2010年 フランス
原題 Les femmes du 6ème étage
1962年、パリ
証券会社を経営するジャン=ルイ・ジュベール(ファブリス・ルキーニ)は先祖伝来のアパルトマン暮らし
ごく限られた範囲内で限られた人々とだけ交際してきたジャンが、スペイン人女性マリア(ナタリア・ベルベケ)をメイドに雇ったことから、新たな世界が拓け、真の友情と愛に目覚めていく物語
メイドたちが暮らすのはアパルトマンの屋根裏
ジャンが、生まれてからずっと同じ建物で暮らしているのに、屋根裏に足を踏み入れたことが無かった、というのには驚きました
労働者たちの世界は、気取ったブルジョワ階級には全く別の世界、見る必要もない世界だったのです
スペイン国内の圧政と経済不況から逃れるため出稼ぎに来ていた彼女らの部屋は、トイレは共同、水道も暖房もない劣悪な環境ながら、仲間同士寄り添い、助け合いながら明るく暮らしていました
故郷に豪邸を建てるのが目標のコンセプシオン
共産主義者のカルメン
信心深いドロレス
フランス人との結婚を夢見るテレサ
そして、ジャンの要求通りのゆで卵を毎朝出してくれるマリア
ジャンが、個性豊かなメイドたちとの付き合いで人間らしさを取り戻していくさまが滑稽に、哀愁を漂わせながら描かれていきます
ジャンとマリアの恋は、オマケのようなものでしょう
ジャンの妻、シュザンヌ(サンドリーヌ・キベルラン)
映画冒頭では、彼女はお嬢様育ちの我儘な女性であるかのような印象を受けますが、実は彼女は田舎育ちで本物のパリジャンではないことにコンプレックスを抱いており、友人たちとの付き合いでは、慣習に戸惑いも見られます
ジャンが自由を得て人生を楽しんでいる様子を見て、自分も変わらなければいけないことに気づくのです
根はとても優しい女性で、女主人とメイドという関係でなければマリアとは本当の友人になれたかもしれません
ナタリア・ベルベケの飾りけのない美しさが印象的でした
彼女には、メイドの黒い制服よりスペインの明るい太陽が似合います
何かと余裕のない現代
日本でも昭和を懐かしむ風潮があります
貧しくも情のあったあの頃を懐かしく思い出すフランス人が多いのでしょう