みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「しずく15~食卓」

2014-05-30 19:19:56 | ブログ連載~しずく
 食卓(しょくたく)についた神崎(かんざき)つくねは、山盛りの料理が並んでいるので驚いて目を丸くした。
 月島(つきしま)しずくは呆(あき)れて母親に囁(ささや)いた。「何なの、これ。こんなに作っちゃって…」
 母親はそんなこと気にもかけずに、「だって、あなたが友だちを連れて来るなんて考えてもみなかったんだもん。もっと早く連絡してくれれば、美味(おい)しいもの作ってあげたのに」
 父親がさり気なく口を挟(はさ)んだ。「まあまあ、いいじゃないか。で、神崎さんは、その…。ああいう格好(かっこう)が、今の流行(はやり)なんですかね。おじさんには、どうも理解できないが…」
 最初の出会いが寝巻(ねまき)姿である。疑問(ぎもん)を持つのは至極当然(しごくとうぜん)とは言える。つくねは、「ええ、まあ…」と曖昧(あいまい)に返事を返した。まさか、変な人に狙(ねら)われているとは、とても言えない。
 いつもならすぐに自分の部屋へ行ってしまう弟(おとうと)が、今日はやけに静かに座っている。彼の目は、つくねにくぎ付けになっているようだ。しずくは弟の頭をひっぱたくと、強い口調で言った。「変な目で見ないの。食べ終わったらさっさと行きなさいよ」
 それを見たつくねは、「ダメよ。そんなことしたら、可哀想(かわいそう)だわ」と、可愛(かわい)いキャラを全開にする。子供たちのやり取りを、微笑(ほほえ)ましく見ていた母親がつくねに声をかけた。
「今日はもう遅いから、泊(と)まってらっしゃい。ねえ、いいでしょ?」
「でも、ご迷惑(めいわく)じゃ…」つくねは伏(ふ)し目がちに答えた。
「いいのよ。そんなこと気にしなくても」母親は優しく微笑んだ。
<つぶやき>月島家はとってもアットホームなんです。つくねはちょっと戸惑(とまど)ってます。
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「いちかばちか」

2014-05-28 20:21:08 | ブログ短編
 亜希(あき)が、教室にいた洋子(ようこ)を呼びに来た。洋子はちょうどお弁当を食べ終わったところで、キョトンとした顔で、「行くって、どこへ? あたし、これから――」
「今がチャンスなの」亜希は洋子の耳元で囁(ささや)いた。「山田(やまだ)くん、一人で屋上(おくじょう)にいるから」
 洋子は急に頬(ほお)を赤らめておどおどしながら、「山田くんって…。あたし、そんな…」
「もう、山田くんのこと好きなんでしょ。みんな知ってるわよ」
 洋子が顔を上げると、周(まわ)りにいた同級生たちみんな、一斉(いっせい)に頷(うなず)いた。洋子はますます恥(は)ずかしくなり、すっとんきょうな声を上げて、「ち、違うわよ。あたし、あたしなんか…」
「大丈夫よ。山田くん、今、誰とも付き合ってないんだって。これは確かな情報よ」
「でも、だからって…。あ、あたしのことなんか――」
「そんなこと、コクってみなきゃ分かんないでしょ。いちかばちかで、当たって砕(くだ)けちゃおうよ。そんなんだから誰とも付き合えないんだよ」
「でも、当たって砕けちゃったらダメでしょ。あたしは、別にこのままでも…」
 尻込(しりご)みしている洋子を、亜希は強引(ごういん)に引っ張って屋上へ向かった。屋上では山田くんがぼんやりと空を眺(なが)めていた。亜希は洋子の背中を押して山田くんの前へ行くと、
「山田くん、洋子が話があるんだって。聞いてあげてよ」
 洋子は山田くんに見つめられて、ますます顔を赤くしてうつむいてしまった。
<つぶやき>ちゃんと告白できるのかな。でも、どうして山田くんは屋上にいたのでしょ?
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「執着心」

2014-05-25 19:51:54 | ブログ短編
「えっ、引っ越すの?」幸恵(ゆきえ)は唖然(あぜん)として知佳(ちか)の顔を凝視(ぎょうし)した。
「そうなの。急にパパの転勤(てんきん)が決まって。来週には――」
 幸恵は知佳の手を取ると、力いっぱい握(にぎ)りしめて言った。
「ダメよ! 私たち、ずっと友達だって約束(やくそく)したじゃない。どこにも行かないで!」
 知佳は思わず、「痛いわ。…幸(ゆき)ちゃん、離(はな)してよ」
 幸恵は構(かま)わずに、グイグイと知佳を引っ張って歩き出した。知佳は恐くなって、
「ねえ、どうしちゃったの? やめてよ。離して…」
「私、離さないわよ。知佳だって、私と別れたくないでしょ。私が何とかするから」
 幸恵は使われなくなった工場の倉庫(そうこ)へ知佳を連れて来た。重い扉(とびら)についた鎖(くさり)を外(はず)すと、扉の中へ知佳を押し込めて幸恵は言った。
「心配しないで。ここはパパの工場なの。だから誰も来ないわ。ここにいれば、ずーっと一緒(いっしょ)にいられる。これから、毎日逢(あ)えるわね。楽しみ」幸恵は本当に嬉(うれ)しそうに笑った。
 知佳は懇願(こんがん)するように、「ねえ、あたし、帰りたい。お家に帰りたいの。お願い!」
 幸恵は、逃げ出そうとする知佳を押し倒(たお)して重い扉を閉めた。外から鎖を巻きつける冷たい音が響いた。薄暗い倉庫の中で知佳は途方(とほう)に暮(く)れた。ふと、手に何かが触(ふ)れた。目をこらして見て見ると、それは何か動物の骨のように見えた。
<つぶやき>執着(しゅうちゃく)って恐いよ。でも執着がなくなれば、何もなかったように忘れちゃう。
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「全球凍結」

