みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「名探偵」

2015-08-29 19:56:20 | ブログ短編
「おい、ホームズ。いつまで寝(ね)てるんだ」
 ワトソンはソファで眠っていたホームズを揺(ゆ)り起(お)こした。――ホームズは突然(とつぜん)目を開けると、ワトソンの上着をつかんで引き寄せ、うわごとのように呟(つぶや)いた。
「ああ、なんてことだ。そんな――」
「ホームズ、どうしたんだ? しっかりしろ。また薬(くすり)をやったのか?」
 ホームズはかすかに微笑(ほほえ)むと、つかんだ上着を放して起き上がり、茶化(ちゃか)すように言った。
「いや、もっといいものだ。この快楽(かいらく)は何物にも代えがたいよ」
 ホームズは気が変になったみたいに、部屋中を歩き回りながら笑い声を上げた。ワトソンは彼の行動に唖然(あぜん)とするばかり。ホームズは立ち止まると、
「さあ出かけよう、ワトソン君。この事件の謎(なぞ)はすべて解(と)けた」
「ほんとうに? あの謎が解けたって言うのか?」
「私としたことが迂闊(うかつ)だったよ。真実(しんじつ)は、私たちの目の前にあったんだ」
「教えてくれ、ホームズ。いったい、何がどうなっていたんだ?」
 ホームズはそれには答えず、上着をつかむとワトソンを促(うなが)した。
「さあ、ぐずぐずするな。今からそれを確(たし)かめに行こう。次の事件が起きる前に、何としても止めなければならん」
<つぶやき>誰もが知っている名探偵。でも、天才の心のうちは誰にも分からないのかも。
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「事情の連鎖」

2015-08-26 15:38:39 | ブログ短編
「約束(やくそく)、ほんとに守ってくれるの?」
 女は男を見つめて言った。男は女の耳元(みみもと)でささやいた。「もちろんさ、だから…」
 女は男を押し退(の)けて、「だめよ。口約束なんか信用できないわ。ちゃんと証明してみせて」
「君は、面白(おもしろ)いこと言うなぁ。じゃあ、これでどうだ」
 男はスーツのポケットから財布(さいふ)を出して、女の前へ投げ出した。
「いくらでもいいぞ。好きなだけ持ってけ。その代わり、分かってるだろうな?」
 女は急いで財布の中を調(しら)べた。予想(よそう)以上にお金が入っていたので、女は嬉(うれ)しさのあまり声を上げそうになった。女はお札(さつ)を財布から抜(ぬ)き取ると、
「ありがとう。助かるわ。じゃあ、どうする? 今から? それとも…」
「そうだな…。じゃあ、風呂(ふろ)に入ってからしてもらおうか」
「分かった。待ってるあいだに宿題(しゅくだい)やっちゃうね。ゆっくり入ってきて」
 女は出て行く。入れ違(ちが)いに別の女が現れて、男をにらみつけた。そして不機嫌(ふきげん)な声で、
「あなた、甘(あま)やかさないで。お小遣(こづか)いはちゃんとあげてるんだから」
「肩(かた)もみをしてもらうだけじゃないか。それに、俺の財布にはいくらも入ってないよ」
「娘とコミュニケーションとるのに、お金を利用しないで。難(むずか)しい年頃なんだから」
「仕方ないだろ。そうでもしないと、口も聞いてくれないんだから…」
<つぶやき>家族にはそれぞれの事情があって、それが鎖のように絡みあっているのです。
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「しずく33~執行」

2015-08-23 15:43:41 | ブログ連載~しずく
「私のこと嫌(きら)いって…。どうして、そんなこと言うの?」
 月島(つきしま)しずくは、何がどうなってしまったのか混乱(こんらん)していた。水木涼(みずきりょう)は、そんなしずくを見て嬉(うれ)しそうに笑(わら)った。その顔は、いつも見せてくれる笑顔だった。しずくはホッとして、
「冗談(じょうだん)なんでしょ? もう、ふざけすぎよ。私…、私――」
「ねぇえ、こっち来なさいよ。そばでよく見て。この上は、きっと見晴(みは)らしが良いはずよ」
「えっ? もう、いい加減(かげん)にしてよ。早く学校行かないと――」
 その時、学校の鐘(かね)がかすかに聞こえてきた。しずくは学校の方へ目をやった。涼は、失敗(しっぱい)をしてしまった子供のように、「あっ、学校始まっちゃった。遅刻(ちこく)になっちゃうぅ」
 いつもの涼なら、そんなしゃべり方はしないはず。涼がまだふざけているので、しずくは怒(おこ)った顔をして言った。「私、もう行くから!」
 しずくはそう言うと、引き返そうとした。――が、身体(からだ)がまったく反応(はんのう)しない。振り向くことも、足を動かすこともできないのだ。涼は、もがいているしずくを見て、
「誰が、帰っていいって言ったの? まだ、お話しは終わってないのよ。これからが肝心(かんじん)なところじゃない。――あーあ、どんなすごい娘(こ)かと思ったら、これだったら私一人で充分(じゅうぶん)じゃない。さあ、これから、あなたを、処刑(しょけい)して、あ・げ・る」
<つぶやき>身動きが出来なくなったしずく。これからどうなっちゃうの? 誰か助けて!
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「秘めごと」

