みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

「鉄男」

2017-08-11 19:28:11 | ブログ短編
「ねえ、鉄男(てつおとこ)って…、誰(だれ)なの?」娘は父親に訊(き)いた。
 父親は首(くび)をひねりながら、「俺(おれ)もよく分かんないけど、何でも鉄(てつ)のような頑丈(がんじょう)な男だって話しだ。そんで、ちょっと頑固(がんこ)なところがあるけど、真(ま)っ正直(しょうじき)な人間らしい」
「で、父さんとどういう関係(かんけい)なの? 何で、あたしが会わなきゃいけないのよ」
「山梨(やまなし)のおじさんの知り合いの息子(むすこ)なんだ。年回(としまわ)りもちょうどいいし。どうかなって?」
「はぁ? それって、まさか、お見合(みあ)いってこと? あたし、そんなの聞いてないよ」
「そんなこと言ったら、お前、来なかっただろ? だから内緒(ないしょ)にしてたんだ」
 二人の席(せき)に一人の男がやって来た。彼はぎこちなく頭を下げると、
「あの、始めまして。私、山下竹男(やましたたけお)と言います。今日は、わざわざありがとうございます」
 娘は彼の名を聞いて思わず言った。「えっ、鉄男(てつおとこ)じゃないの…」
 彼は恐縮(きょうしゅく)して答えた。「それは、あだ名なんです。僕は、鉄はどうも苦手(にがて)なんですが…」
 確(たし)かに彼の体格(たいかく)を見ると、鉄と言うより竹ぼうきの方がぴったりする。
 帰り道、娘は父親に呟(つぶや)いた。「あの人、あたしのタイプじゃないわ。だから、断(ことわ)って」
「そうか? 俺は、いい青年(せいねん)だと思ったんだがなぁ。気に入らないか…」
「もう、そんなに心配(しんぱい)しなくてもいいよ。相手は自分で見つけるから」
「そんなこと言って、お前、いくつになった? 今まで、一度だって――」
<つぶやき>ダメですよ。それ以上言ったら、完全(かんぜん)に地雷(じらい)を踏(ふ)むことになっちゃいます。
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ジャンル:
小説
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