みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「うちのトド」

2012-12-31 19:26:06 | ブログ短編
 我が家にはトドがいる。それは、休日になると出現し、いつも喧嘩(けんか)の元(もと)になっていた。
「ねえ、たまには手伝ってよ」私はトドに向かってお願いする。すると、
「休みの時ぐらいいいだろ。のんびりさせてくれよ」トドは私の方を見ようともしない。
 私だって働いてるのよ。掃除洗濯は休みの日にしっかりやっておかないと、家の中が大変なことになるじゃない。私はぶつぶつと、トドに聞こえるように呟(つぶや)いた。
 トドは完全無視で、テレビに夢中になっている。私はため息をつく。せめて、どっかへ出かけるとかしてくれないかな。そうすれば、少しは家事もはかどるはずよ。新婚の頃は、あんなにマメだったのに。きっと、私が甘やかしたからいけないのね。
 トドはテレビに飽(あ)きたのか、起き上がってウロウロしはじめた。出かけるのかと思いきや、台所でゴソゴソと。今度は何よ。私はしばらく観察を続ける。トドは何かを探しているようだ。冷蔵庫を開けたり、閉めたり。最後には私に向かって、
「なあ、昨夜(ゆうべ)のプリンどうした? お前、食べただろ」
 何言ってるの。あれは、私の分でしょ。私は、喉元(のどもと)まで出かかったのをグッとこらえた。
「買ってきてくれないかな。コンビニに行けばあるだろ」
 ふざけんじゃねえ。自分で行きなさいよ。私は、飼育員(しいくいん)じゃないんだから。
<つぶやき>トドでもやる時はやるんだと、やる気を見せないと餌の質が落ちちゃうから。
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「主婦道」

2012-12-29 18:41:28 | ブログ短編
 娘は実家へ帰るなり母親に愚痴(ぐち)をこぼした。
「もう、あんな人だとは思わなかったわ。ねえ、聞いてよお母さん」
 母親は、娘にそっとお茶を出して、黙(だま)って娘の話に耳を傾けた。
「あたしの言うことなんか全然聞いてくれないし。何度注意しても、服は脱ぎっぱなしで、家事の手伝いなんか少しもしてくれないの。結婚前は、ほんとマメな人だったのに――」
 母親は娘の愚痴が一通り終わると口を開いた。「それで、あなたはどうしたいの?」
「離婚よ、離婚。あたし、あの人とはもうやっていけない」
 母親は少しも驚かず、静かな口調で言った。「そう。そうしたければすればいいじゃない。でも、あなたもまだまだね。歳を重(かさ)ねると、そんな些細(ささい)なことどうでもよくなるものよ」
「お母さんは、そうかもしれないけど。あたしは、イヤなの」
「夫を自分の思い通りにさせようなんて思っても、無駄なことよ。しょせんは別の人間なんだから。それより、上手(うま)く付き合っていくコツをつかまなきゃ」
 娘は口をへの字に曲げて、「じゃあ、どうすればいいの? 教えてよ」
「そんなこと自分で考えなさい。お母さんから言えることは…。そうね、男は些細なことでも誉(ほ)めてあげると喜ぶものよ。あなたも、そんな仏頂面(ぶっちょうづら)してないで、いつも笑っていなさい。笑う門(かど)には福(ふく)が来るんだから」
<つぶやき>母親は主婦の先輩でもあるんです。何か学べることがあるかもしれませんね。
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「待ち合わせ」

2012-12-26 19:22:45 | ブログ短編
 駅前の広場。ここは恋人たちの待ち合わせの場所になっている。今日もまた、多くの恋人たちが夜の街に消えていった。でも、一人だけぽつんと立っている男性。どうやら、彼女がまだ来ていないようだ。
 彼は、もう一時間も待っていた。でも、彼はイライラするでもなく、彼女に電話をすることもしなかった。彼の顔は穏(おだ)やかで、時に笑みを浮かべることもあった。どうやら、何か考えごとでもしているのか、一人でいることを楽しんでいるように見えた。
 そこへ彼女がやって来た。彼女は、彼を見つけると駆(か)け寄って来て、息をはずませながら言った。「ごめんなさい。なかなか仕事が終わらなくて」
 彼は別に怒るでもなく、「いいよ。全然、大丈夫。じゃあ、帰ろうか」
「えっ?」彼女が驚くのは当然だ。彼女は、「これから食事に行くんじゃないの?」
「でも、もう君とフルコースを食べ終わっているし。家まで送って行くよ」
「私、いま来たところよ。お腹(なか)ペコペコなんですけど」
「そうか。君って食欲旺盛(しょくよくおうせい)なんだね。じゃあ、軽くラーメンとか、どう?」
「何でそうなるのよ。私が遅れたらか、そんな意地悪(いじわる)言うの?」
「そんなことないよ。君とのデートを想像してたら、それでお腹いっぱいになっちゃって」
<つぶやき>妄想だけで満足。お金がかからなくていいんですけど、彼女のことも考えて。
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「昨日の好き」