2015-08-19 16:16:18 | ブログ短編
 あたしは、圭太(けいた)と付き合っている。でも、これはクラスのみんなには内緒(ないしょ)なの。二人だけの秘密(ひみつ)。だから連絡(れんらく)を取り合うのも、二人だけが分かる暗号(あんごう)メモを使ってるの。
 そんな面倒(めんど)くさいことしないで携帯とかメールがあるでしょ、って思ったよね。あたし達は、そんなありきたりなことはしないの。みんなに知られないように付き合う、このドキドキ感がいいんじゃない。授業中に二人で見つめ合ったり、偶然(ぐうぜん)をよそおって並(なら)んで座ったときなんか、机の下で一瞬(いっしゅん)、二人の手が触(ふ)れる。これは、メールでいっぱい『好きだよ』って送られるよりも、何十倍も嬉(うれ)しいことなのよ。
 放課後、仲の良い友達と彼氏(かれし)の話題になった。みんなは彼氏の自慢(じまん)をして…。でも、あたしには何も訊(き)いてこなかった。そりゃそうよ。あたし、誰とも付き合ってないことになってるんだもん。あたしはみんなの話を聞きながら、優越感(ゆうえつかん)にひたっていた。あたしは、みんなとは違うんだから。――友達の一人が言った。
「ねえ、どうして圭太なんかと付き合ってるの? あんな奴(やつ)のどこがいいのよ」
 あたしは、目が点になった。口をあんぐり開けて固(かた)まってしまった。友達は、
「なに驚(おどろ)いてんの。みんな知ってることよ。それより、圭太なんかやめときなさいよ。顔はまあまあだけど、面白(おもしろ)いとこひとつもないじゃない。別れた方がいいよ」
 その場にいた友達は、みんな肯(うなず)いていた。――そんな…、何で知ってるのよ。
 あたしは、「圭太のことなんか、何とも思ってないわよ。付き合ってるわけないじゃん」
<つぶやき>この後、彼女の恋心は冷めてしまったようです。恋に恋していたんですね。
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「恋のレッスン」

2015-08-16 19:28:13 | ブログ短編
 私の横(よこ)には彼がいる。付き合い始めてまだ三日目。少しずつ距離(きょり)も縮まって…。歩きながら、彼がさり気なく私の手を取る。――もっと早くそうしてくれればいいのに…。彼ったら、慎重(しんちょう)すぎるのよ。私が、嫌(きら)いになるわけないじゃない。
 もうすぐ、彼と別れなきゃいけない場所。彼は右へ、私は左の道へ帰るんだ。その場所へ来たとき、彼が私の手をギュッと握(にぎ)って立ち止まった。そして、私の顔を見つめて――。
 いよいよ、いよいよね。彼は、私のすぐ前まで近づいて…。彼の目が、私の唇(くちびる)をとらえた。彼の手が私の身体をそっと引き寄(よ)せる。私は、回りを気にしながら顔を上げる。だめよ。ここで、物欲(ものほ)しそうな顔をしちゃいけないわ。
 彼の顔がだんだん近づいてくる。彼って、よく見ると可愛(かわい)い顔してるんだ。――ダメダメ。顔がふにゃふにゃになってしまう。こんな顔、見られたくない…。彼は、そんな私の気持ちも知らないで、どんどん顔を近づけてくる。もう、目の前には、彼の顔しかない…。もうだめ。気が遠(とお)くなりそうよ。しっかりしなさい。私の、ファーストキスじゃない!
 ――けたたましい目覚(めざ)ましの音で、私は現実(げんじつ)に引き戻(もど)された。もう…、なんて夢(ゆめ)なのよ。これは残酷(ざんこく)よ。めちゃくちゃ残酷じゃない。だって、まだ、彼に告白もできていないのに…。今日、彼に会ったら…。私、どんな顔をすればいいの?
<つぶやき>夢を見るほど彼のことが気になるなら、これは言っちゃうしかないでしょ。
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