みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく17~はじまり」

2014-06-30 19:06:34 | ブログ連載~しずく
 翌日。つくねが従姉妹(いとこ)だと知ったとき、しずくは驚きの声を上げた。そして、今までどうして神崎(かんざき)つくねのことが気になっていたのか、やっとその理由(わけ)が分かった気がした。
 数日間は何事もなく過ぎていった。アパート崩落(ほうらく)のニュースも、新聞記事に小さく載(の)っただけで騒(さわ)がれることはなかった。つくねも月島(つきしま)家の生活に慣(な)れてきて、もう家族の一員である。弟の貴志(たかし)は何だか複雑な気持ちのようで、ソワソワと落ち着かないようだ。無理もない。姉と違って、こんな奇麗(きれい)なお姉さんを間近に見られるんだから…。
 学校では、相変(あいか)わらずつくねは一人でいることが多かった。従姉妹だということも、誰にも話すなと口止(くちど)めをした。意識的(いしきてき)にしずくと距離(きょり)を取っているようだ。しずくにはそれが気に入らなかった。教室で話しかけても、家にいる時とは正反対に冷(さ)めた反応しか返ってこない。それに、家に帰るときだって一緒(いっしょ)に帰ろうとはしないのだ。
 事件が起こったのはそんな時だ。朝、教頭(きょうとう)先生が教室へ来てみんなを座らせて言った。
「実は、担任の山波(やまなみ)先生が、事情(じじょう)があって学校を退職(たいしょく)なさいました」
 教室中がざわついた。ちょっと頼(たよ)りない先生だったが、生徒にはそこそこ人気はあったようだ。だから辞(や)めたと聞かされて、信じられないという声があがったのだ。教頭は、
「静かに! そういうわけで、今日から新しい先生に来てもらいました」
 教室の扉(とびら)がガラガラと開いて、黒いスーツに黒髪を長く伸(の)ばした女教師が入って来た。
<つぶやき>どうして先生は辞めてしまったのか。そして、新たに登場した女教師は何者?
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「プライド」

2014-06-27 19:17:39 | ブログ短編
 建太(けんた)はあかねを前にして諭(さと)すように言った。「いい加減(かげん)、あいつのこと離(はな)してやれよ。お前だって分かってるだろ。あいつが、お前のこと、もう好きじゃないって…」
 あかねは哀(かな)しそうな目を向けたが、ある決意(けつい)を持って口を開いた。
「そんなこと、分かってるわよ。でも、私の方が先なの。彼のこと、好きになったのは…。それなのに、何で私が…。私、別れないわ。あの娘(こ)には渡(わた)したくないの!」
「あかね、そんなことして何になるんだよ。もういいじゃないか」
「よくない! 私一人だけ、バカみたいじゃない。何でこうなるのよ。私は悪くないわ」
 あかねは感情の高ぶりをグッとこらえるように唇(くちびる)を噛(か)みしめた。建太は震える彼女の手を取りギュッと握(にぎ)りしめると、前よりも強い口調(くちょう)で言った。
「あいつのこと、もっと苦(くる)しめるつもりか。お前が好きになった男じゃないか」
「そうよ! だからなに?――私は、彼のこと好きなの。好きなのに…」
 建太はあかねの手を離すと、「そうだな。お前は悪くない。――でもな、このままだと、お互い傷(きず)つけ合うだけだ。あいつも妙(みょう)に優しいとこあるから、お前を突き放せないし…。お前だって、それ分かっててわがままを通してるんだろ?」
「いけない? それぐらいいいじゃない。――私のこと嫌いになってもいいわ。だけど、絶対、あの娘(こ)とは…。私にだって、意地(いじ)があるんだから」
<つぶやき>彼女の凍(こお)った心は溶(と)かせるのか。絡(から)んだ赤い糸はほどけそうにありません。
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「きゅんきゅん」

