みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「保険の人」

2011-12-30 19:14:17 | ブログ短編
 私は父と二人暮らし。母はずいぶん前に亡くなっている。だからってこともないけど、結婚したいって気にはならなかった。そんな私も、年頃を過ぎてやっと結婚を決めた。
 これを機(き)に、私は父を旅行に誘った。父への感謝も込めて、二人で楽しい思い出を作ろうと思ったの。でも、父にはちょっと変な癖があって、何にでも保険をかけたがるんだ。
 父はすぐに旅行の準備をはじめた。旅先の地図とコンパス。寝袋に大量の非常食、それに薬の数々。私は唖然とした。一泊二日の温泉旅行なのに、何でこんなに…。父は、旅先は何が起こるかわからんって言って。私は即座に却下したけど。旅館に着いてからも大変だった。旅の雰囲気を味わうどころじゃないわ。やっと落ち着けたのは食事のとき。
 父はビールを飲みながら、ぽつりと言った。「本当に、あの男でいいのか?」
 父は結婚について反対はしなかったので、まさか今になってそんなこと言うなんて。
「ちゃんと、保険はかけてあるんだろうな?」
「保険って…」私はそっちの話なのって思って、「まだ、そんなのいいわよ」
「よくない。ちゃんと彼の代わりを用意しておかないと。もし、あの男とダメになっても、キープの男がいれば安心じゃないか」
「そんなのいないわよ。お父さんだって、お母さんのことずっと好きだったんでしょ」
「ああ、ずっと好きだったぞ。でも、お母さんは保険の方だったんだがな」
<つぶやき>娘として、こんな父親どうなんでしょ。でも、きっと良い父親だったのかな。
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「自己中娘」

2011-12-27 19:12:57 | ブログ短編
 私にはちょっと変わった友だちがいる。まわりを意識しすぎるというか、一緒にいるととっても疲れてしまうの。この間も、待ち合わせのオープンカフェで…。
「ねえ、さっきからあの人、あたしをずっと見てるわ」
 私がそっちを見ようとすると、彼女はそれを止めて、
「見ちゃダメよ。こっちが気にしてるって分かったら大変よ」
「でも、それって気のせいよ。きっと…」
「彼だけじゃないわ。ほら、あの人も、こっちの人も、外を歩いてる人だって、みんなあたしのことジロジロ見つめて。美しすぎるって、ほんと罪よね」
 確かに、彼女は私よりは奇麗よ。それは認めるわ。でも、世の中の男が全てあなたを見てるわけじゃないわ。私はあきれてしまって、紅茶をひとくち口にする。そして、彼女に目を戻すと…。彼女はしきりに手を振っていた。
「なにしてるの?」私は当然の反応として彼女に訊いた。
「おかしいわ。だって、あの人、私のこと見ようともしないの」
 彼女の目線の先には若い男性。見ないのは当然よ。だって、本を読んでるんだから。
「あの人、どうかしてるわ。ねえ、ちょっと行ってきて。さり気なく、あたしの方を振り向かせるの。だって、本なんかより、あたしの方がずっと見る価値があるでしょ」
<つぶやき>こんな困った子いるんでしょうか。でも、自分を美しく見せるのは大切です。
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「妻の手料理」

2011-12-24 19:13:00 | ブログ短編
「どう? 美味しくない」
 妻のこの一言で、私は身震いした。この言葉の裏には、間違いなく〈美味しいでしょ。美味しいって言って。美味しいはずよ〉という、彼女の願望というか、熱望が込められている。
 妻は創作料理とか言って、たまにとんでもない料理を作ることがある。それが、ほとんどの確率で口に出来るものではないのだ。でも、彼女の方は味が分からないのか、美味しいものと思い込んでいるから始末が悪い。もしここで、私が不味(まず)いと言ったら最後、妻は三日は立ち直れなくなってしまう。その落ち込みようといったら、半端なものではないのだ。それに、ここであいまいな返事をしてしまうと、次の日も、また次の日も、私が美味しいと言わない限り、同じ料理がアレンジを加えられて出てくるのだ。
 妻は私が料理にどんな評価を下すのか、満面の笑顔で待っている。私は、これでも男だ。ここでビシッと言わないと。そうは思うのだが、その後のことを考えてしまうと…。
「この食材の組み合わせは、他の人には絶対に思いつかないと思うの。それに、味付けも斬新でしょ。きっと、あなたも気に入ってくれると思うわ」
「ああ…、そうだね。とっても美味しいよ。でもね…」
「そうでしょ! そうだと思った。まだ、たくさんあるからね」
<つぶやき>これは難しい問題なのかもしれません。でも、正直に答えてあげた方が…。
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「変わりたい」

