みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「巻き戻し2」

2016-06-30 19:26:12 | ブログ短編
 僕には信じられなかった。まさかそんなことが…。女店主は何でもないことのように、
「彼女のように、またここへ戻って来られる方も結構(けっこう)いるんですよ」
「ウソでしょ、そんなこと…」僕は唖然(あぜん)とするばかり。
「でも、戻って来てるっていう意識(いしき)はないんです。だって、記憶(きおく)が無いんですから」
「記憶が無い? それはつまり、過去に戻ったっていう――」
「そうですよ。過去に戻った時点から、再スタートになるわけですから」
「それじゃ、僕が過去に戻ったとしても、彼女とやり直すことが出来るかどうかは…」
「それは分かりませんね。また同じことを繰り返すかもしれませんし、別の選択(せんたく)をして結婚することになるかもしれません。どうなるかは、あなたのその時の気持ち次第(しだい)です」
「気持ちって…。そんなんじゃ、戻る意味なんて無いじゃないですか」
「そうかもしれませんけど、何もしなければ今のままですよ。彼女と結(むす)ばれることは…。でも、やり直すことで何か変わるかもしれません」
「それは、そうですけど…」
「あなたの人生です。何を選(えら)んでどう生きるのかは、あなたの自由ですけどね」
 僕は、過去に戻ることにした。彼女と出会ったあの時間へ――。
 女店主は、笑(え)みを浮かべて僕に言った。「ありがとうございます。では、人生の再スタートです。あちらのトイレからお入り下さい」
<つぶやき>ちょっと待ってよ。トイレから再スタートって、いくらなんでもそれは…。
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「巻き戻し1」

2016-06-27 19:31:16 | ブログ短編
 それは、僕が彼女から別れを告(つ)げられた直後(ちょくご)のことだった。何も考えられなくて、たまたま目に入ったお店に、僕は吸(す)い込まれるように入っていた。無意識にコーヒーを注文して、僕は大きなため息をつく。それを聞いた若い女店主が、
「何かお悩(なや)みでもあるんですか?」と僕に優(やさ)しい声で話しかけてくれた。
 僕は、三年間も付き合っていた彼女に振(ふ)られたこと、何で別れることになったのか分からないこと、まだ彼女のことを愛していることを話した。女店主は、
「そうですか。男の方は未練(みれん)を断(た)ち切ることが出来ないみたいですね。それじゃ、どうでしょう。もう一度、やり直(なお)してみたら」
「やり直す? そんなの無理(むり)ですよ。だって、彼女はもう僕のことなんか…」
「そうじゃなくて、時間を巻き戻すんです。つまり、過去(かこ)に戻ってやり直すんです」
「そんなこと、出来るわけないじゃないですか。からかわないで下さい」
 女店主は天使(てんし)のような微笑(ほほえ)みを浮かべて、「あちらのお嬢さんも、そうなさったんですよ」
 僕は女店主の目線を追った。その先には、若い男女が座っていて、何か真剣(しんけん)に話をしているようだった。女の方が、かけていたサングラスをはずす。僕は思わず声をあげそうになった。その女性は、いま週刊誌で騒(さわ)がれているアイドルグループの――。
 女店主は静かに言った。「でも、やり直して良かったかどうかは分かりませんけど…」
<つぶやき>えっ、どういうこと? もしそんなことができたら、どこまで戻ろうかな。
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「次の一歩」

2016-06-24 18:57:35 | ブログ短編
 僕はいろんなことを精算(せいさん)して、気持ちを新たにしようと思い、引っ越しをすることにした。次(つぎ)のところではきっと良いことが…。いや、絶対(ぜったい)に良いことがあるはずだ。
 荷造(にづく)りをしているとき、僕は部屋の隅(すみ)に500円玉を見つけた。僕がそれを手に取り見つめていると、手伝いに来ていた友だちが僕に言った。
「500円じゃねえか、やったな。早く片付(かたづ)けて、メシ食(く)いに行こうぜ」
「いや、これは…。ダメなんだ。これは、彼女が僕に投(な)げつけたやつで…」
「投げつけた? えっ、それより、お前、彼女いたのか? こりゃ驚(おどろ)いた。お前みたいにボーッとしてる奴(やつ)を好きになるなんて。そんな女、いるんだなぁ」
「僕、これ返してくるよ。だって、彼女のだし…」
「お前、バカか? 別れた女なんだろ。もらっとけよ。向こうだって覚(おぼ)えちゃいねえよ」
「でも…、そういうわけにはいかないよ。別れたのだって、僕が悪かったんだから…」
「あのな、お前は人が良すぎるんだよ。どうせあれだろ? ひどい女だったんだろ」
「そ、そんなことないよ。すごく、優しい娘(こ)だったんだ。だけど、僕が…」
「もう忘(わす)れちまえよ。それより、今夜は一杯(いっぱい)やろうぜ。引っ越しの前祝(まえいわ)いだ」
「ああ、そうだね。じゃ、早く終わらせなきゃ…」
 僕は、彼女の思い出とともに、ポケットに500円玉をねじ込んだ。
<つぶやき>人生いろいろですね。でも、何で投げつけられたんでしょう? 気になる。
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「しずく50〜こもる」

