みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「難問」

2015-07-29 19:41:50 | ブログ短編
 夜の闇(やみ)に紛(まぎ)れて、とある古ぼけた屋敷(やしき)にやって来た二人。どう見ても、泥棒(どろぼう)にしか見えない。重厚(じゅうこう)な扉(とびら)の前で立ち止まると。
「どうやら、ここのようだ。この扉の向こうに、秘伝(ひでん)の書(しょ)があるはずだ」
 扉を開けようとしたが、鍵(かぎ)がかけてあるのかびくともしない。二人は、扉の横にタッチパネルがあるのを見つけた。そこに書かれていたのは、「ソウニョウ×3」の文字。
「何だこれは? 何かの暗号(あんごう)なのか…。お前、分かるか?」
「ソウニョウ…。もしかして、これって漢字(かんじ)のことじゃないのか」
 そう言うと、タッチパネルに、「走、起、越」と三つの漢字を書いてみた。すると、鍵の外(はず)れる音がして、扉が音もなく開(ひら)いた。手をたたいて喜ぶ二人。だが、扉を開けて入ってみると、目の前にまた同じ扉が待ち構(かま)えていた。今度もタッチパネルがあり、そこには「1+1=」と書かれていた。そしてその下に注意書(ちゅういがき)が、
「チャンスは一回だけ。もし間違えたら、奈落(ならく)の底(そこ)へ落ちることになるだろう」
 二人は考え込んだ。普通に考えれば答えは「2」だ。しかし、こんな簡単(かんたん)な問題なのか…。小学生でも答えられるぞ。秘伝の書だぞ。これでいいのか? それに奈落の底って何だ。二人は床(ゆか)へ目をやった。板張(いたば)りで、何となく二人の重みで凹(へこ)んでいるような――。
「まさか、落とし穴になってるんじゃ…。どうする? そんなに、欲しいものでも…」
「そうだな。どうしても手に入れたいわけじゃ…。今日は、止(や)めておこう」
<つぶやき>そんなに簡単にあきらめちゃだめじゃない。でも、何の秘伝なんでしょう?
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「無料サービス」

2015-07-25 09:35:23 | ブログ短編
 一子(いちこ)はベッドに座って電話を掛(か)けていた。やっとつながったらしく、彼女はまくしたてるようにしゃべり始めた。「ねえ、聞いてよ。あのね、陽介(ようすけ)のやつ、浮気(うわき)してるのよ。もう、ひどいと思わない――」
 相手の声が、「その話、長くなるかな…。今、手が離(はな)せなくて、ごめん」
 唐突(とうとつ)に電話が切られた。これで、四人目だ。友達の誰(だれ)一人、彼女の話を親身(しんみ)になって聞いてくれる人はいなかった。一子は泣きそうになった。
 その時だ。突然、携帯が鳴り出した。彼女は反射的に電話に出た。電話の向こうからは聞き憶(おぼ)えのない男の声が、「あの、私でよかったら、お話、お聞きしますよ」
 一子は一瞬(いっしゅん)、息を呑(の)んだ。「あなた…、どなたですか? おかけ間違(まちが)えじゃ…」
「いえ、ちょっと聞こえちゃったもんですから。彼、浮気してるんですか?」
「ど、どうして…。あなた、まさか…、ストーカー? 盗聴(とうちょう)してるの!」
 彼女は部屋の中を見回した。電話の声は、「違いますよ。盗聴なんか…。申し遅れましたが、私、あなた方に電波(でんぱ)と呼ばれているものです。今、あなたの携帯の中に――」
 一子は携帯を投げ捨てた。でも、彼女の頭の中に男の声が、
「ひどいなぁ。――もしよかったら、彼のことお調べしましょうか? もちろん、これは無料サービスになっております。ぜひ、ご利用ください」
<つぶやき>あなたは利用しますか? でも電波が相手じゃ、何をされるか分かりません。
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「しずく32~イメージ」

