みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「無限空間」

2015-10-29 19:39:48 | ブログ短編
「くそっ。やっぱりだめだ。暗証(あんしょう)番号を入れないとこの扉(とびら)は開(ひら)かない」
 男は扉の前で焦(あせ)る気持ちを抑(おさ)えて言った。さっきから警報(けいほう)が鳴り響(ひび)き、どこからか人の叫(さけ)ぶ声が聞こえてきた。そばにいた女が、男を押し退(の)けて言った。
「代わって。わたしがやってみるわ。見張(みは)っててよ」
 女は頭に浮(う)かんが番号を打ち込んでいく。すると、ロックが外(はず)れる音がした。
「お前、どうやったんだ? 何で、番号を知ってるんだよ」
「そんなこと…、わたしは適当(てきとう)にやっただけよ」
 扉が開くと、二人は手を取り合って駆(か)け出した。
 次の瞬間(しゅんかん)――。気がつくと、二人は扉の前に戻(もど)っていた。男が扉を開けようと必死(ひっし)になっている。でも、どうやっても扉は開(あ)きそうもない。
「くそっ。やっぱりだめだ。暗証番号を入れないとこの扉は開(ひら)かない」
 女は呆然(ぼうぜん)としていたが、男を押し退けると言った。「わたしが、やってみるわ」
 女は暗証番号を打ち込んだ。すると、ロックが外れて扉が開いた。
「お前、どうやったんだ? 何で、番号を知ってるんだよ」
「きっと、何度もやってるからよ。さあ、行って。わたしはここに残(のこ)るわ。何かを変えないと、たぶん永遠(えいえん)に同じことの繰り返しなのよ。あなただけでも、ここから逃げて!」
<つぶやき>男なら、彼女を置いていくなんてできないですよ。何があっても離れない。
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「非常事態」

2015-10-27 19:52:41 | ブログ短編
 外(そと)は大雨で強い風が吹き荒れている。男は必死に玄関(げんかん)の戸(と)を押さえていた。手を放したら最後、この家は倒壊(とうかい)してしまうだろう。それほど古い家だった。男は大声で叫(さけ)んだ。
「アイちゃん! ちょっと手を貸(か)してくれないか! このままじゃ…」
 部屋の中には女がいた。女は爪(つめ)にネイルを塗(ぬ)りながら、イヤホンで音楽を聴(き)いていた。どうやら男の声は届(とど)かないみたいだ。男は、さらに声を張(は)り上げた。女はやっと気づいたようで、「なに? 今、手がはなせないの。無理(むり)いわないで…」
 女は両手の指(ゆび)を立てながら、玄関の方へ歩いて行った。男は女が来たのを見ると、
「何してるんだよ。ちょっと手を貸してくれ。俺だけじゃもう…」
「いやよ。あなたが何とかしてよ」女は自分の手を男に見せて、
「今のあたしは何もできないの。見ればわかるでしょ。それに、あなた言ったじゃない。これからは、俺が全部面倒(めんどう)見てやるからって」
「そりゃ、言ったけど…。今は、非常事態(ひじょうじたい)なんだ。頼(たの)むよ」
「あたし、こんなぼろい家だなんて知らなかったわ」
「悪かったよ。でも、始めに言っただろ。最初から贅沢(ぜいたく)はできないって」
「それにしたって、これはひどすぎよ。あたし、帰ろかな…。今ならまだ…」
 その時、突風(とっぷう)が襲(おそ)ってきた。男は、必死に踏(ふ)ん張りながら、
「その話、後にしないか? 今はこの状況を、二人で乗り切ろうよ。そうじゃないと――」
<つぶやき>嵐は外だけじゃなく、家の中にも静かに吹き荒れていたのかもしれません。
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「しずく37~間一髪」