2016-06-21 19:23:23 | ブログ連載~しずく
 ハルとアキは、しずくの方へ手を向けた。二人の手から出た光は、ベッドに寝ているしずくの身体を優(やさ)しく包(つつ)み込んだ。
 ――二時間後、姉妹(しまい)はソファーに身を投げ出して、同時に呟(つぶ)いた。「ああっ、疲れたわ」
「ご苦労(くろう)さま」車椅子の女性がハーブティーを二人の前に置いて言った。
 あずみは二人に近よって訊(き)いてみた。「で、どうなの? 大丈夫なんでしょうね」
 ハーブティーを一口飲んでハルが答えた。「ええ、心配ないと思うわ、おばさん」
「お、おばさんって…。私はまだ――」
 車椅子の女性がくすくす笑って、「この子たちから見たら、私たちはおばさんなのよ。だってもう三十路(みそじ)なんですからね。あなた、体力も落ちてるんじゃないの?」
「千鶴(ちづる)! 言っときますけど、私はまだ29です。一緒(いっしょ)にしないでよ」
「あなたって昔から変なことにこだわるのね。ふふっ、おかしい」
 あずみは教壇(きょうだん)に立っている時とは別人の顔になっていた。この千鶴とは、小さな頃から一緒にいて、何かにつけて競(きそ)い合っていた。今でも、そういうところがあるようだ。
 ハルは眠そうな目をしているアキを立たせると言った。「私たち少し休むわ。あとお願いします。こっちのお姉さんは夕方まで起きないと思うわ。向こうの部屋のお姉さんは、身体の方は治せたんだけど…。なんか、自分の意志で心を閉ざしてるみたいなの。だから、いつ目覚(めざ)めるかどうか…。ごめんなさい、私たちにはこれ以上のことは――」
<つぶやき>心を閉ざしてしまったしずく。いつ目覚めるのでしょう。この後の展開は…。
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「初対面」

2016-06-17 19:30:14 | ブログ短編
 友だちの紹介(しょうかい)でお見合(みあ)いをすることになった彼。初めは嫌々(いやいや)って感じだったのだが、彼女の顔を見て、どうやら惚(ほ)れてしまったようだ。自己紹介の後、彼女は唐突(とうとつ)に言った。
「あたし、子供が欲(ほ)しいんです。前は三人ぐらいって思ってたんですが、今は、もうあたしもいい歳(とし)ですし、一人だけでもなんとかって…」
 初めて会った人からこんなことを言われて、彼はびっくりしたような顔をした。彼女は、
「ごめんなさい。会ったばかりなのに、あたしったら……。あたしのこと何か聞いてます?」
「いえ。ただ、ここへ来れば分かるから、とだけ…」
「お見合いだったら、結婚したい人同士(どうし)だからうまく行くのかなって…。あたし、結婚したいんです。今すぐにでも……。こんなこと言ったら、引(ひ)いちゃいますよね」
 彼女は彼の顔を伏(ふ)し目がちに見つめる。彼が黙(だま)っているので、不安(ふあん)になった彼女は、
「…でも、誰でもいいとか、そんなんじゃないんですよ。あの、今日お目にかかって、あなたなら、うまく行くかもって…」
「あの、僕なんかでいいんですか? だって、僕は――」
「知ってます。バツイチで、子供なし。離婚(りこん)したのは、奥さんが出て行ったからって」
「あいつ、そんなことまで話したんですか? そんなことひと言(こと)も…」
「ごめんなさい。聞かなかったことにしろって言われてたのに。あたしったら…」
<つぶやき>友だちは、どうしてこの二人を引き合わせてのでしょうか。この先どうなる?
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