みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「現場検証」

2011-08-29 20:13:36 | ブログ短編
「しかし、奇麗な顔してますよね。まるで、モデルのような…」
「オイ、惚(ほ)れるなよ」
「惚れるわけないじゃないですか。死体ですよ。そんな…」
 二人の刑事は、ソファーの上に横たわっている女性に手を合わせた。現場には侵入した跡も、あらそったような形跡もなかった。
「自殺ですかね」若い刑事が言った。「美人なのになぁ」
「何で自殺したんだよ。外傷もないし、毒を飲んだら何か残ってるはずだろ」
 先輩の刑事は、部屋の中を見渡した。鑑識が部屋の隅々まで調べている。だが、これといって死亡につながる手掛かりはなさそうだ。
「あの、先輩…」若い刑事が震える声で叫んだ。
「どうした? 何か見つけたのか」
「いえ、あの…。これ、さっきと変わってませんか?」若い刑事は死体を指さした。
「なに言ってるんだ?」
「だから、彼女、さっきと違うんです。この、手の位置が、こう…」
「あのな」先輩はあきれた顔で、「死体が動いたなんて、聞いたことないぞ」
「そ、そうですよね」
 若い刑事は、もう一度彼女を見た。その顔は、かすかに微笑んでいるように見えた。
<つぶやき>死んでからも、奇麗とか美人とか言われると嬉しくなるかも。女心なんです。
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「何に見える?」

2011-08-26 20:09:45 | ブログ短編
「ねえ、あそこにシロがいるよ」小さな女の子は、空を見上げて言った。
「シロって?」パパはしゃがみ込んで娘に訊いた。
「お花屋さんの、太っちょのシロだよ」女の子は雲を指さして、
「あれ、変わっちゃった」
「あっ、ほら。あそこにクマがいるよ」パパが別の方向を指さした。
 女の子は少し考えて、「ちがうよ。あれは、パンダさんだよ」
 夏の昼下がり。おつかいの帰り道、二人だけのデートのひととき。パパにしてみれば、娘とこんな時間を過ごすのは久しぶりかもしれない。すーっと涼しい風が吹いてくる。後ろを振り返ると、いつの間にか黒い雲が追いかけて来ていた。
「あれ、ママじゃない」女の子は黒い雲を指さして言った。
「ほんとだ」パパは娘の顔を見てにっこり笑い、「早く帰ろうか。ママ、おいて来ちゃったから、きっと怒ってるかもな」
「そうだね。ママ、怒りんぼさんだから。困るよね」
 その時、遠くから雷の音がゴロゴロ鳴った。二人はおかしくなってクスクス笑った。入道雲は、もくもくとその形を変えていく。
「ねえ、パパ。今度は、ママも一緒ね」女の子はそう言うと、パパの手を取った。
<つぶやき>ママだって、家族のためにがんばってるんです。優しくしてあげて下さい。
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「メロンパン」

2011-08-23 12:45:46 | ブログ短編
「これ、おみやげね」亜矢(あや)は紙袋を差し出した。
 見覚えのあるその袋。早苗(さなえ)はにっこり笑って、「アンジェだぁ。まだ、やってるのね」
 それは、高校の帰り道、いつも寄り道していたパン屋の袋。中を見てみると、数種類のパンが入っていた。二人はそれぞれ好きなパンを取ってほおばった。
 早苗は、亜矢がメロンパンを美味しそうに食べるのを見て、くすりと笑った。
「なに? どうしたのよ」亜矢は気になって訊いてみた。
「いえ、ちょっとね。昔の彼のことを思い出しただけなの。その人ね、メロンパンが大好きで、ほんとに美味しそうに食べるのよ」
「ええ? それって、あたしの知ってる人」
「さあ…、どうだったかなぁ」早苗は懐かしそうに、またくすりと笑った。
「何よ。昔のことなんだから、教えてくれたっていいじゃない」亜矢は疑いの目で、「ほんとに付き合ってたの? 高校の頃、男のウワサなんかなかったじゃない」
「それは亜矢が知らないだけで…。でも、何で別れたのかな。とっても良い人だったのよ」
「はいはい。もういいわよ。どうせ、あたしは未(いま)だにシングルですよ」
「もうっ。ねえ、これも食べていいわよ」早苗はパンの袋を亜矢の鼻先へ持っていった。
<つぶやき>ふとしたことで昔の記憶がよみがえる。懐かしくもあり、恥ずかしくもある。
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「三日月少女隊」

