みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「情報を制するもの」

2015-09-27 19:59:11 | ブログ短編
 軍服(ぐんぷく)を着た男が、女に歩(あゆ)み寄って言った。「君は、ダンカン将軍(しょうぐん)のことで話があるとか」
 女はおずおずと、「あたし、バーで女給(じょきゅう)してて…。お店には軍人さんも大勢(おおぜい)来るから、いろんな話を聞けるんです。だから…」
 ダンカンとこの男は、軍の中で権力争(けんりょくあらそ)いをしていた。どちらがこの国を支配(しはい)するのか、それによってこの国の運命(うんめい)まで変わってしまうのだ。女は男の耳元(みみもと)で何かをささやいた。そして、紙切れを手渡した。男はそれを見ると顔色が変わり、部屋を飛び出して行った。
 女は部屋の中で一人になると、目つきが変わった。男の机の上にある端末(たんまつ)を操作(そうさ)して、ある情報(じょうほう)をペンダント型の記憶媒体(きおくばいたい)にダウンロードした。女が部屋を出ようとしたとき、さっきの男が戻って来た。女は驚(おどろ)いて立ち止まる。男は女の前に立ちふさがり、
「やっぱり、お前は敵国(てきこく)のスパイだな。何をねらって来たんだ?」
 男は女からペンダントを取り上げると、女の服の襟(えり)をつまんで嫌(いや)らしい笑(え)みを浮かべて言った。「じっくりと、その身体に教えてもらおうか?」
 女は不敵(ふてき)な笑みを浮かべて、「いいわよ。でも、あなたにできるかしら?」
 男は女の首をつかんで言った。「お前が行くのはベッドじゃなく、暗い監獄(かんごく)の拷問(ごうもん)室だ」
 軍服の男たちが入って来て、女を引きずるように部屋から連れ出して行った。男はほくそ笑んでささやいた。「これで、俺はすべてを手にすることができる。ハハハハ」
 その日のうちに、男は何者かに暗殺(あんさつ)された。そして、女は密(ひそ)かに国外退去(こくがいたいきょ)となった。
<つぶやき>いろんな人の思惑が交差して、もう何が何だか分かんなくなってきてます。
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「しずく35~真相」

2015-09-24 19:42:56 | ブログ連載~しずく
 水木涼(みずきりょう)は微笑(ほほえ)むと、月島(つきしま)しずくを手招(てまね)きした。すると、しずくの足がゆっくりと動き出す。しずくは、言いようのない恐怖(きょうふ)を感じた。ひきつった顔のしずくを見て涼は言った。
「私、今のあなたの顔、好きだわ。もっと脅(おび)えなさい。私を楽(たの)しませてよ」
 木の上から太いロープが垂(た)れ下がって来た。ロープの先は丸く結(むす)んである。
 しずくは声を震(ふる)わせて言った。「どうして、どうしてこんなこと…」
「決まってるじゃない。あなたは必要(ひつよう)の無い人間よ。何の役(やく)にも立たないし――」
 しずくの足は大木に下がったロープへ向かっていた。一歩一歩、まるで十三階段(かいだん)を上がって行くように。しずくは必死に抵抗(ていこう)してみるが、自分の足を止めることはできなかった。
「ねえ、いいこと教えてあげましょうか?」
 涼は楽しげに言った。「私、あなたのことずっと見張(みは)ってたのよ。どんな能力者か試(ため)してみたけど、あなたってまだちゃんと覚醒(かくせい)してないのね。それなのにトラックの前に飛び出したりして…。でも、子供を助けられて良かったわね」
「何で知ってるの? 私、誰にも話してないのに…」
「だって、私が子供を歩かせてあげたのよ。退屈(たいくつ)そうにしてたから…。それに、暴漢(ぼうかん)をけしかけたときも…。もうちょっとであなたを消すことができたのに、残念(ざんねん)だったわ。あそこで邪魔(じゃま)が入るとは思わなかった。でも、今度は逃(に)がさないわよ」
<つぶやき>今までの事件の真相が明らかに…。でも、何でこんなことするんでしょう。
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「ケーキを求めて」

