みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「もうひとつの世界6」

2012-11-28 19:21:47 | ブログ短編
 やっと落ち着いた典子(のりこ)は、この世界のことを動物たちから聞かされた。今、この世界を支配しているのはモドキと呼ばれる連中で、彼らは地面の下からやって来ていた。そして、地上にいるものをさらって行くという。まさに、典子もさらわれるところだったのだ。
 今まで典子と同じ人間が大勢連れて行かれ、誰一人戻って来ることはなかった。ただ一人を除いて。その一人というのが、動物たちがヒロシと呼ぶ人物だった。
 ヒロシは町外れの研究所にいたようだ。典子は、そんな研究所があるなんて全く知らなかった。彼女は動物たちに訊(き)いてみた。
「そのヒロシという人は、まだそこにいるの?」
「ああ、そこで眠っているよ。――俺たちのところへ戻って来たときには瀕死(ひんし)の状態で、もうどうすることもできなかった。ヒロシは最後に言ったんだ。ゲートを捜せと」
「ゲート? それは、何なの?」
 動物たちは鳴き声を上げた。小さな犬は、典子の手に前足を置くと、
「別の世界とつながる入口さ。あんたは、その別の世界から来たんじゃないのか?」
「うん、たぶん。ねえ、そのゲートが見つかれば、私は自分の世界へ戻れるのかな?」
「やっぱりそうか――」犬はひと声吠(ほ)えると、「反撃(はんげき)のときが来た!」と叫んだ。
<つぶやき>これからどうなるのか? ヒロシという人物がカギをにぎっているのかも。
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「もうひとつの世界5」

2012-11-26 19:01:52 | ブログ短編
 動物たちは鼻をヒクヒクさせて、典子(のりこ)の臭(にお)いを嗅(か)いでいた。もう逃げ道はなかった。彼女は震える声で、「何なの…。私を食べたって美味(おい)しくないわよ」
 動物たちの間をかき分けるように一匹の小さな犬が典子の前に進み出ると、にっこりと微笑んだ。犬が笑うなんて信じられないことだが、彼女にはそう見えたのだ。小さな犬は頭をかしげると、口を開いた。「間に合ってよかったよ」
 犬がしゃべった! それが合図のように、回りの動物たちも良かった良かったと連呼(れんこ)する。典子は、何が何だか分からなくなった。犬は前足で地面をかきながら言った。
「あいつらには近づかない方がいい。とっても危険なんだ」
「危険って…。あなたたちの方が…、よっぽど」
「俺たちは何もしないよ。あんたを助けたかっただけだ」
「何言ってるの。あの人は、私を元の世界へ戻すために…」
「あいつらは、あんたの仲間じゃないよ。臭いがまるっきり違うんだ」
 周(まわ)りの動物たちも口々に、<いやな臭いだ。吐き気がするよ。鼻が曲がりそうだ>
 典子は悲しくなってきた。涙が頬(ほお)をつたう。犬は慰(なぐさ)めるように彼女の頬をなめて、
「心配ないよ。俺たちが守ってやるから。あんたはヒロシと同じ臭いだ。俺たちの味方」
 典子は、暑苦しいくらい側に寄ってくる動物たちを押しやりながら、
「分かったから、こないで。向こうへ行ってよ。もう、なめないで…」
<つぶやき>望みを絶たれて落ちこむ典子です。でも、哀しんでいても仕方ありません。
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「もうひとつの世界4」

