みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「宿題」

2013-02-28 09:45:50 | ブログ短編
「頑張(がんば)ってるわね。少し休憩(きゅうけい)しない?」
 母親は娘の部屋へ飲み物を運んできて言った。まだ小学生なのに良くできた子で、何も言わなくてもちゃんと勉強をしてくれる。親としては、小言(こごと)を言う必要がないので、とても助かっている。母親は娘が何をやってるのかと手元(てもと)を覗(のぞ)いてみた。
 すると娘は手で隠(かく)しながら、「見ちゃダメ。まだ書けてないから」
「何をしてるの?」母親はダメと言われるとますます気になってしまう。
 娘は、「宿題。家庭での役割分担(やくわりぶんたん)について、みんなの前で発表するの」
「そうなの。何て書いたの? お母さんにも読ませてよ」
 母親は半(なか)ば強引(ごういん)に、娘の書いていた原稿用紙を取り上げると、声を出して読み始めた。
「私の家では、朝食はいつもお父さんが作っています。お母さんは朝が苦手(にがて)で、全然(ぜんぜん)起きられないからです。でも、私が学校へ出かける頃には起きてきて――」
 母親は困った顔をして、「ねえ、まさか、これを、みんなの前で読んだりしないよね」
 娘は原稿を取り戻(もど)すと言った。「するわよ。そのために書いてるんだから」
「ねえ、ちょっと書き直(なお)さない? これじゃ、お母さん、何もしてないみたいじゃない」
「でも、ホントのことよ。私、嘘(うそ)は書けないわ」
「嘘じゃないわよ。お母さんだって、朝ごはん、作ってあげたことあったわよね」
<つぶやき>子供はちゃんと見てますよ。たまには、一生懸命のとこを見せておきましょ。
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「間違えちゃった」

2013-02-25 20:07:35 | ブログ短編
「ねえ、お母さん。何でこんなに送ってくんのよ」
 娘は宅配(たくはい)の段ボール箱の中を覗(のぞ)きながら、携帯電話の向こうの母親の返事を待った。母親は何のことか分からず、訊(き)き返したようだ。娘は少し言葉を強くして、
「だから、お餅(もち)よ。こんなに食べきれるわけないでしょ。私にどうしろっていうの」
 母親はやっと理解したらしく、早口で何かをまくしたてた。娘は、
「ちょっと、何それ。叔父(おじ)さんとこへ送るやつだったの。もう、何やってんのよ」
 母親は、どうしたらいいのか混乱しているようだ。娘は落ち着かせるように、
「ちょっと、なに慌(あわ)ててんの。……えっ? 私の荷物が叔父(おじ)さんのとこへ…」
 母親はさらにまくしたてているようで、ところどころ聞きとれない。
「はぁ? なに? そんな。食べきれない分は、会社で配れって…。そんなこと、できないわよ。恥(は)ずかしい。……えっ? もっと恥ずかしいこと…、なにそれ?」
 どうやら、叔父さんの所へ送ってしまった荷物に問題があるようだ。娘は不安を感じて、
「何が入ってたの? まさか、また変なの入れてないでしょうね。やめてよ。私、そんなのいらないからね。ちょっと、聞いてんの? お母さん!」
 電話は途中で切られてしまった。娘は、大きなため息をついた。
<つぶやき>間違いは誰にだってあります。でも、箱の中には何が入っていたんでしょう。
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「密会現場」

