みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「いいなずけ」

2014-02-26 19:17:42 | ブログ短編
 僕にはいいなずけの彼女がいる。僕がまだ小さかった頃、お互いの両親が決めたことだ。その頃は、そんな話を聞かされてもちんぷんかんぷんで、何のことだか全く理解(りかい)していなかった。それに、その娘(こ)とは兄妹(きょうだい)のように育てられたから、好きという感情なんて…。
 世の中のことが分かってくると、僕にはいろんな疑問(ぎもん)がわいてきた。本当にこのままこの娘(こ)と結婚してもいいのか? 今、他に好きな人がいるわけでも、その娘(こ)のことが嫌いってわけでもないけど…。結婚する歳(とし)に差しかかって、僕はもやもやとしていた。
 そんな時だ。いいなずけの彼女が突然訪(たず)ねてきた。遠くの大学へ通っていたので、もう四年近くも会うことはなかった。その娘(こ)は僕の顔を見るなり言った。
「ねえ、結婚式はいつにする? 私は6月がいいんだけど」
 僕は驚いた。何でそんな話を…。目を丸くしていた僕を見て、彼女は続けた。
「やだ、忘れちゃったの? 約束したじゃない。大学卒業したら結婚するって」
「ちょっと待ってよ。僕、そんなこと…」言った覚(おぼ)えなんて全くない。
 彼女は頬(ほお)を膨(ふく)らませて――。そういえば、小さい頃、彼女は怒(おこ)るといつもこんな顔をしていた。僕はその顔を見るたびに、ごめんなさいを連発(れんぱつ)していた。これはもう条件反射(じょうけんはんしゃ)のようなものだ。僕は思わず「ごめんなさい」と言いそうになって、言葉を呑(の)み込んだ。
<つぶやき>果たして彼は彼女との結婚に踏み出すのか? それとも…。難しい問題です。
Copyright(C)2008-2014 Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

「最高責任者」

2014-02-23 18:59:23 | ブログ短編
 とあるビルの最上階(さいじょうかい)。分厚い絨毯(じゅうたん)が敷かれた廊下(ろうか)を、作業服を着た若い男がオドオドしながら段ボール箱をかかえて歩いていた。男の前を歩いているのは秘書(ひしょ)で、とても奇麗(きれい)な女性だった。だからって、この男が彼女目当(めあ)てに付きまとっているわけではない。
 男は、この会社に事務用の備品(びひん)を届(とど)けに来ただけなのだ。それなのに、突然、CEOが呼んでいると…。CEOって何なのか、男は訳(わけ)が分からない。よく訊(き)いてみると、この会社の最高責任者(さいこうせきにんしゃ)、つまり社長だということだ。そんな偉(えら)い人と会うことなんて、まずあり得(え)ない話だ。男がびびるのも無理はない。
 秘書は重厚な扉(とびら)の前で足を止めた。扉の上には社長室とプレートが貼(は)られていた。秘書が扉を叩くと、扉は音もなくスーッと開いた。秘書は、どうぞ、と男に中に入るように促(うなが)した。男は緊張(きんちょう)のあまりツバを飲み込んだ。
 部屋の中には高そうな調度品が並び、大きな机が置かれていた。その向こう側に、大きな背もたれのある椅子(いす)が目に入った。椅子は窓の方を向いているので、座っている人の姿は見えなかった。男は口の中がカラカラになっていたので、声をつまらせながら言った。
「あ、あの…。僕、何か、まずいことでも……」
「あたし、キレイなクリップが欲(ほ)しいの。なんで可愛(かわい)いのがないのよ」
 大きな椅子が動き、男の目に飛び込んできたのは小さな女の子。男は目が点になった。
<つぶやき>確かに会社には可愛いものってないよね。癒やされる職場を作ってみては?
Copyright(C)2008-2014 Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

「鉢合わせ」

2014-02-21 18:55:51 | ブログ短編
 とある洒落(しゃれ)た居酒屋(いざかや)風のお店。沙恵(さえ)が入って行くと、待っていた友だちが声を上げた。
「もう、遅(おそ)いよ。先に始めちゃってるわよ」
 沙恵は女子会と聞いてやって来たのに、どう見ても…。沙恵は友だちを引っぱって来て、
「なにこれ。合コンじゃない。私、彼がいるんだから…」
「いいじゃない。どうせ人数合わせなんだから。お願い、付き合ってよ」
 友だちに強引(ごういん)に座(すわ)らされた沙恵。目の前に座っている男性を見て愕然(がくぜん)とした。それは、沙恵が付き合っている彼。今日は用(よう)があるって、デートをキャンセルした彼だ。彼も沙恵のことに気づいて目をパチクリさせている。沙恵は彼を睨(にら)みつけて言った。
「あの、合コンとか、よくいらっしゃるんですか? 私は始めてなんですけど」
 彼は動揺(どうよう)を隠(かく)しながら、「ホントですか? いや、僕は、たまに、なんですけど…」
「そうなんですか。それで、可愛(かわい)い子、見つかりまして?」
 沙恵はあくまでも初対面(しょたいめん)を装(よそお)っていた。ここで、この人が彼です、なんて言えるわけないじゃない。沙恵は顔では微笑(ほほえ)みを浮かべているが、内心は煮(に)えたぎっていた。
 彼はとり繕(つくろ)うように、「でも、僕は人数合わせみたいなもんで、誰かと付き合おうとかそういうのは…、まったく考えてませんから。だって、僕には――」
 彼はそこで言葉を呑(の)み込んだ。沙恵が、ジョッキのビールをグイグイと飲み始めたのだ。
<つぶやき>この先、どんな波乱が待ち受けているのか…。考えただけでも恐ろしいです。
Copyright(C)2008-2014 Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

