みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「とりあえず」

2014-01-30 09:57:17 | ブログ短編
「ねえ、私のことどう思ってるの。はっきり聞かせてよ」
 愛子(あいこ)は義之(よしゆき)を前にして、真剣(しんけん)な表情で言った。二人は付き合い始めて三年目。もう結婚を考えてもいいはずだ。彼女がいくらそれを匂(にお)わせる行動をしても、彼は全く気づかない。というか、気づかない振りをしているのかもしれない。ここで彼の口癖(くちぐせ)が出る。
「まあ、その件はとりあえず…」
「あなた、いっつもそう。とりあえず、とりあえずって、そればっかし」
「ちょっと待てよ。だから、今はホラ、お互い仕事が忙しいし、もう少し…」
「じゃあ、いつよ。そんなこと言ってたら、結婚なんて」
「でも、こういうのはタイミングっていうか。慌(あわ)ててしなくても…」
「今がそのタイミングでしょ。なにグダグダ言ってるのよ。はっきりしなさいよ」
「そうだね、君の言い分も分かるよ。じゃあ、とりあえず何か食べに行かない。俺、もうお腹(なか)ペコペコで…。食べてからゆっくり考えるということで。とりあえず…」
 愛子は呆(あき)れてしまった。この男は、私より食欲(しょくよく)を優先するんだ。愛子は言った。
「あなたにとって、私は何なの? それだけ先に聞かせてよ」
 義之はつい言ってしまった。「だから君は、とりあえずキープしてる――」
 愛子は義之を引っぱたくと、くるりと背を向けスタスタと行ってしまった。
<つぶやき>女性をあまり待たせるのは良くないかも。真剣に向き合わないといけません。
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「素敵な体臭」

2014-01-28 19:03:20 | ブログ短編
 とあるお見合(みあ)いパーティーに誘(さそ)われた好恵(よしえ)。会場に入って驚いた。こんなに大勢(おおぜい)の人が参加しているとは思ってもいなかった。好恵は圧倒(あっとう)されるばかりだ。ふと気づくと、好恵を誘った貴子(たかこ)がいつの間にか消えていた。好恵は心細くなって貴子を探し回った。
 しばらくして、好恵は妙(みょう)な行動をしている貴子を見つけた。彼女は男性に近づいては、鼻(はな)を近づけてクンクンと臭(にお)いを嗅(か)いでいるようだ。好恵は貴子の腕(うで)をつかむと、会場の隅(すみ)の方へ引っぱってきて言った。
「何やってるのよ。そんな恥(は)ずかしいことしないで。みんな変な目で見てるじゃない」
「何よ、邪魔(じゃま)しないで。あたしは科学的な見地(けんち)で最良(さいりょう)の男を見つけようとしてるだけよ」
「何が最良よ。どう見たって、おかしな女にしか見えないわ」
「あなた、本当に分かってないわね。異性(いせい)の臭いってとっても大切なのよ。遺伝的(いでんてき)に見ても証明されてるわ。あたしは人間の奥底(おくそこ)に潜(ひそ)む本能(ほんのう)をとぎすましてるの」
 貴子は理系(りけい)女子の典型(てんけい)である。妙に理屈(りくつ)っぽいところはちっとも変わらない。
「あなたも試(ため)してみたら」貴子は好恵の耳元でささやいた。「うっとりするような体臭(たいしゅう)の男を見つけたら、それが遺伝的に最も遠い人よ。元気な子供を授(さず)かることができるはず」
「あのね、遺伝的に遠くても幸せになれるとは限らないでしょ。ちゃんと人を見なさいよ」
<つぶやき>幸せって何でしょう。どうしたら幸せになれるのか…。これは難問かもね。
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「しずく5~転校生」

