みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「二人で一人」

2011-10-28 19:19:31 | ブログ短編
 とある会社の面接会場。就職氷河期と言われる昨今(さつこん)、大勢の若者であふれていた。一人ずつ名前を呼ばれて部屋へ入って行くのだが…。
「あの、立花薫(たちばなかおる)さんは?」
 面接官は二人で入って来た若い男女に訊いた。
「はい、私です」二人同時に答える。
「いや、あの…」面接官は履歴書を見て、「えっと、男性の方(かた)…」
「あの」女は微笑みながら優しそうな声で言った。「私たち、二人で一人なんです」
「はい? それはどういう…」
「ですから、私たち、お互いに欠点を補いながら暮らしているんです」
「それは、ご夫婦という…」
「夫婦じゃありません。ご説明しますと、私はおもにコミュニケーション担当で、この人は事務全般と理数系が得意なんです。それに、力仕事も担当しています」
 面接官はあきれ顔で言った。「あの、うちではそういう採用はしてませんので…」
「でも、御社の募集要項にある資格も、すべて取得していますし…」
「でしたら、お一人ずつ面接を受けていただけませんか。そうでないと…」
「でも、二人でないと困るんです。あの、お給料の方は、一人分でかまいません。私たち、二人で一人なんですから」
 女は得意の笑顔を面接官にふりまいた。
<つぶやき>欠点を補い合うのはいいことです。でも、欠点も個性なんじゃないのかな。
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「妻の独立宣言」

2011-10-25 19:31:39 | ブログ短編
 結婚して一ヵ月。新婚の甘い生活を夢見ていた私は、夫のわがまま放題にぶち切れてしまいました。結婚前にそういう人だと分かってたら、結婚なんて…。
 まず驚いたのが、朝は俺より先に起きるなってこと。朝は私の寝顔を見ていたいからって、なに甘いこと言ってるのよ。じゃあ、朝食は誰が作るのよって話よね。それによ、朝食はしっかり食べたいから、三品以上おかずを作ってくれって。そんなの無理でしょ。そこまで私に要求するなら、もっと朝早く起きればいいじゃない。私はあなたが起きるのを、寝たふりをしてずっと待ってるのよ。
 まだあるわ。食べるの遅すぎ。よく噛んで食べなきゃいけないのは分かるわよ。でも、朝は忙しいんだから。今まで会社に遅刻したことないのかなぁ。それに、私が先に食べ終わると怒るんだから。私だって、仕事があるんだから付き合ってられないわよ。
 私は夫が望む良き妻になることをやめました。対等な立場で、共に生きることを望みます。私は、夫にそう宣言しました。夫は私の言うことを黙って聞いていました。私は、張り詰めていたものがスッと取れて、何だか晴れやかな気分になっちゃった。
 その日から、二人の関係も変わった気がします。私が口うるさくなっただけかもしれませんが。夫婦なんて、思ってることは何でも言わないと、いけないのかもしれません。
<つぶやき>良き夫、良き妻になる。簡単なことじゃないですよね。思いやりを忘れずに。
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「始まりは突然に」

2011-10-22 12:20:07 | ブログ短編
 男は、繁華街で女の子を拾った。どこか寂しげな彼女の顔が、目にとまったのだ。何かに導(みちび)かれるように、男は彼女に声をかけていた。
「ほんとに泊めてくれるの?」彼女は半信半疑で男に訊いた。
「ああ、あんまりきれいな部屋じゃないけどな」
 男はぎこちなく微笑んだ。
「ありがとう」彼女は部屋に入ると、ホッとした顔になり言った。「でも、タダで泊めてもらうわけにはいかないわ。お礼に、あたしのこと、抱いてもいいよ」
「ふん。俺は、好きでもない女は抱かないんだ」
「別にいいのよ。あたし始めてじゃないし。あなたもそのつもりで…」
「俺さ、妹がいたんだ」男はぽつりと言った。「生きてたら、君と同じぐらいの年頃かな。君の顔見てたら、妹のこと思い出してさ。もし、生きてたら…」
「やめてよ、そんな話するの。あたし聞きたくないわ」
「そうか…。そうだよな。忘れてくれ」男は口をつぐんだ。
 翌朝。彼女が目を覚ますと、そこに男の姿はなかった。枕元に小さなメモが置かれていた。〈もし泊まるところがなかったら、また来てもいいぞ〉
「何よ、もう」彼女は思わず目を赤くして、「あたし、あなたの名前も知らないのよ」
<つぶやき>いろんな人生を背負った人たち。ふとしたことで出会い、人生を共有する。
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