2011-12-21 19:30:46 | ブログ短編
「もう、つまんない」これがあたしの口癖になっていた。
 彼と暮らし始めた頃、毎日が楽しくて、こんな日がずーっと続くと思ってた。
「洗濯物、たたんどいたよ」彼はいつものようにあたしに微笑みかける。
 あたしは膨(ふく)れっ面(つら)をして、「やろうと思ってたのに、何で先にやっちゃうのよ」
「ごめん。でも、ほら、君は忙しそうだから…」
「忙しくたって、それくらいやれるわよ。もう、勝手なことしないで」
「だから、謝ってるじゃないか」彼は困った顔をしてあたしを見つめる。
 これは、いつものちょとした喧嘩。すぐに仲直りして、また元通りになるって…。でも、そう思っていたのは、あたしだけだったのかもしれない。彼がどんな気持ちでいるのかなんて、全然考えていなかった。彼から突然別れようって言われたとき、あたしは彼のこと責めたわ。彼のことがどうしても許せなかった。
 彼と別れて、初めて気づいたの。彼はあたしのこと、ちゃんと考えてくれていた。でもあたしは、ずっと彼に甘えてばかり…。彼は出て行くとき、心配そうな顔をしてあたしを気づかっていた。なのにあたしは、声をかけるどころか顔を見ようともしなかった。
 今でも、彼のことは好きよ。――あたし、変わりたい。もっといい女になって、彼に会いに行くの。またふられてもいい、嫌われてもいい。もう一度、告白するんだ。
<つぶやき>不変の愛はないのかも。あっちこっちぶつかりながら、育てていくものです。
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「隠しごと」

2011-12-18 19:23:29 | ブログ短編
 最近、彼の様子がおかしい、と言うかめっちゃくちゃあやしい。明らかに、私のことさけてるし、彼の部屋に行っても中に入れてくれないの。私、彼のこと、誠実で嘘なんかつかない人だと思ってたのに。こうなったら、浮気してるとこを突き止めてやるわ。
 私は探偵のように彼の会社の前に張り付いた。彼は、私とデートしない時は真っすぐにアパートに帰るはずよ。――思った通り、彼は自分のアパートの方へ歩いて行った。
 私はちょっとホッとした。浮気じゃないかも…。でも次の瞬間、彼は脇道へそれて行く。えっ…? どこへ行くのよ。私は、胸がドキドキしてきた。
 彼は、とあるお店に入った。私は店内を覗こうとして、思わずくしゃみが飛び出した。何だか、鼻がむずむずして。ダメだ、ここってペットショップじゃない。私、猫アレルギーなの。しばらくして、彼は紙袋を手に出てきた。何を買ったのよ? きっと、浮気相手は動物好きなんだわ。彼、猫好きだったし…。彼は、そのまま自分のアパートへ向かった。
 もう、こうなったら現場を押さえるしかないわ。ドアをノックして…。彼は、私の顔を見て驚いた様子。すかさず私は、彼を押しのけて部屋へ突入! だが、そこには女の影もなく、私はくしゃみが止まらなくなった。彼は、そんな私を部屋の外へ連れ出して言った。
「ごめん。友だちが旅行するからって、猫を預かってて。それで…」
<つぶやき>隠しごとはしないようにしましょ。そうしないと、誤解の連鎖が始まります。
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