2013-02-23 19:18:33 | ブログ短編
 ベッドの中で女はささやいた。「ねえ、奥さんに気づかれない?」
「大丈夫さ」男は女と唇(くちびる)を重ねて、「あいつはプライドばっか高くて、俺のことなんか気にもかけやしない。それに、明日まで地方へ出張ってことになってるから」
「もう、いけない人ね」女は笑(え)みを浮かべると、男の胸に手を当てた。
 その時、ドアをノックする音が響(ひび)いた。「誰だよ。無粋(ぶすい)な奴(やつ)だなぁ」
 男はベッドから出るとガウンを羽織(はお)った。また、ノックの音。今度は少し強く叩いている。そして、ドアの向こうから女性の声が聞こえてきた。「ルームサービスです」
 男は首をかしげて呟(つぶや)いた。「そんなの頼んでないぞ」
 また外から、「当ホテルの二十周年記念で、無料サービスになっております」
 男はドアを開けた。外にいたのは、ホテルの従業員ではないようだ。その女は、男を押しのけて部屋の中へずかずかと入って来た。男は慌てて女を追いかける。女はベッドの中の女性を見つけると、ほくそ笑んだ。
 ベッドの女は毛布で顔を隠しながら、「奥さん…、奥さんなの?」
 男は慌てて、「違うよ。こんな女、俺は知らない。――君は、誰なんだ?」
 乱入(らんにゅう)した女は男を思いっきり引っぱたくと、「あなた、私の顔を忘れたの。私は、あなたの妻よ。私と結婚するって、あなた約束したじゃない!」
<つぶやき>これはどういうことかな? でも、修羅場(しゅらば)になることは間違いないようです。
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「片思い」

2013-02-21 20:37:51 | ブログ短編
 橋の欄干(らんかん)に手をついて川面(かわも)を見つめる男。何となく淋(さび)しげな表情を浮かべていた。そんな男のそばに、ゆっくりと近づく女。女は男に寄り添(そ)うように並び、優しく声をかけた。
「何してるの? こんなとこで」
 男は振り向きもせず呟(つぶや)いた。「別に…。ちょっと、なっ」
 女は同じように川面を見つめながら、「彼女には会えたの?」
「いや…。今さら俺が行ったって仕方(しかた)ないだろ。それに、彼女の夢を壊(こわ)したくないし」
「強がり言っちゃって。好きだったんでしょ。さっさと告白すればよかったのよ」
「いいんだよ。――今頃は、空の上か…。もう俺には何もできないんだな」
「もう、あんたなんか、さっさと振られちゃえばよかったのよ。彼女、友達の一人としか思ってなかったんだから」
「分かってるよ、そんなこと。でもな…。何かなぁ――」
「まったく意気地(いくじ)がないんだから。そんなんだからね……。もう、いいわ」
「何だよ。何怒ってんだ? お前には関係ないだろ」
「別に怒ってなんか。もう、彼女のことなんか忘れてさ、次の恋人でも探したら? 案外(あんがい)、すぐ近くにいるかもしれないじゃない。あんたのこと、思ってる人が…」
<つぶやき>好きなのに好きと言えない。そんな思いをしている人は、沢山(たくさん)いるのかも…。
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「割り切れない女」

2013-02-18 19:05:43 | ブログ短編
 会社の仲間との飲み会。これは職場の人間関係を良くするのには必要なことよ。それに、私の得意技(とくいわざ)を見せることができるし。私、こう見えて暗算(あんざん)が得意なんです。会計の時、一人分の飲み代をパッとはじき出してしまうの。みんなから凄(すご)いねって、よく言われます。
 今日も飲み会で楽しく過ごしていると、私の携帯の着メロが鳴り出した。あーぁ、また彼からだ。今度は何よ。私は席を外して電話に出た。彼は甘えるような声で、
「なあ、今から行ってもいいか? 会いたいよ~ぉ」
 何言ってるのよ。私はダメって言ってやった。彼がこういうしゃべり方をするときは、何かお願いがあるときだけなんだから。私は、すでに彼の行動は見切(みき)っていた。
「いいじゃないかぁ。俺のこと、嫌いになったのか? 俺は、お前のことこんなに――」
 もう、うざい。私は、どうして恋愛に関して割り切れないんだろう。こんなヤツ、早いとこ切り捨てて、もっと良い男と――。
「遅くなってもいいから。俺、表(おもて)で待ってるから。なあ、いいだろう? 頼むよ、なっ」
 もう、何なのよ。私はこういう時、どうしたらいいか迷ってしまう。彼はそれを見透(みす)かしたように、「じゃあ、今から行くから。愛してるよ~っ!」
 彼は、私の返事も聞かずに電話を切った。あーっ、もう。こうなったら、今日こそあいつと別れてやる。絶対、絶対、絶対…。私は席に戻って、ビールをグッと飲み干(ほ)した。
<つぶやき>こういう人って、得(え)てしてズルズルといっちゃうんですよね。切っちゃえ!
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