2014-05-23 12:16:54 | ブログ短編
 テレビのニュース番組が、いま地球規模(きぼ)で起こっている異常気象について解説していた。地球の平均気温が最大1度下がっていると。しかも気温低下の割合が徐々(じょじょ)に増えているらしい。このままでいくと、あと半年もしないうちに地球の様子(ようす)は一変(いっぺん)してしまうだろう。
 大学の研究室でニュースを見ながら、山崎(やまさき)は頭を掻(か)きむしった。気温低下の原因が全くつかめなかったからだ。そこへ、同僚の斉藤(さいとう)が駆(か)け込んで来て叫(さけ)んだ。
「最新のデータが届きました。いまモニターに出します」
 斉藤がパソコンを操作すると、大きなモニターに地球が映し出された。人工衛星からのデータを元に作られた地球の大気の様子を現したものだ。それを見た山崎は息を呑(の)んだ。
「何だこれは…」山崎はモニターに近寄り、「オゾン層(そう)が…。そんな馬鹿(ばか)な――」
 オゾン層が虫食いの跡(あと)のように、ところどころで薄くなっていた。山崎は呟(つぶや)いた。
「これが原因なのか…。地球の熱が、どんどん宇宙空間に奪(うば)われているんだ」
 研究員の一人が言った。「じゃあ、氷河期(ひょうがき)が来るってことですか?」
「それですめばいいが…。下手(へた)をすると、全球凍結(ぜんきゅうとうけつ)ってこともあり得(え)る。そうなったら、人類は…。いや、地球上の生物のほとんどが死滅(しめつ)するかもしれない」
 研究室の空気が張りつめた。斉藤が反論(はんろん)して、「でも、温暖化に向かっていたんじゃ」
 山崎はデータを食い入るように見つめ、「何が引き金だったんだ。それさえ分かれば…」
<つぶやき>地球規模で起こる異変を止めることはできるのか。とっても難しい問題です。
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「狼の逆襲」

2014-05-21 19:04:42 | ブログ短編
「まあ、ステキな場所ね。こんな所があるんなら、もっと早く教えてよ」
 赤ずきんは怒(おこ)ったふりをしてみせる。猟師(りょうし)のボーイフレンドはそんな彼女を見て言った。
「君も18だね。これは僕からの誕生日プレゼントだよ。この森の中で一番美しい場所さ」
「ありがとう。あなたが、こんなことをする人だとは思わなかったわ。もっと――」
 その時、森の中がざわついた。何かの気配(けはい)が、二人のまわりを取り囲(かこ)んだ。枯(か)れ枝(えだ)の折れる音がピシッ、ピシッと聞こえてくる。猟師の青年は持っていた銃(じゅう)を構(かま)える。木立(こだ)ちの間の暗がりに、狼(おおかみ)の二つの目がいくつも見え隠れしていた。赤ずきんは身体をこわばらせた。だが青年は何を思ったか、突然、銃口(じゅうこう)を赤ずきんに向け不気味(ぶきみ)な笑(え)みを浮かべた。
「やっとこの日が来た。お前はここで死ぬんだ。俺たちの森で…」
 青年は銃を下ろすと、口を大きく開けて見せて、「でも、銃なんかじゃ殺さない。俺の口で、お前の肉を切り裂(さ)いてやる。お前は苦しみながら死んで行くんだ」
 赤ずきんは震える声で言った。「あたしの彼をどこへやったの?」
「ああ。あの猟師なら、今頃、俺の兄弟の腹(はら)の中さ」
 青年は赤ずきんを押し倒し、地面に押さえつけた。青年の姿は、もう人間ではなかった。その獣(けもの)は、涎(よだれ)を赤ずきんの胸元にたらし、彼女の胸(むね)に食(く)らいつこうとした。その時、銃声が森の中に響(ひび)き渡(わた)った。獣たちは、慌(あわ)ててその場から逃げ出した。
<つぶやき>彼が助けに来てくれたんだね。狼さんもこれで諦(あきら)めてくれるといいんだけど。
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