2014-06-24 19:30:48 | ブログ短編
「ねえ、お願いがあるんだけど…」彼女は彼を前にして言った。「わたしたち、最近マンネリになってると思うの。だから、きゅんきゅんしたいの。きゅんきゅんさせて」
 彼は、彼女が何を言っているのか分からず思わず聞き返した。「きゅんきゅんって?」
 彼女は不満(ふまん)そうに頬(ほお)を膨(ふく)らませると、じれったそうに言った。
「だから、ほらドラマとかで言うでしょ。胸(むね)がきゅんとなる台詞(せりふ)。もう、分かんないかな」
「分かんないよ。俺(おれ)にどうしろっていうんだよ」
 彼は面倒(めんどう)くさそうな顔をする。突然、彼女はドラマの主人公(しゅじんこう)にでもなったように、
「俺、お前以外の女に興味(きょうみ)なんかないよ。だから、お前も俺だけを見ててくれ」
 彼女はそう言い終わると胸に両手を押し当てて、「ああーっ、きゅんとくるーっ!」
 その様子(ようす)を見て彼は、「お前、大丈夫(だいじょうぶ)か? 変なもんでも食ったんだろ」
「あーっ、ひどい。何でそんなこと言うかな。たまには、そういうこと言ってくれてもいいじゃない。あたしは聞きたいの。聞かせてよ」
 彼女は頑固(がんこ)なところがある。へそを曲(ま)げると大変だと思った彼は、仕方(しかた)なく彼女の言った台詞をくり返した。でも、彼の言い方が気に入らなかったみたいで、
「ダメ、ダメ。全然、気持ちが入ってないよ。あたしへの愛はその程度(ていど)なの?」
 彼はやけくそになって、「俺は、お前に興味なんかないよ。……あっ」
 彼女は彼を睨(にら)みつけた。彼は言い間違えただけなのだが、この代償(だいしょう)は大きかった。
<つぶやき>好きな人に愛の言葉を言ってますか? さり気なく伝えてあげましょうね。
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「志願する」

2014-06-21 19:21:16 | ブログ短編
「どうして、勝手(かって)にそんなこと決めたのよ!」
 女は哀(かな)しみと怒(いか)りで混乱(こんらん)していた。男はそんなこと気にもかけないで答える。
「向こうへ行けば、もっと素敵(すてき)な女性がいるかもしれないだろ。だから志願(しがん)したんだ」
 女は男の腕(うで)にすがりつき、「そんな…。死んじゃうかもしれないのよ。それに、向こうへ行ったからって、あたしより良い女なんて――」
「心配すんなよ。俺(おれ)はこっちで君と付き合えたんだ。向こうへ行ったって上手(うま)くやってやるさ。俺には、その自信(じしん)がある。俺はモテる男なんだ」
 女は呆(あき)れて言った。「それは違うわ。たまたま、あなたがあたしのタイプだっただけで…。あなた、他の女性と付き合ったことなんてないじゃない」
 男はなおも強気(つよき)な態度(たいど)だ。「それは違うぞ。君以上の女性がいなかっただけで、付き合おうと思えば、誰とだって。――それに、もう決めたことだ。明日、ここを離れるから」
 女は男の顔をキッと睨(にら)むと、男の腕を押しやって吐(は)き捨(す)てるように言った。
「だったら、もう二度と戻って来ないで! あたしは、他の人と一緒(いっしょ)になるから。後悔(こうかい)したって、あたし、知らないから! さあ、行きなさいよ。出てけ!」
 男は女に背を向けると、振り返りもせず、そのまま歩き出した。
<つぶやき>男は冒険を求めるのです。でも女を捨てるだけの価値があったのでしょうか?
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「誰でもない誰か」

2014-06-18 19:04:46 | ブログ短編
 この会社には特別(とくべつ)な社員がいる。どこの部署(ぶしょ)にも所属(しょぞく)せず、その社員の顔を知っている者は誰もいない。だが、その存在は伝説のように語り継(つ)がれている。
 ――好恵(よしえ)は思い悩んでいた。ある取引を任(まか)されたのだが、契約書に不備(ふび)があり、会社に損失(そんしつ)が出るかも知れない。もしそうなったら、自分一人の責任ではすまされない。そんな時だ。伝説の<誰でもない誰か>の話を聞いたのは。その人に頼めば、どんなことでも解決してくれるという。好恵は、藁(わら)にもすがる思いでお願いすることにした。
 他の社員が帰ったあと、好恵は依頼書に自分の失敗を告白し、助けてほしいと書き綴(つづ)った。自分の不甲斐(ふがい)なさに涙がこみ上げてくる。好恵は書き上げた依頼書を自分の机の上に置くと、必死に手を合わせた。伝説では、退社する時に依頼書を机の上に置いておけば、次の日にはすべて解決する。ということになっている…らしい。
 翌朝、好恵はいつものように出社すると、あの依頼書は無くなっていた。何だがホッとして、好恵の疲れた顔に安堵(あんど)の表情が浮かんだ。その時だ。部長の呼ぶ声で現実に引き戻された。好恵は、恐る恐る部長の前へ…。部長は、
「君が担当していた例の取引なんだが、先方の事情(じじょう)でダメになった。今まで頑張ってくれたのに残念だが、まあ仕方がないさ。君には、別の仕事を――」
<つぶやき>こんな人がいてくれれば助かるのに。でも現実はそんなわけにはいきません。
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