みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく62〜初音」

2016-12-31 19:16:28 | ブログ連載~しずく
 その日の下校(げこう)時間、校門(こうもん)の前に神崎(かんざき)つくねの姿(すがた)があった。彼女は誰かを待っているように、通り過ぎて行く生徒(せいと)たちを見つめていた。そして、一人の生徒に声をかけた。
「ねえ、ちょっといいかしら? あなたとお話がしたいんだけど…」
 つくねが声をかけたのは川相初音(かわいはつね)だった。水木涼(みずきりょう)と同じく、しずくと仲(なか)の良かった友達の一人だ。操(あやつ)られた涼にしずくが襲(おそ)われる直前、初音が言った〈しずくと仲良しじゃなかったの?〉という言葉が気にかかっていたのだ。初音が二人の仲を知っているはずがない。
 初音は何の違和感(いわかん)もなく答えた。「あら、何かしら? でも、あたし、これから塾(じゅく)があるのよ。歩きながらでもいいかしら? 一緒(いっしょ)に帰りましょ」
 二人は歩き出した。歩きながら、初音はつくねの顔を覗(のぞ)き込むように言った。
「話って何かしら? 学校では言えないことなの? もしかして、好きな人のこと?」
 つくねはちょっとまごつきながら答えた。「ち、違うわよ。そういう話じゃなくて…。ほら、あたし転校(てんこう)してきたじゃない。で、もしよかったら友達になってくれないかと…」
「あら、何を言ってるの? あたしたち友達でしょ。あたしはそう思ってるわよ」
「そう…、ありがとう。でもね、あたし、人とおしゃべりするのって得意(とくい)じゃなくて…」
 確かにつくねにはそういうところがある。――つくねは話ながら、気づかれないように初音の背中(せなか)に手を伸(の)ばした。その手には、例(れい)の緑の石が握(にぎ)られていた。
<つぶやき>人を見分けるのは難しいね。どんな人なのか見た目だけでは分かりません。
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「スーパーウーマン」

2016-12-28 19:08:11 | ブログ短編
 友だちが開いたホームパーティーに招(まね)かれた彼女。そこでズッキューンな彼に出会った。彼女にとって、それはまさに運命(うんめい)の出会い。でも彼女は内気(うちき)な性格(せいかく)で、いまだに恋人と呼べる人がいないのが現実(げんじつ)だった。
 友だちにその男性を紹介(しょうかい)されても、彼女は恥(は)ずかしさのあまり話をすることもままならなかった。みかねた友だちは、その男性と二人っきりで会えるようにセッティングした。
 数日後、彼女のところに友だちがやって来た。もちろん、二人の間に進展(しんてん)があったかどうか確認(かくにん)するためだ。友だちの顔を見た彼女は、泣きそうな声で言った。
「ごめんね。私、約束(やくそく)の時間に行けなかったの…。3時間も遅(おく)れて、それで、それでね…」
「会えなかったの? 何でそんなに遅れたのよ」
 友だちはふっと何かに気がついて、スマホでネットニュースを開いて彼女に見せた。
「まさか、これで…。工場の爆発事故(ばくはつじこ)。これ約束の日だったでしょ。すごく渋滞(じゅうたい)してて」
 彼女はちょっとためらいながら答えた。「ええ、まあ…、そんな感じかな…」
 実は、彼女はスーパーウーマンとして事故現場で人命救助(じんめいきゅうじょ)をしていのだ。だが、このことは誰(だれ)にも話すことは出来なかった。友だちはニュースを見ながら言った。
「この場所にすごい人が現れたんでしょ。何でも、レオタード姿で…。恥ずかしくないのかな? ほら、ここに出てるわ。まるで子供のような貧乳(ひんにゅう)だったって」
 彼女は自分の胸(むね)を押さえながら思った。絶対(ぜったい)コスチュームを変えてやる。
<つぶやき>スーパーな人にも悩みがいろいろあるんです。これからの彼女の活躍は…。
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「いいの?」

