みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0118「よろず様」

2017-12-10 18:33:37 | ブログ短編

 会議室(かいぎしつ)の隅(すみ)に置かれている古(ふる)いロッカー。何でそんなところに置かれているのか不思議(ふしぎ)なのだが、誰(だれ)もそれを移動(いどう)させようとは考えなかった。
 十数年前まで、この部屋は女子更衣室(こういしつ)として使われていた。社屋(しゃおく)の改装(かいそう)のさい、全部(ぜんぶ)のロッカーを外に運び出すことになったのだが、なぜかこのロッカーだけが重(おも)すぎてびくともしないのだ。それに、力任(ちからまか)せに動かそうとすると、全身(ぜんしん)に激痛(げきつう)が走った。それ以来(いらい)、会議室になった今も、その場所に残(のこ)されることになったのだ。
 いつからか、そのロッカーは〈よろず様〉と呼(よ)ばれるようになった。誰が言い出したのか分からないが、よろず様の前で手を合わせて願(ねが)いごとをするとかなう、という噂(うわさ)がささやかれるようになったのだ。社員(しゃいん)の誰もが信じているというわけでもないのだが、中にはこっそりと願いごとをする社員もいるようだ。
 これはあくまでも噂なのだが、社内恋愛(しゃないれんあい)が成就(じょうじゅ)したとか、社内で紛失(ふんしつ)した大事(だいじ)な書類(しょるい)が見つかったとか、ライバルを蹴落(けお)として出世(しゅっせ)したとか。いろんな噂が今でも続いている。それに、これは別のことかもしれないが、誰もいないはずなのに、白い影(かげ)を見たとか…。
 ほら、今日もまた〈よろず様〉に願いごとをする人がやって来ました。
<つぶやき>こんな都市伝説(としでんせつ)、信じますか? あなたの身近にも、あるかもしれません。
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