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多和田葉子「雪の練習生」

2014年07月21日 | た行の作家

 

新潮文庫
2013年12月 発行
解説・佐々木敦
320頁

 

2011年 第64回 野間文芸賞受賞作品

 

サーカスの花形から作家に転身した「わたし」
娘の「トスカ」、その息子の「クヌート」へと繋がる、ホッキョクグマ三代の物語

 

不思議なお話です
ホッキョクグマが会議に出席したり、自伝小説を書いたり、旧ソ連から西ドイツへ亡命したりするのです
「わたし」は、勿論ロシア語はパーフェクト、亡命後はドイツ語も習得します

それら不思議は脇に置いておいて
実に悲しく、切なく、それでいてユーモアもあり、何より美しい物語でした

 

「わたし」は西ドイツから、さらにカナダへ移住、パートナーとの間に娘のトスカをもうけふたたび社会主義国の東ドイツに向かいます
クヌートは、ベルリン動物園で母親のトスカに育児放棄され飼育係によって育てられます
トスカの言い分では育児放棄ではなく、親はなくとも子は育つ的な感覚みたいですが、人間にはわかるはずもありませんね

 

実在したクヌートは2011年3月に死んでしまいましたが、動物園の人気者だったようです

 

東西冷戦の終結、ソヴィエト連邦の終焉、ベルリンの壁崩壊など、激動の社会変化
地球温暖化によるホッキョクグマの絶滅危惧
動物愛護
女性性の問題

 

美しく温かな物語、だけでは終わらせない、著者の問題意識も多く織り込まれた秀作だと思います

 

 


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