「おみくじ」

2014-02-18 15:07:57 | ブログ短編
 僕は、正月早々(そうそう)、神社のおみくじで大凶(だいきょう)を引いてしまった。何なんだよ、これは…。去年は付き合ってた彼女に振(ふ)られ、仕事も巧(うま)くいかずにさんざんな年だったのに、今年はどうなっちゃうんだよ。僕がくさっていると、隣(となり)にいた妹が言った。
「もう、そんなことで落ち込まないで。大丈夫(だいじょうぶ)よ。考えようによっては、これも良いことよ。だって、これ以上悪くなることないんだから。そうでしょ」
 確(たし)かに、妹の言うことには一理(いちり)ある。何だよ、こいつ。いつもは僕のことバカにしてるくせに、今日はやけに優(やさ)しいじゃないか。僕は、少しだけ妹を見直(みなお)した。
 僕は、ふっと妹の持っているおみくじを覗(のぞ)いてみた。…大吉(だいきち)! こいつ、さっきからニコニコしてると思ったら、こういうことだったのか?
 僕は妹の顔を見つめた。妹は素知(そし)らぬ顔でおみくじをバッグにしまうと、
「早く行こうよ。福袋(ふくぶくろ)が無(な)くなっちゃうわ。せっかくお兄ちゃんが買ってくれるって――」
 僕は買うなんて言ってないぞ。そうか…。そのために、僕を初詣(はつもうで)に誘(さそ)ったのか? まったく、なんて妹だ。僕は妹の後ろ姿を追いながら呟(つぶや)いた。
「こいつ、絶対、僕のツキまで吸(す)い取ってるんだ。そうじゃなきゃ、こんな悪いことが続くはずが…。くそっ、負けないぞ。絶対、ギャフンと言わせてやる」
<つぶやき>彼女はいろんな意味で、お兄ちゃんを大切に思っているのかも知れませんね。
Copyright(C)2008-2014 Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

「しずく7~消えた女」

2014-02-15 10:05:07 | ブログ連載~しずく
 男の冷たい無表情(むひょうじょう)な目が月島(つきしま)しずくを見つめたいた。しずくは男の手を振り解(ほど)こうともがいていたが、だんだん力が抜(ぬ)けていき、意識(いしき)が薄れていく。
 男がしずくの胸(むね)に刃物(はもの)を突(つ)き立てようとしたとき、男の腕(うで)を掴(つか)んだ手があった。男は振り向く間もなく、次の瞬間(しゅんかん)には道路へ倒れ込み、そのまま動かなくなってしまった。
「大丈夫(だいじょうぶ)?」と女の声がした。しゃがみ込んでいたしずくは、喘(あえ)ぎながら見上げる。その視線の先には、女性がひとり立っていた。そこへ、友だち二人か駆(か)け寄って来る。
 パトカーや救急車の赤いランプが辺(あた)りを染(そ)めていた。周辺(しゅうへん)は騒然(そうぜん)となっている。男は駆けつけた警官たちに取り押さえられ、被害者の女性は救急車で運ばれて行った。手当を受けていたしずくのところへ刑事がやって来た。しずくは事情を訊(き)かれて、
「突然襲(おそ)われて…。でも、女の人が助けてくれたんです」
 刑事は興味(きょうみ)を持って訊き返す。「それは、どんな人でした?」
 しずくは周りを見回したが、その女性はいつの間にか消えていた。
「髪(かみ)の長い人で、顔は…、よく覚(おぼ)えてません」
 しずくはそばにいた友だちに、「あなたたちも見たでしょ? 私を助けてくれた人」
 水木涼(みずきりょう)がそれに答えて、「何を言ってるの? そんな人いなかったわ。しずくが犯人(はんにん)を突き飛ばしたんじゃない。私たち、もう死んじゃうんじゃないかって…」
 涼の目に涙(なみだ)が光った。川相初音(かわいはつね)は、しずくをギュッと抱きしめた。
<つぶやき>謎の女性はどうして消えたのか? つくねの言ったことが本当になって…。
Copyright(C)2008-2014 Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加