2014-01-26 18:56:23 | ブログ連載~しずく
 朝のホームルームの時間。担任(たんにん)の先生と一緒(いっしょ)に女の子が入って来た。転校生(てんこうせい)?
 教室がざわついた。特(とく)に男子。その女の子がけっこう可愛(かわい)かったので、かわい~ィとか、オレ惚(ほ)れちゃいそう、などなど。全(まった)く男子の頭の中はどうなってるのよ。
 しずくが呆(あき)れて見ていると、先生が声を上げた。「こら、静かにしろ!」
 朝の挨拶(あいさつ)をすませると、先生は黒板(こくばん)に転校生の名前を大きく書いた。神崎(かんざき)つくね。彼女はみんなの前に立つと、緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで頭を下げた。確かに可愛い。女子から見ても異論(いろん)が出ることはないだろう。この学校でも五本の指には入るはずだ。
「席は……月島(つきしま)の隣(となり)が空(あ)いてるな。じゃあ、そこへ座りなさい」
 先生が彼女を促(うなが)した。しずくの席の隣。ずっと休んでいる子の席だ。しずくもどんな子なのか一度も顔を合わせたことがない。つくねは席のところまで来ると、しずくにちょこんと頭を下げた。何か、感じのいい娘(こ)だな、としずくは思った。
 授業中ずっと、しずくは隣のつくねのことが気になってしまった。物静かで、どこか謎(なぞ)めいたところがある。それに…、どこかで会ったことがあるような。しずくは不思議な感覚(かんかく)を味(あじ)わっていた。放課後(ほうかご)、しずくのところに涼(りょう)がやって来て、
「ねえ、これから初音(はつね)と三人で買い物に行かない? 私、買いたい物があるのよ」
 その時、ぽつりとつくねが言った。「今日はやめた方がいいよ。良くないことがあるから」
<つぶやき>つくねってどんな娘なんでしょう。ちょっと気になりません? この先は…。
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「振られる」

2014-01-24 18:46:11 | ブログ短編
「ねえ、隆夫(たかお)ってのりちゃんと別れたんだって?」
 香里(かおり)のこの言葉に、隆夫はキョトンとした顔を向けた。香里は、
「だって、昨日、のりに合ったとき言ってたわよ。…えっ? 違うの?」
 隆夫は身に覚えのないことで、「なに言ってるの? 別れてなんか…。だって、まえ会ったときも…。別れる理由なんか…。そんな話、全然……」
 隆夫は心配になってのりちゃんに電話をかけた。だが、着信拒否(きょひ)されているみたいでつながらない。隆夫は香里に詰(つ)め寄るようにして訊(き)いた。
「なあ、昨日、のりちゃん、他に何か言ってなかったか? 今、どこにいるんだよ!」
「そんなこと知らないわよ。昨日、たまたま駅で会って…」
「何でだよ。先月の彼女の誕生日のとき奮発(ふんぱつ)してプレゼント買って、俺、プロポーズもしたんだぞ。俺たち、付き合ってから一度も喧嘩(けんか)してないし…。何でこうなるんだよ」
「あら…、そうなんだ。二人はそんなことになってたんだね」
 香里は慰(なぐさ)めるように、「のりのこと悪く言いたくないけど。彼女、他にも付き合ってる人いたみたいよ。――もうさ、あんな女のことなんか忘れちゃいなよ」
「忘れられないよ。忘れられるわけないだろ。俺、ほんとに好きだったんだから…」
「もう、のりは戻って来ないよ。よし、今日は飲もう。私が愚痴(ぐち)聞いてあげるから」
<つぶやき>別れる時はちゃんと振ってあげましょう。そうしないと次の恋に進めない。
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「丸山さん」

2014-01-22 18:58:15 | ブログ短編
 会社の昼休み。女子たちが集まって思い思いの昼食をとっていた。たわいのない話をしているうちに、同僚(どうりょう)の丸山(まるやま)さんの話になった。
「ねえ、丸山さんって、すっごく変な人じゃない? 仕事は真面目(まじめ)なんだけど…」
「そうそう。しゃべり方は穏(おだ)やかで、いい人そうなんだけど。何かずれてるよね」
「ほら、昨日の飲み会でも、部長(ぶちょう)がオヤジギャグ連発したとき」
「ずれてたねぇ。他のみんなより反応(はんのう)おそっ。て言うか、ギャグが分かってないんだよ」
「私、この前、丸山さんがコピー機と話してること見ちゃいました」
「ウソ。何よそれ。どういうこと?」
「私もずっと見てたわけじゃないんですけど、何か、ご苦労(くろう)さんとか、頑張(がんば)れっとか…」
 さっきからずっと黙(だま)って聞いていた女子が、おもむろに口を開いた。
「あのさ、あたし、見ちゃったんだよね。近くの公園のベンチで、丸山さん、お弁当食べてて。別に覗(のぞ)いたわけじゃないのよ。見えちゃったの。その、お弁当がね、キャラ弁っていうか、男の人が食べるようなお弁当じゃなかったの」
「丸山さんってさ、結婚してたっけ? まだ、独身(どくしん)のはずよね」
「だったら、お弁当作ってくれる恋人がいるんじゃない? きっとそうよ」
「えーっ、あの丸山さんよ。あんな人好きになる物好(ものず)き、いるのかな?」
<つぶやき>おいおい、それは言いすぎですよ。でも、丸山さんってどんな人なんでしょ。
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