2015-09-21 19:42:07 | ブログ短編
 昔(むかし)、うちの家は貧乏(びんぼう)だった。クリスマスどころか、誕生日ですらケーキが出て来ることはなかった。子供ながらに、よその家が羨(うらや)ましかった。
 そんな僕のことを同情(どうじょう)してか、友達が誕生パーティーに誘(さそ)ってくれた。今までケーキといえば、ケーキ屋のガラス越しにしか見たことがなかった。それが目の前にあるのだ。しかも、それを食べることができる。こんな幸せは、今まで味(あじ)わったことはなかった。
 僕はケーキの美味(おい)しさを知ってしまった。また食べたいと…。でも、いくら待っても、うちでは食べさせてもらえるはずもなく――。そこで、僕は考えた。待っていなくても、こっちから行けばいいんだ。我(われ)ながら、妙案(みょうあん)である。僕は笑いが止まらなかった。
 次の日から、僕はクラスメイトはもちろん、友達や、その友達、またその友達と、片っ端(ぱし)から誕生日を訊(き)いて回った。もちろん、女子を外(はず)すことはできない。女子の方が誕生パーティーを開く確率(かくりつ)が高いからだ。誕生日が近づくと、僕は聞き耳(みみ)をたてた。
 別に、誘ってもらえなくてもかまわない。僕は友達は多い方なので、誰かが誘われているはずだ。そいつにくっついていけば大丈夫(だいじょうぶ)。誰もいなくても、突撃(とつげき)あるのみ。けっこう、どうぞどうぞって入れてくれる。こういうのは人が多い方が盛り上がるからだ。
 いま思うと、無茶苦茶(むちゃくちゃ)なことをやってたなと、反省(はんせい)するばかり。でも、子供ながらに真剣(しんけん)に生きていたのだ。これは、胸(むね)を張れることだと思う。
<つぶやき>人にはいろんな才能があるものなんですね。それを伸ばすことができれば…。
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「夫婦の絆」

2015-09-18 20:03:12 | ブログ短編
 二人は結婚(けっこん)して三か月。今がいちばん楽しい時のはずなのに…。一緒(いっしょ)に住むようになって、今まで知らなかったことがいっぱい出て来た。最初はほんの些細(ささい)なことだったのだが、それがだんだん膨(ふく)らんで、お互いに我慢(がまん)の限界(げんかい)まで達してしまった。初めての夫婦喧嘩(ふうふげんか)は、お互いにとって、とても辛(つら)いものになってしまった。
 そこで二人は考えた。これからは、我慢しないで言いたいことは言い合おう。不満(ふまん)は吐(は)き出して、お互いの気持ちを確かめ合おうって。そこで妻は、気づいたことをどんどん指摘(してき)した。ここは、こうしてよ。何でそんなことまでいちいち言うのよ。言ったことはすぐに実行(じっこう)して…、などなど。ほんとに簡単(かんたん)なことなのだが、できないことじゃないはず。
 夫は、そんなに我慢していたのかと驚(おどろ)いた。そこで、妻に訊(き)いてみた。
「君は、どうして僕と結婚したんだい。僕のどこが好きになったんだ?」
 妻はしばらく考えた。結婚してから、夫の嫌(いや)な面(めん)ばかり目について、何でこの人を好きになったのか思い出せない。そこで妻は正直(しょうじき)に答えた。
「あなたの、どこが好きだったのか、分からないわ。――今のあなたに、好きなところあるのかしら?」
 夫は茫然(ぼうぜん)として呟(つぶや)いた。「そんな…。僕のこと、嫌いになったのかい」
「あなただって、わたしのこと、愛してるって、言ってくれなかったじゃない」
<つぶやき>夫婦といえども、別々なんです。考え方や生活リズムが違うのは当たり前。
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「振込…」

2015-09-14 20:06:10 | ブログ短編
「あ、ばあちゃん? おれだよ、おれ。元気にしてた?」
 受話器(じゅわき)から聞こえてきた男の声に、おばあちゃんは首(くび)をひねった。これは〈母さん助けて詐欺(さぎ)〉じゃなく、〈ばあちゃん助けて詐欺〉じゃないのか…。おばあちゃんは、
「わたしは、おれなんて人は知らないけどね。あんた、誰だい?」
「やだな、忘れちゃったの? 貴志(たかし)だよ。ごめんね、仕事忙(いそが)しくて、なかなか――」
「貴志? 確かに貴志って孫(まご)は一人いるけど…。あんた、ほんとに貴志なのかい?」
「何だよ。おれの声、忘れちゃったの? 大丈夫(だいじょうぶ)?」
「わたしはボケてなんかいませんよ。ほんとに貴志なら、ここでおばあちゃんクイズです。おばあちゃんの好きなものは何ですか? チィ、チィ、チィ、チィ……」
「えっ? ちょっと待ってよ。好きなものって言われても…。ばあちゃん、何でも美味(おい)しいって食べるじゃない。…一緒(いっしょ)に住んでないのに分かるわけないよ」
「はい、時間切れです。第二問です。おばあちゃんは今年でいくつになるでしょうか?」
「えっ。ばあちゃんは永遠(えいえん)の二十歳(はたち)だよって、会うときはいつもそう言ってるじゃない」
「まったく、努力(どりょく)が足(た)りないね。何でもね、地道(じみち)な積(つ)み重(かさ)ねなんだよ。どんな仕事も、手を抜(ぬ)いちゃダメなんだ。分かってんのかい!」
「ばあちゃん…。おれは、今度、遊びに行くからねって、それを――」
「で、いくらいるの? こっちは年金暮(ねんきんぐ)らしだ。そんなには出せないよ」
<つぶやき>ダメダメ、振り込んじゃ。でも、ちょっとお茶目なおばあちゃんなのかも…。
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