みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「お見合い4」

2016-02-26 18:59:44 | ブログ短編
 弟(おとうと)は五郎(ごろう)の背中をつついて、買って来たものを手渡した。
 五郎は彼女にそれを差し出して、「これ、受け取っていただけませんか?」
 それは小さな花束だった。五郎は彼女が喜んでくれると思ったのだが、受け取った彼女の反応はまったく無かった。五郎はどうしたらいいのか焦(あせ)ってしまった。
「すいません。私たちの村では、花はとても高価な物で…、これだけしか買えなくて」
 五郎は汗(あせ)を拭(ふ)こうとポケットからタオルを取り出した。その時、タオルにくるまれていた小さな小石のようなものが座卓(ざたく)の上に散(ち)らばった。五郎は慌てて小石をかき集めた。
 小石の一つが彼女の前まで転がって来た。彼女は何気(なにげ)なくそれを指でつまみあげる。それは透明(とうめい)な石で、光に当てるとキラキラと輝(かがや)いた。彼女は首をかしげて呟(つぶや)いた。
「これって、ダイヤ? まさか、そんな…」
 五郎は彼女に言った。「これは、くず石なんです。これの大きいやつは、しるべ石として…。ほら、ライトを当てると光るんで、坑道(こうどう)の中の道しるべに使っているんです」
 五郎は別のポケットからこぶし大の光る石を取り出して彼女に手渡した。
「坑道の奥まで行くと、いくらでも転(ころ)がっているんです」
 彼女は目を輝かせて立ち上がると、「私をそこへ連れて行って下さい。今すぐに!」
<つぶやき>彼女いわく。ダイヤに目が眩(くら)んだんじゃなく、この人にちょっと興味(きょうみ)が…。
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「お見合い3」

2016-02-22 19:02:59 | ブログ短編
 彼女にとって、結婚対象(たいしょう)から消えた男の話など何の意味もなかった。彼女の頭の中では、別の思いが駆(か)けめぐっていた。あ~ぁ、着物(きもの)のレンタル料、無駄(むだ)になっちゃったじゃない。次のお見合いは、ちゃんと相手のプロフィールを確かめてからにしなくちゃ…。
「――そんなことで、私たち家族は地下へ移住(いじゅう)することになったんです。でも女性の数が圧倒的(あっとうてき)に少なくて、それで地上で婚活(こんかつ)をしようということで…」
 その時、障子(しょうじ)が開いて、同じ恰好(かっこう)をした男が息を切らして入って来た。五郎(ごろう)はその男に小声で言った。「遅かったじゃないか。何してたんだよ? もう来ちゃっただろ」
「ごめん。道に迷(まよ)っちゃって…。何とかたどり着けてよかったよ」
 ここで初めて、彼女は変な男が一人増えているのに気がついた。五郎は彼女に言った。
「あっ、こいつは…。あの、交代要員(こうたいよういん)じゃないんです。一番下の弟(おとうと)で…」
 彼女は呆(あき)れた顔をして、「ああ、そうですか。いったい何人兄弟がいるのよ」
「私たち、七人兄弟で、みんな男なんですけど…。一番上の兄は仕事の都合(つごう)で今日は…」
「もういいです。遅いですね、仲人(なこうど)の人…。早く来てくれないかしら」
 後ろの方で控(ひか)えていた男たちが、弟を手招(てまね)きして小声で話し始めた。
「何で道に迷うんだよ。しるべ石(いし)を置いとかなかったのか?」
「置いといたさ。けど、なくなってたんだよ。それで、歩いている人に訊(き)こうと思ったんだけど、みんな逃げて行くし…。警官も来ちゃって大変だったんだから」
<つぶやき>それは当然かも。完全に変な人だよ。で、何で地下に移住することにしたの?
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「お見合い2」

2016-02-18 19:07:07 | ブログ短編
 確かに、彼女はそれを望んでいた。今まで何度もお見合いをして、それがことごとく失敗に終わっていた。今度こそはと…、そういう気持ちでここに来ていた。だが、目の前の男を見て、張り詰(つ)めていた糸がぷつりと切れてしまった。彼女は席に戻ると、
「分かりました。じゃ、仲人(なこうど)の方がお見えになるまで、ということで…」
「ありがとうございます。柳沢(やなぎさわ)さんは、お優しい方なんですね。気に入りました」
「あの、そんなんじゃありません。仲人の方にご挨拶(あいさつ)をしたら、すぐに帰りますから」
「じゃあ…、とりあえず、自己紹介(じこしょうかい)をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
 彼女がしぶしぶ同意(どうい)すると、五郎(ごろう)は居住(いず)まいを正して話し始めた。
「実は、私たち、地底人(ちていじん)なんです。地底人といっても、地底に住んでいるってことで…」
 彼女は大きな溜息(ためいき)をついた。私って、まともな男性とは付き合えないのかな…。どうして、こんな変な男ばかり寄(よ)ってくるのよ。
 五郎は彼女の顔を覗(のぞ)きこむようにして、「あの…、どうかされましたか?」
 彼女は不機嫌(ふきげん)に答えた。「いいえ、何でもありませんから…」
「では、続けますね。私たちの曾祖父(そうそふ)は炭鉱(たんこう)マンだったんです。その当時は、苛酷(かこく)な仕事で、事故なんかも多かったようです。ある時、落盤(らくばん)事故がありまして…」
<つぶやき>地底人って何なんだ? ますます変な男じゃないですか。どうする彼女…。
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「お見合い1」

