みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「宅配の人」

2011-07-30 16:50:09 | ブログ短編
「ねえ、いつになったら私たち二人で出かけられるの?」
「もうすぐだよ。今日こそ届くと思うんだ。待ち望んでいるものが」
「あなたはいつもそう。この間だって、その前だってずっと。私は二人で出かけたいの」
「でも、二人で出かけてしまったら、誰が宅配を受け取るんだい? 誰かいなきゃ」
「ねえ、何を待っているの? 教えてよ」
 女の我慢も限界に来ていた。彼女は、ただ二人で楽しい時間を過ごしたいだけなのに。男は、彼女の気持ちも分からず、「それなんだよ。僕、何を待っているのかな? はっきり思い出せないんだ。でも、とっても大切なものだと思うんだ。きっと、僕たちにとってね」
「何よそれ。何か分からずに待っているの。ねえ、もういいじゃない。そんなのほっといて、出かけましょうよ。私、行きたいところがあるの」
 その時、玄関のチャイムが鳴った。男は、一目散に玄関へ。扉を開けると、宅配の人が立っていた。手には小さな段ボール箱。男はそれをうやうやしく受け取る。女にも変な期待がふくらみ、「ねえ、どこから来たの?」
「分からない。差出人が書いてないんだ。でも、僕らの名前は書いてあるよ」
 男は慎重にテープをはがし、箱を開ける。箱の中にはカードが一枚。
 《おめでとう。二人には、永遠の幸せが約束されました》
<つぶやき>神様からの御墨付き? でも、お互いの気持ちを尊重しないといけません。
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「親友との再会」

2011-07-24 20:11:04 | ブログ短編
「あら、小奈津じゃない。久しぶり」
 あたしはその声を聞いて身体が震えた。恐る恐る振り返ってみる。やっぱりそこにいたのは、「菜津子…。どうして、ここに?」あたしの声はうわずっていた。
 彼女と出会ったのは小学生の頃。菜津子と小奈津。名前が似ているせいで、あたしはいつも彼女の添え物になっていた。そりゃ、彼女は転校生で頭が良くて、美人で明るくて誰からも好かれて…。非の打ち所なんてみじんも無い。あたしなんか……。
 菜津子は、どういうわけかあたしを親友に選んだ。あたしは、別に嫌だって言う理由もないし、何となくそれを受け入れた。それが、転落への道だとも気付かずに。
 別に、彼女が悪いわけじゃない。彼女と付き合ってみれば分かるけど、本当に純真無垢で天使のような心を持っていた。悪いのはまわりの男子だ。あたしが彼女と仲良しだからって、彼女はどんな男が好きかとか、彼女と付き合うにはどうすればいいんだ。彼女は今朝何を食べた…。もう、いつも話題は彼女のことばかり。こんなことが、高校まで続いたの。で、あたしは決めたんだ。大学は絶対違う所へ行こうって。菜津子は東京へ行ったけど、あたしは地元の大学に入学した。あたしの大学生活は、そりゃ充実してたわ。
 それなのに、何で職場で彼女と再会。何で同じ会社。しかも、何で本社から転勤してくるのよ。絶対…、絶対にあたしの彼には紹介しないから。
<つぶやき>誰かと比べるのは止めよう。あなたはあなたなんだから。胸をはりましょう。
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「恋人売ります」