2012-12-24 18:42:11 | ブログ短編
「もしもよ。もしも過去へ戻れたらいいと思わない?」
 恵麻(えま)はメガネを掛け直しながら言った。彼女は妙な発想をすることがある。訊かれた良太(りょうた)は、ちょっとばかり返答(へんとう)に躊躇(ちゅうちょ)した。
「だから、あたし考えたの。もしも、ものすごい速さで地球の自転と反対方向へ回ったら、過去へ戻れるんじゃないかって。だって、日付変更線を逆に通るのよ。そう思わない?」
「あの、ちょっとそれは違うんじゃないかな」
「どうして。良太は過去へ戻りたくないの? あたしは、もう一度やり直したい」
「そんなこと言われても…。あの、でもね。ほら、宇宙ステーションは一日に何回も地球を回ってるじゃない。でも、時間は地上と変わらないよね」
「それは、宇宙にいるからでしょ。もういいわ。良太は、あたしのこと嫌いになったのね」
「だから、そういうことじゃなくて。僕はただ、ちょっと距離をおいて」
「だったら、こうしましょ。あたしたちが初めて会った場所へ戻るの。そしたら――」
「もういい加減にしてくれよ。そんなことしても」
「やってみなきゃ分からないわ。ねえ、一緒に行ってくれるよね。あたしたちやり直すの」
「いや。僕は行かないよ。僕たち、前へ進まなきゃ。過去に囚(とら)われてたら何もできない」
「過去があるから今があるのよ。昨日だって、あたしのこと好きだって言ったじゃない」
<つぶやき>心変わりはいつ起こるか分からない。彼の心をしっかりつかんでおきましょ。
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「初デート」

2012-12-22 18:51:13 | ブログ短編
 おじいちゃんは、孫娘(まごむすめ)を連れて散歩を楽しんでいた。少し離れた前方には、まだ学生なのだろう恋人らしき男女が歩いている。おじいちゃんはその二人を見て言った。
「あのガキ、なにもたもたしとるんじゃ。すっと手ぐらいにぎらんか」
 前にいる男の子は、女の子の手を取ろうと、何度も手を出したり引っ込めたりしていた。
「わしの若い頃は、有無(うむ)も言わさず抱きついたもんじゃ。全(まった)く、度胸(どきょう)のない」
「おじいちゃん。今は、昔と違うのよ。そんなことしたら、そく振られちゃうんだから」
 男の子は、覚悟(かくご)を決めたのか大きく息をして、手をすっとのばす。だが、そのとき風が吹いてきて、女の子は乱れた髪に手をやった。目標(もくひょう)を失った男の子の手は空(くう)をつかんだ。
「なにやっとるんじゃ。よし、こうなったらわしが手本(てほん)を見せてやろう」
 孫娘はおじいちゃんの腕をつかんで、
「やめてよ。何するの? 邪魔(じゃま)したらダメよ」
「今時の男は軟弱(なんじゃく)すぎていかん。だから女の尻(しり)に敷(し)かれるんじゃ」
 孫娘はクスッと笑い、「そうね。おじいちゃんも、おばあちゃんには頭あがらないもんね」
「なに言っとる。わしは、婆さんの顔をたてとるだけじゃ。それより、お前はどうなんだ。この間連れて来た、何とかっていう、へらへらしとる奴(やつ)」
「そんな言い方しないで。彼、とってもいい人よ。私の言うこと何でもきいてくれるし」
<つぶやき>男は優しいだけではダメ。ぐいっと引っ張っていくたくましさも必要かもね。
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