルの製作ですが、一枚一枚オリジナルジャケットの紙ケースに入り、その中にビニールの袋にＣＤが入って収められています。非常に丁寧なつくりになっています。韓国ユニバーサルの誠意を感じるＢＯＸであります。
（WESTMINTER DG40020 輸入盤 2012年）