2015-07-22 10:31:46 | ブログ連載~しずく
 神崎(かんざき)つくねは教室を飛び出すと、誰(だれ)にも悟(さと)られないように生徒たちでざわついている廊下(ろうか)をすり抜(ぬ)けた。月島(つきしま)しずくが今どこにいるのか、つくねにもはっきりしたことは分からない。でも、彼女に危険が迫(せま)っているという核心(かくしん)が、つくねにはあった。
 階段を駈(か)け降りて下駄箱(げたばこ)のところまで来ると、遅刻(ちこく)しそうで慌(あわ)てて駆け込んでくる数人の生徒に出くわした。つくねは彼らをやり過(す)ごすと、自分の靴(くつ)を持って――。
 このまま正門(せいもん)から出れば先生に見つかってしまう。学校から抜(ぬ)け出すためには…。この手のことは、つくねには容易(たやす)いことだった。この学校の間取(まど)りは、転校した時にすべて頭に入れてある。つくねは、何食(なにく)わぬ顔で職員室の前を通り過ぎる。この時間、先生たちは授業の準備などで忙(いそが)しく、廊下を歩く生徒を気にするものは誰もいない。
 つくねは誰にも見られないように、廊下の端(はし)にある美術室へ入って行った。ここの窓(まど)から外へ出れば、先生に見つかることなく学校の裏手(うらて)にある雑木林(ぞうきばやし)に抜けられる。つくねは美術室の窓を開けると外を見回した。誰もいないのを確認すると、持っていた靴を外へ放り投げた。そして、窓の下に手をかけて飛び出ようとしたとき――。突然、あの頭痛が始まった。つくねは窓の前で、うずくまってしまった。
 それは、一瞬のことだった。つくねの頭の中に浮(う)かんだイメージは、苦痛(くつう)でゆがんだしずくの顔――。つくねは思わず、しずくの名を呼んだ。
<つぶやき>しずくの身に、これから何が起こるのか…。つくねは彼女を助けることが…。
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「海賊島16」

2015-07-19 16:43:35 | ブログ短編
 三日後、連絡船(れんらくせん)の船上(せんじょう)に三人はいた。結局(けっきょく)、ずっと砂(すな)と格闘(かくとう)することになってしまった。今、いちばんホッとしているのは林田(はやしだ)である。やっとこれで帰ることができる。
 久美子(くみこ)は船の上から桟橋(さんばし)にいるケンちゃんに叫(さけ)んでいた。
「卒業したら戻ってくるから、それまで頼んだわよ!」
 あれからどうなったのか、伊集院(いじゅういん)も林田も教えてもらえなかった。まあ、恋の話など全く興味(きょうみ)のない伊集院にとってはどうでもいいことなのだが。
 船の汽笛(きてき)が鳴って、ゆっくりと連絡船は桟橋を離れて行く。久美子も林田も、見送りに来ていた若者たちに手を振っていた。短い間だったが、二人とも胸に込み上げてくるものがあった。伊集院だけは、手を振るでもなく、離れていく島を見つめていた。――いつまでも島を見つめている伊集院に、林田は言った。
「そんなに落ち込むなよ。仕方(しかた)ないさ。お宝なんか、そう簡単(かんたん)に――」
「落ち込む? どうして落ち込まなきゃいけないんだ。この旅の目的は達成(たっせい)した」
「えっ? じゃ、お宝を…。まさか、見つけたんじゃないだろうな!」
「もちろん、見つけたさ。すごいお宝だったよ」
「どこにあるんだ。俺にも見せてくれよ。その権利(けんり)は、俺にもあるはずだ」
「あのお宝は、あの島にあるからお宝なんだ。あそこから持ち出したら価値はなくなるよ」
<つぶやき>どういうこと。いつ見つけたのよ? こんな結末なんて…。納得できない。
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「海賊島15」

2015-07-14 20:10:50 | ブログ短編
「あのさ、ちょっと黙っててくれないかな。俺は久美(くみ)ちゃんと…」
 リーダーは伊集院(いじゅういん)に向かって言った。伊集院は両手を上げてそれに答える。この頃には、リーダーの後ろの方に若者たちがぞろぞろと姿を現していた。
 伊集院は、彼らに向かって叫(さけ)んだ。「オイ、君たち! ちょっと手伝ってくれないか。ここを平(たい)らにしたいんだ――」
 伊集院はそう言いながら、若者たちの方へ歩いて行った。残された林田(はやしだ)は、久美子(くみこ)と見知らぬ男の顔を見比(みくら)べて…。いくら林田でも、ここにいちゃいけないことは理解したようだ。伊集院の後を追いかけて駆け出した。久美子はスコップを手に取ると砂をかきながら、
「ねえ、ケンちゃん。約束、覚えてる? あたしがこの島を出るとき…」
「もちろん、覚えてるさ。だから、この島で待ってたんじゃないか」
「うそよ。じゃあ、これはなに?」久美子は砂浜を見渡して、「こんなにしちゃって…。あたし、言ったよね。戻ってくるまで、この美しい島を守ってねって。それなのに…」
「それは…。でも、この島を守るには金がいるんだ。金を稼(かせ)ぐには――」
「それは分かるけど、あなたのやり方じゃ…。全然、ダメでしょ!」
 伊集院は、離れた場所から二人の様子を見つめていた。林田が呟(つぶや)いた。
「あの二人、どういう関係なんだ? お前、いいのかよ。二人だけにして」
「だから、俺とあの娘(こ)とは何の関係もない。何度も言ってるだろ。いい加減(かげん)――」
<つぶやき>何かをなしとげるためには努力が必要だよね。でも、やり方を間違えると…。
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