2016-12-25 18:58:14 | ブログ短編
「あの…、本当に、あたしでいいんですか?」
 彼女は念(ねん)を押(お)すように聞き返した。突然(とつぜん)、彼から告白(こくはく)されたのだが、彼女には彼の真意(しんい)がまったくつかめなかった。
 彼女は思っていた。自分は人に好かれるような人間じゃない――。美人(びじん)でもないし、性格(せいかく)だって明るい方とはいえない。それに運動は苦手(にがて)で、成績(せいせき)の方もぱっとしない。そんなあたしに、なぜ、どうして告白なんかしてきたの?
 きっとあれだわ…。彼女はふと思った。どこかでみんな隠(かく)れていて、あたしのこと笑って見てるんだ。それで、あたしが告白に「はい」って言ったら、みんな飛び出してきて…。きっとそうよ。――彼女は辺りを見回してみた。でも、隠れるような所はどこにも…。
 ここは、よく考えないと…。彼女は思わず眉間(みけん)にシワを寄せた。
 ――そんな彼女の様子(ようす)を見て、彼は彼女に言った。「ごめんね、急にこんなこと…。返事(へんじ)は、今すぐでなくてもいいんだ。よく考えて…。また、今度…。じゃ、僕は――」
 彼がくるりと背(せ)を向けて行きかけるのを、彼女はとっさに呼び止めた。そして、「いいわよ」と声が出た。これには、彼女自身(じしん)も驚(おどろ)いた。こんなこと言っちゃうなんて…。彼女はうつむき加減(かげん)で繰り返した。「付き合ってあげても、いいわよ。でも、その前に…。あたしのどこが、好きになったのか教えてくれない?」
<つぶやき>ここで男は考えるのです。顔?パーツ?それとも性格? 何て答えれば…。
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「好き好き病」

2016-12-22 19:20:20 | ブログ短編
 20XX年、世界的な人口(じんこう)の減少(げんしょう)は止(とど)まるところを知らなかった。そんな中、地球規模(きぼ)で未知(みち)の伝染病(でんせんびょう)が広がり始めた。その病(やまい)の症状(しょうじょう)はちょっと変わったものだった。感染者(かんせんしゃ)の理性(りせい)が阻害(そがい)され、人間本来(ほんらい)の種(しゅ)を保存(ほぞん)しようとする本能(ほんのう)が強まってしまうのだ。いわゆる一目惚(ひとめぼ)れというやつだ。
 医療機関(いりょうきかん)では、何とか原因(げんいん)を突き止めようとやっきになっていた。だが、いまだに病原菌(びょうげんきん)も発症(はっしょう)の経緯(けいい)すらつきとめることが出来なかった。そして感染者を隔離(かくり)している病院でも、院内(いんない)感染が始まってしまった。
「先生、あたし、何だか変なんです。先生のことが…」
「愛子(あいこ)君、きみ、まさか感染したのか? ちょっと、待ちたまえ。私には妻(つま)が…」
「分かってます、分かってますけど…。止(と)められないんです。あたし、好きになって…」
 彼女は先生にじりじりと近づいて行った。そして――。次の瞬間(しゅんかん)、先生の方から彼女に抱(だ)きついて、彼女の耳元(みみもと)にささやいていた。
「よかった、僕(ぼく)も君のことが好きだったんだ。僕の愛人(あいじん)になってくれないか?」
 この言葉が、彼女の中に変化をもたらせた。彼女は先生の身体を押しやると、奇声(きせい)を上げて平手打(ひらてう)ちをくらわせて叫(さけ)んでいた。
「あんたなんか大嫌(だいきら)いよ! 愛人になんかなるもんですか!」
<つぶやき>どさくさにまぎれていい思いをしようなんて、最低です。やめて下さいね。
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「借りたがる女」

2016-12-19 19:12:02 | ブログ短編
「わぁ、その帽子(ぼうし)、素敵(すてき)じゃない。あなたにとっても似合(にあ)ってるわ」
「そお? ありがとう。そんなに良いかなぁ」
 友だちにほめられるのは、ちょっと嬉(うれ)しいよね。でも、その友だちは――。
「ちょっとあたしにもかぶらせて。ねえ、いいでしょ?」
 私は言われるままに彼女に帽子を渡してしまった。彼女はまるでモデルにでもなったようにポーズをとりながら、「どお? 似合ってるかしら?」
「ええ、とっても。すごく良いと思うわ」
「ありがとう! じゃあ…、これ、あたしに貸(か)してくれない? ねえ、いいでしょ」
「ええ…。でも、それ買ったばかりだし…」
「いいじゃない、あたしたち友だちでしょ。ねえ、おねがい!」
 彼女は懇願(こんがん)するよに私を見つめた。そして私が迷(まよ)っていると見るとすり寄(よ)ってきて、
「じゃあ、今日はあなたが使っていいわ。明日は、あたしね。その帽子に似合うお洋服を着てくるから、楽しみにしてて」
 こんなことまで言われたら、ますます断(ことわ)れなくなってしまった。彼女は帽子を私に返すと、私の方を見てニッコリ笑ってさらに続けた。
「昨日、一緒(いっしょ)にいたのってあなたの彼氏よね。とっても素敵な人じゃない。あたし――」
「ダメよ、ぜったいダメだからね! 私の大切な人なんだから」
<つぶやき>友だちでも何でも貸し借りできるわけじゃないですよね。こればかりは…。
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