2011-08-20 10:58:29 | ブログ短編
 月の王宮。帝を前に、月の将来を決める御前会議が開かれていた。あの、かぐや姫もそこにいた。まず、議長が口火を切って、「今や、月を見上げる子供たちが激減している。何とかせねば、我々の存在も危うくなる。子供の関心を月に向けさせる手立てを考えていただきたい」
「それなら」ひとりの大臣が口を開いた。「新しいかぐや姫を送り込めばいい」
「それはどうでしょう」別の大臣が異論を唱えた。「今の日本に、かぐや姫を宿すことのできる太い竹がどれだけあるか。それに、人間に見つけてもらわなければ何にもならない」
 議長はかぐや姫に意見を求めた。かぐや姫は哀しげな顔で、「残念ながら、かぐや姫を大切に育てることのできる人間はいないでしょう。人間の心は欲望に満ちています」
「ならば、我々もそれに従おう」急進的な議員が発言した。「子供たちに欲望を植え付けてやるのです。夢よりも欲望の力のほうが、エネルギー量は桁違いに大きくなる」
「でも、どうやって」議長は先を促した。
「簡単なことです。人間の可愛い娘たちを集めて、アイドルグループを作るのです。そうすれば、人間たちは群がってくる。我々は労せずして、欲望を手にすることが可能です」
「私は反対です」かぐや姫が言った。「そんなことをしたら、人間は滅んでしまう」
 議員はさらにつけ加えた。「この役目は、かぐや姫にお願いしたい」
「私が?」かぐや姫は一瞬考え、「分かりました。でも、私は人間を信じたいです」
<つぶやき>子供の頃の夢、いつから忘れてしまうのでしょう。いつまでも忘れないで。
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「家族会議のひとこま」

2011-08-17 10:16:38 | ブログ短編
 斉藤家の家族会議は紛糾を極めていた。それぞれの思惑が交錯し、妥協点を見出すことができなかった。ことの発端は、智宏のひと言。「家を建て替えるぞ!」
 智宏は家族に何の相談もなく、家の間取図を見せ、「どうだ。これが新しい我が家だ」
 そういう状況で家族が納得するはずもなく、まず妻が苦言を呈した。
「ねえ、どうしてキッチンの広さが変わらないのよ。これじゃ、建て替える意味ないでしょ」
 子供たちからも不満が飛び出した。「ねえ、あたし一人の部屋がいい。弟と一緒なんて」
「僕だって、お姉ちゃんと一緒じゃイヤだよ。落ち着いて勉強できないもん」
「仕方ないだろ」智宏は父親の威厳をもって言った。「土地の広さは同じなんだから」
 間取図をじっと見ていた妻が言った。「ねえ、この部屋は何よ。ずいぶん広いわね」
「ああ、これか」智宏はにっこり笑い、「俺のコレクションルームさ。これだけあれば…」
「ちょっと、待ってよ」妻はすかさず言った。「これは、ダメでしょ」
 娘も加わって、「そうよ。もう、変なものを持ち込まないで」
「これは、必要でしょう」智宏は反論した。「そのための、建て替えなんだから」
 家族は冷ややかな目線を向けた。その時、妻の父が乱入してきた。
「家を建てるんだって」父は間取図を見て、「どれが、わしの部屋なんだ?」
「お父さん!」妻はあきれて、「いくら新しいものが好きだからって、自分の家があるでしょ」
<つぶやき>家を建てることは、一大事業なんです。家族との話し合いは大切ですよね。
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