2012-11-24 19:07:37 | ブログ短編
「僕は、あなたを連れ戻しに来たんです。すぐに会えてよかった」
 典子(のりこ)の家で傷の手当てを受けながら男は言った。彼女は嬉しくて涙が出そうになるのをグッとこらえて、微笑んだ。これでやっと家族に会うことが出来る。彼にも…。
「本当に帰れるんですか? 私、帰れるんですね」
 疑(うたが)っているわけではないのだか、彼女はまだ信じられないのだ。男は肯(うなず)いて、
「もちろんです。さあ、行きましょう。もう、あまり時間がないんです」
「はい。でも、少し待って下さい。荷物をまとめて…」
「そんな時間はありません。急がないとあいつらに――」男は突然口をつぐんだ。そして、何かを誤魔化(ごまか)すように彼女の手を取り、「さあ、行きましょう」
 二人は家を出ると、外に停めておいた車へ向かった。そして、乗り込もうとしたその時、どこからともなく叫び声がして、目の前に大きな黒いものが飛び出してきた。毛むくじゃらのその生き物は男に襲いかかり、男は数メートル跳(は)ね飛ばされた。典子は足がすくんで声も出ない。その生き物は彼女を見ると、のそのそと近づいて来た。典子は後退(あとずさ)る。その時、車のエンジン音が聞こえた。一瞬の間もなく、男は猛スピードで車を発車させた。
 いつの間にか動物たちに取り囲まれて、典子はその場にしゃがみ込むしかなかった。
<つぶやき>典子はどうなるのか。男は助けに来てくれるのでしょうか。彼女の運命は?
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「もうひとつの世界3」

2012-11-21 19:07:44 | ブログ短編
 犬や猫は、たまに見かけることはあった。でも、この辺りにクマのような大型の野生動物がいるなんて、驚きだった。どこからやって来たのだろう。
 典子(のりこ)は、襲われないために守りを固める必要に迫(せま)られた。女一人の力でやれることは知れているが、それでも頑張って家や畑の周りに柵(さく)をめぐらした。簡単に壊されてしまうかもしれないが、それでも気休めぐらいにはなるだろう。
 彼女の苦労とは裏腹(うらはら)に、あれ以来、生き物の気配はなくなってしまった。どこか別の場所に移動したのか、それとも近くにひそんでいるのか。気を緩(ゆる)めることはできない。
 典子は食料を調達するために町へ出かけた。その途中に、あの坂道がある。彼女は右カーブの手前で自転車を止めた。ここから全てが始まったのだ。今まで、通るたびに元の世界へ戻れるのではないかと、はかない期待を持っていた。だが、それがかなうことはなかった。今日もきっと…。彼女はため息をついて、自転車をこぎ出した。
 カーブに入ったとき、彼女は目を疑った。ガードレールにぶつかるようにして車が止まっていたのだ。彼女は急いで駆け寄り中を見た。人だ。男性がハンドルに頭をつけて、動く様子はなかった。典子はそっとドアを開けて、男の身体を揺すってみた。身体は温かいので死んではいないようだ。彼女は、何だかほっとした。この人から、何かが分かるかもしれない。もしかしたら、元の世界に戻れるかも…。彼女は男に声をかけ続けた。
<つぶやき>希望の光が見えてきたのかも。この男はどこから来て、何者なのでしょう。
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「もうひとつの世界2」

2012-11-19 19:11:23 | ブログ短編
 あれから三カ月が過ぎようとしていた。家族の行方も分からず、典子(のりこ)は寂しさに耐えながら暮らしていた。町のあちこちへ行ってみたが、人の姿を見つけることはできなかった。
 電気や水道も使えない不便な生活。それにもやっと慣(な)れてきた。日の出とともに起き、暗くなれば眠りにつく。水は川から汲(く)んでくる。生活排水が出ないせいか、すごく澄んだきれいな水になっている。食べ物は、スーパーからもらってくる。お肉や魚、野菜なんかはダメでも、缶詰とか乾物、お菓子は食べ放題だ。彼女一人なので、しばらくは大丈夫だろう。でも、健康のためにと、野菜を育てることにした。近くの畑を借りて野菜の種を蒔(ま)いた。園芸初心者の彼女だが、そこは本屋で手引き書を手に入れた。道具はホームセンターへ行けばなんでも置いてある。
 生きていくメドもつき、これからのことを考える余裕もできた。事件が起きたのは、そんな時だ。夜中に、家の周りで何かが動き回る気配を感じた。ガタガタと物音がしたのだ。
 典子は眠れないまま朝を迎えた。恐る恐る外へ出ると、家の周りにはこれといって異常はなかった。だが、畑へ行ってみて彼女は驚いた。収穫間近の野菜が荒らされ、無残な状態になっていたのだ。彼女は駆け寄り調べてみたが、食べられそうな野菜はほとんど残っていなかった。ふと周りを見ると、人の手ほどの足跡がいくつも残されていた。
<つぶやき>あなたはこんな状況でも、生きていられますか? 生きる自信はありますか?
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