2016-02-14 18:55:20 | ブログ短編
 とある料亭(りょうてい)でのお見合(みあ)いの席。着物姿の女性が案内されてやって来た。彼女は廊下(ろうか)で居住(いず)まいを正して座ると、声をかけて障子(しょうじ)を開けた。次の瞬間、彼女は言葉を失った。
 座卓(ざたく)の前に座っていた男性が声をかけた。「柳沢(やなぎさわ)さんですか? どうぞお入り下さい」
 彼女はためらった。だって、男たちは黄色いヘルメットをかぶり、黒いサングラスをかけている。それに、お見合いのはずなのに、おそろいのつなぎの作業服姿である。
 男はいぶかっている彼女を見て言った。「すいません。これが、私たちの正装(せいそう)でして…」
 彼女は恐る恐る部屋へ入り、座卓の前に座ると訊(き)いてみた。「あの、仲人(なこうど)の方は?」
「それが、別のお見合いの方で何かあったとかで…、遅れるということでした」
「そ、そうですか…」彼女は男たちを見回して、「あの…、穴掘(あなほり)さんは…」
 目の前に座っていた男が答えた。「あ、私です。申(もう)し遅れました。穴掘五郎(ごろう)と言います」
 彼女は、後ろに座っている男たちが気になった。それに気づいたのか、五郎は、
「あっ、こいつら…。いや、これは私の兄弟でして、もしもの時のための、交代要員(こうたいよういん)といいますか…。初めてお会いするので、私があなたの好みではない場合ですね、代わりに…」
 彼女は目を丸くした。お見合いに交代要員って? この人たち、何を考えてるの!
 彼女はさっと立ち上がると部屋を出て行こうとした。五郎はそれを呼び止めて、
「あの、結婚したいんでしょ! 私もそうです。もう少し、お話ししませんか?」
<つぶやき>お見合いの席なのに常識外れの男たち。こいつらは一体何者なのでしょう?
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「しずく43~炎上」

2016-02-11 18:59:27 | ブログ連載~しずく
 楓(かえで)はもう一度しずくを抱(だ)きしめると、いとおしそうにしずくの顔を見つめて言った。
「さあ、もう行きなさい。あなたは、ここにいちゃいけないわ」
「行くって、どこへ? 離れたくないよ。私も一緒(いっしょ)に連れてって」
「あなたには、あなたのやるべき事があるの! それを成(な)し遂(と)げなさい」
 楓はいつも身につけている赤い石のついたペンダントを外して、それをしずくの首(くび)へかけてやった。そして、何かを念(ねん)ずるように赤い石を握(にぎ)りしめた。
「これって、おばあちゃんの形見(かたみ)の…、お母さんが大事(だいじ)にしてた…」
「そうよ、あなたが持ってなさい。いい、忘(わす)れないで。あなたは一人じゃないわ。離れていても、いつも家族は一緒よ。それに、あなたには親友がいるでしょ」
「あ、つくねは…。つくねは、どこにいるの? 先に帰ったはずよ」
「あの娘(こ)は、大丈夫…。きっと外で待ってわ。――さあ、行きなさい」
 しずくは、何度も後ろを振り返りながら部屋を出た。楓は、しずくを見送ることはしなかった。しずくは玄関で母親を呼んでみた。しかし、返事が返ってくることはなかった。静まり返った家――。しずくは玄関を出ると、後ろ手に扉(とびら)を閉めた。涙(なみだ)があふれてきた。しずくは手でそれをぬぐい、駆(か)け出した。
 路地(ろじ)の角(かど)へ来たとき、後ろの方から激(はげ)しい爆発音がして、しずくは思わず立ち止まった。後ろを振り返ると、さっきまでいた家が炎(ほのお)に包(つつ)まれていた。
<つぶやき>どうして爆発したんでしょう。楓は無事なのかな? これからしずくは…。
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