常住坐臥

ブログを始めて10年。
老いと向き合って、皆さまと楽しむ記事を
書き続けます。タイトルも晴耕雨読改め常住坐臥。

冬麗

2018年01月05日 | 日記


新年になって5日目、日が暮れるのが少し遅くなったような気がする。雪が続いて、空に青空が見えるとほっとする。昨日の最高気温が1.5℃。気温が低いが、日が射すと積もった雪がたちまち融けていく。冬の日の青空を俳句の季語で冬麗という。プレバトの俳句番組で知った。

冬晴れやみひらきし瞳の痛むほど 大関 靖博

村上春樹『海辺のカフカ』読了。家出をした少年カフカが、四国の松山の図書館に住み込み、ほぼ2週間ほどの不思議な体験が語られる。ギリシャ神話の「オイディプス伝説」を下敷きにした父殺しと実の母、姉と肉体関係を結びながら、その体験から成長して帰還する話だ。とはいえ、父が死ぬのは、カフカが家出をして夜行バスを乗り継いで、四国の松山へ着いた後であるし、母に擬せられているのは、松山で住むことになった甲村図書館の管理人で、カフカが母であって欲しいと願望する女性だ。姉に至っては、夜行バスで偶然一緒に隣合わせた美容師だ。一夜その美容師のアパートに泊めてもらうが、美容師は二人は男女の関係でなく、姉弟の間であることを強調する。その出会いに母や姉である必然性はない。

物語は経過する短い時間とは無関係に、驚くような展開をみせる。記憶を失ったナカタさんが、「入口の石」を求めて辿り着く甲村図書館。少年田村カフカが家出して、行き会うことになる佐伯さん。その入口は変哲もないレコード盤ほどの丸い石である。そこは現実から無意識の世界、生から死の世界への入口になっている。ナカタさんも、佐伯さんもその二つの世界を経験している。その入口となるのが、この「入口の石」だ。少年カフカが家出で体験するのもまた、この向こう側にある世界へ足を踏み入れる。世界で最もタフな15歳。全く無関係に見えるカフカとナカタさん、二組の四国行きが、怪奇現象をともなって展開される。一気に読み進むことができる、面白い村上春樹ワールドが、この小説に詰まっている。
コメント
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