2015-10-23 20:03:04 | ブログ連載~しずく
 月島(つきしま)しずくは、水木涼(みずきりょう)に操(あやつ)られるまま、大木に下がっているロープの前まで来てしまった。しずくの手がロープをつかんで、頭を輪の中へくぐらせる。しずくには、それを止めることができなかった。涼は楽しげに言った。
「さあ、最後の時よ。何か言い残すことがあれば、聞いてあげるけど?」
 しずくは震える声で言った。「私が、何をしたっていうの? あの時、約束(やくそく)したじゃない。忘れちゃったの? 私たちが、初めて会ったとき…」
「なに言ってるの。そんなの知らないわよ。さあ、始めましょうか」
 涼が手を上げると、ロープが動き出した。ずるずると、まるで蛇(へび)のように上がって行く。ロープがしずくの首をゆっくりと絞(し)め始めた。少しずつ身体が浮(う)き上がり、かかとが地面から離れていく。涼は、苦しんでいるしずくを笑いながら見つめていた。だが、その涼の顔に苦痛(くつう)の表情(ひょうじょう)が現れた。頭痛(ずつう)のために涼が自分の頭に手をやると、ロープの動きが止まった。しずくは涼に向かって声を上げた。「やめて! お願いよ…」
 その時だ。二人の前に、柊(ひいらぎ)あずみと神崎(かんざき)つくねが現れた。次の瞬間(しゅんかん)には、しずくの身体はあずみに抱(だ)きかかえられていた。あずみはロープを首から外(はず)して、二人はその場に倒れ込む。つくねはパチンコを構(かま)え、涼に狙(ねら)いを定(さだ)めて打ち込もうとしていた。
 しずくはそれを見て叫(さけ)んだ。「だめ! やめてぇ!!」
<つぶやき>ほんと間に合ってよかったです。でも、何で涼はこんなことしたんでしょう。
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「お嫁さんごっこ」

2015-10-19 19:56:40 | ブログ短編
 小学生の娘(むすめ)が男の子を連れて帰って来た。こんなことは初めてだ。私は目を丸くした。娘はソファに深々(ふかぶか)と座(すわ)ると、その男の子に言った。
「よっちゃん。あたし、おなか空(す)いちゃった。何か作ってよ」
 私は驚いた。ママと同じことを言うなんて…。私は、娘に言った。
「あかね、そんなこと頼(たの)んじゃだめだよ。お客(きゃく)さんなんだから」
 娘は嬉(うれ)しそうに、「あら、あたし、よっちゃんのお嫁(よめ)さんになるのよ。いいでしょ」
 娘の口からお嫁さんなんて言葉を聞くなんて。それも、こんなに早く。父親としては、何とも複雑(ふくざつ)な心持(こころも)ちになった。だが、そんなこと言ってる場合じゃない。いけないことはいけないと、はっきり娘に教えてやらなくては…。そうだ、父親として。
 私が娘に向き直ったとき、後ろから男の子が言った。
「いいよ。僕、たまにママのお手伝いしてるから。なにが食べたいの?」
「そうねえ…。じゃあ、ホットケーキがいいわ」
 その時だ。ママが帰って来た。娘はママに駆(か)け寄ると、自慢(じまん)するようによっちゃんのことを話した。ママは娘を抱(だ)きしめると、
「よかったわねぇ。ママも、パパと結婚したからこんなに幸(しあわ)せになれたのよ。あかねも、絶対(ぜったい)に逃(に)がしちゃだめだからね。分からないことがあったら、何でもママに訊(き)きなさい」
<つぶやき>子供は親に似るといいますが、たくましい娘に育つんじゃないかと思います。
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「あなた」

2015-10-16 19:45:54 | ブログ短編
 手を伸(の)ばせば、そこにある。ほんの少し勇気(ゆうき)をだして…。そうすれば手に入るの。わたしの欲(ほ)しいもの。それは…、あなた。
 わたしは、あなたを自分のものにしたいって衝動(しょうどう)にかられている。これが恋というものなのか、わたしには分からない。でも、日に日にその衝動が抑(おさ)えきれなくなって…。自分でもどうすることもできない。あなたを見るたびに、わたしの胸(むね)はしめつけられた。
 何度、あなたから目をそらそうとしたか。でも、そのたびにあなたの姿(すがた)がちらついて…。あなたのことを探してしまう。もうあたし、あなたなしでは生きてゆけないかも。こんな苦(くる)しい思い、いつまで続くんでしょ…。
 でも、それももう終わりよ。わたし、決めたわ。明日、あなたを手に入れる。そのために、今まで我慢(がまん)してきたんだもん。やっとその日が来たの。わたしは、あなたのもとへ走ったわ。そして、あなたの姿を見たとき――。
 だめ、だめよ。…どうして? あなたの横にいるのは――。あたしは、何てことを考えてるの。あたし、あなたのことは好きよ。でも、あなたの隣(となり)にはもっと素敵(すてき)な――。いけないわ、そんなこと…。わたしは、浮気(うわき)な女じゃないはずよ。わたしの一途(いちず)な思いは、こんなことで砕(くだ)けたりなんか…。でも、女心って…。
<つぶやき>あなたって、何なんでしょうね。いろんなもので想像を膨らませてみると…。
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