徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:ダン・ブラウン著、『Digital Fortress』(Transworld Publishers)

2017年01月28日 | 書評ー小説:作者ハ・マ行

『Digital Fortress(デジタル要塞)』はダン・ブラウンの初期の作品で、1998年に発表されました。

全128章プラスプロローグとエピローグ。物語の時代設定は1998-1999年になっています。特にそれが明記されているわけではありませんが、プロローグでスペインのセビリアで心臓発作を起こしてあえなく亡くなってしまう日本人エンセイ・タンカドー(いったいどんな漢字なのか想像もつきませんが)の年齢設定とバックグランドから逆算するとそういうことになります。

この初っ端に亡くなってしまうタンカドー氏は35歳くらいの天才的プログラマーで、「Fugusha kisai(不具者奇才)」との別名を持っているとか(ちょっとそんな別名つけられるかな?と疑問な表現ですが)。この人の母親は1945年に被爆地広島にボランティアで入り、自ら被爆者となってしまい、その19年後に吐血して倒れてしまいます。その時に彼女のお腹の中にいたのがエンセイ・タンカドーだったということになっています。つまり彼は1964年生まれということです。彼は曲がった指と心臓欠陥を持って生まれたため、父親には見捨てられてしまい、孤児院で育ちました。彼はあらゆる電話やメールなどの通信を盗聴し、どんな暗号でも解読してしまうNSAを目の敵にし、ついに解読不可能という変形ストリングを使った暗号を開発し、「デジタル要塞」と名付けてそれをインターネットに公開して、オークションにかけます。

NSAの司令官ストラスモーア(Strathmore)は、このデジタル要塞が一般化され、NSAが役立たずになってしまうことを恐れ、インターネットに公開されていたファイルをNSAのスーパーコンピューターTRANSLTRにダウンロードして解析を始めますが、普段一つの暗号を平均6分、最高でも3時間以内に解読する筈のマシンが15時間経っても解析結果を出せなかったため、土曜の朝、彼の部下である暗号部長スーザン・フレッチャー(Susan Fletcher)を緊急呼び出しします。一方で彼女の婚約者である若き大学教授のデーヴィッド・ベッカー(David Becker)をタンカドーの遺品引取のためにスペインへ派遣します。一般人の方が怪しまれないということで。遺品の中にデジタル要塞を解読するためのパスキーがあるかもしれないので、それを見つけて来いという依頼でした。

土曜出勤を余儀なくされたスーザンの方は、タンカドーが自分のパートナーだと明示している「North Dakota」の方に探りを入れ、パスキーのコピーを入手しようとします。

スペインではタンカドーが死ぬ直前に自分から遠ざけようとした指輪に関わった人たちが次々に殺されていき、NSAのほうではTRANSLTRの異常に気付いたシステムエンジニアやそのマシンのパフォーマンスデータを監視するアナリストなどと司令官ストラスモーアのやり取りで、どんどん緊迫感が増していきます。

スリラーとしても面白いですが、ところどころで登場するおかしな日本語も笑えます。例えば「Shichigosan(七五三)」を「Seven fortune deities(七福神)」と書いてるところとか。

この作品中では語学に堪能な大学教授のデーヴィッド・ベッカーが活躍します。このキャラはシリーズとなった象徴学者ロバート・ラングドンの前身なのかもしれませんね。ダン・ブラウン自身が英語教師だったから、彼の描くヒーローは教職にある人になってしまうのかも。

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