2011-07-21 20:07:38 | ブログ短編
「何だよ、こんなところに呼び出して」丸雄はカフェの席につくなり言った。
「遅かったじゃないか。何やってたんだよ」親友の拓也はむずむずしながら、「実はさ、ネットショッピングですっごいの見つけちゃって。俺、買っちゃったんだよ、恋人を」
「恋人?」丸雄は何の話をしているのか分からず、拓也の顔をまじまじと見つめた。
「それがさ、いくらだと思う? 何と、一万円プラス消費税。すっごいだろ」
「何だよそれ」丸雄はあきれて言った。「そんな、恋人が買えるわけないだろ。お前、絶対だまされてるぞ。まさか、振り込んだりしてないだろうな、金」
「振り込んだよ。決まってるじゃないか。だって、一万プラス消費税だぞ。それで、恋人ができるんだ。俺たち念願の…。考えてもみろよ、俺たち彼女いない歴、何年だ?」
「もう、付き合ってらんないよ。俺、帰るな。これから、仕事があるんだ」
「ダメだよ。お前がいないでどうするんだよ」
「俺には関係ないだろ」丸雄は席を立とうとするが、拓也は必死に引き止めて、
「来るんだよ、今からここに。その、恋人が…。それでな、お前の写真を送っといたから、お前がいないと会えないだろ。その、恋人に」
「な、なに考えてんだよ。オ、オレ、どうすればいんだ。急に、そんなこと言われても…」
<つぶやき>男はどうしてこんなに浅はかなんでしょう。でも、その恋人は来たのかな?
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「夢の絆創膏」

2011-07-18 20:17:30 | ブログ短編
 アマゾンの密林。鈴木がここに来ることになった発端は、インターネットに流れていた噂。<アマゾンの奥地には、どんな怪我でも治してしまう絆創膏がある>
 ことの真相は分からないが、もしそれが本当なら会社に大きな利益をもたらすだろう。これだけの大仕事を任せられるのは、日本のサラリーマン、鈴木良夫しかいなかった。
 彼はやっとの思いで、小さな村にたどり着いた。そこで彼が目にしたのは、誰もが絆創膏をつけていることだ。彼は村人をつかまえて話を聞こうとした。もちろん、彼は現地の言葉など分からない。身ぶり手ぶり、物真似まで使って意思疎通を図った。その甲斐あってか、村人は彼を一軒の小屋へ案内した。
 小屋の中に入って、彼は驚いた。そこにいたのは、紛れもない日本人の青年だった。
「こんなところでスーツを見られるなんて」青年はひとなつっこく笑った。
「スーツは日本のサラリーマンの正装ですから」鈴木は胸をはって言った。「ところで、どうしてあなたはこんなところにいるんですか?」
「僕ですか。僕は絆創膏を売り歩いてるんです。世界中回りましたけど、ここの人たち、僕の絆創膏を気に入っちゃって。これを貼ってると悪霊が逃げて行くんだそうです」
「それじゃ、この絆創膏は日本で手に入るんですか」
「もちろんです。あっ、じゃあ、僕の名刺を渡しときますね」
<つぶやき>日本のサラリーマンはすごいんです。どこへでも行っちゃうんですから。
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「ご先祖様」

2011-07-15 20:49:27 | ブログ短編
 それは突然のことだった。朝食の後片付けを終えて振り返ったとき、その人はそこにいたのだ。じっと芳恵を見つめて。その顔は、間違いなく不機嫌だった。
「だれ……ですか?」芳恵はやっとのことで言葉を発した。
「誰って、あんたの先祖だよ」四十がらみの、着古した和服姿の女は言った。「まったく、なってないよ、あんたの段取りの悪さは。誰に教わったんだい」
「あの…」芳恵は、もう唖然とするばかり。
「ずっと上から見てたけどさ。もう、我慢できなくて出て来ちゃったよ」
「で、出て来たって? それは、どういう…」
「いいかい。これからみっちり仕込んでやるから。しっかり覚えなよ」
「あの、でも…、あたし、これから仕事に…」
「なに言ってんだい。子育てもまともにできないで、何が仕事だ」
「でも、行かないと…」芳恵は声を震わせながら、「家のローンだってあるし…」
「旦那の稼ぎでやっていけないようじゃ、どうしようもないねぇ。わしが、主婦の神髄をたたき込んでやるか」女は芳恵の腕をつかんで、「逃げ出そうとしても、無駄だからね」
 その日から、芳恵のつらく、厳しい主婦修業が始まったのである。
<つぶやき>便利な生活に慣れてしまうと、ついつい楽をしたくなる。気をつけたいです。
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