徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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「共謀罪」法成立を海外はどう報じたか

2017年06月17日 | 安保・憲法

6月15日、改正組織的犯罪処罰法が、参院本会議で可決、成立したことについて海外ではどう報じられたのかを知るのは興味深いことでしょう。

ダイヤモンドオンラインでは、ハフポスト日本版ニュースエディター 和田千才による記事が転載され、ガーディアンやBBC、ウォールストリートジャーナル、新華網や韓国の聯合ニュース、そしてブルームバーグの報道が紹介されています。

BBCでは「キノコ狩りも対象」であることも写真入りで言及されています。BBCの原文はこちらです。

下はBBCのニュース記事に使われた写真。写真の解説は「Mushroom picking in conservation forests is on the list of crimes in the new law(保安林におけるキノコ狩りも新法の犯罪リストに載っている)」となっています。


「イギリスのガーディアンは、「反対者が自由を抑制することになると危惧している“凶暴な”新テロ法を、日本は通過させた」との見出しで報じた。」とダイヤモンドオンライン/ハフポスト日本版では紹介されていますが、私ならガーディアンの見出しを「日本は、市民の自由を侵す恐れがあるにもかかわらず”凶暴な”反テロ法を通過させた」と、原文の言葉通りに日本語訳します。オリジナルは「Japan passes 'brutal' counter-terror law despite fears over civil liberties」です。”凶暴な”は民進党の蓮舫代表の発言からの引用です。

ガーディアンは更に国連の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ(Joseph Cannataci)の公開書簡と日本政府の回答、そしてそれに対するケナタッチ氏のコメントを掲載しています。また、共同ニュースの世論調査結果「新法に賛成39.9%、反対41.1%」を引用し、世論が割れていることに言及し、同じく共同ニュースからの引用で、増山みゆき(54)さんの「平和的なデモがテロとしてみなされて禁止になるかもしれない。私たちの表現の自由が脅かされることになる」という言葉で記事が締めくくられています。

スイスのチューリヒ新聞の記事は、Ayaka Löschkeさんという方が日本語訳してくださったので、その全訳をこちらに転載します。

「日本での抗議運動:異論の多い共謀罪法」
(Proteste in Japan: Umstrittenes Gesetz gegen Verschwörungen)

Patrick Welterによる東京からの報告(2017年6月15日)

日本が重大な犯罪行為の計画を犯罪として刑罰を課すことになった。政府は、そのことを可能にする法律を強引に国会で通した(durchs Parlament gepeitscht)。野党は思想の自由が脅かされていると見ている。

野党やデモ参加者たちの猛烈な抗議にも拘わらず、日本の保守的な政府は木曜の朝、組織犯罪とテロを取り締まる法律を強引に国会で通過させたのだ。安倍晋三は、2020年の東京オリンピックの際の安全を保証するために必要なのだと強調した。

それに対して、野党や評論家たちは、日本が監視国家になるのではないかと警告している。民進党党首・村田蓮舫は、思想の自由を制限する凶暴な(brutal)法律だと語った。この法律によって、組織的な犯罪集団による重大犯罪は、その計画(Planung)だけでも既に監視され、罰せられ得る。これにより、日本は「犯罪は、犯罪行為がなされた後で初めて罰せられ得る」という原則(Prinzip)からは隔たっていくことになる。

何千もの日本人が国会の前で、この法律に反対するデモに参加した。通称「テロ対策法案」は、「重大犯罪」の対象が277もあり、異例なほど(ungewöhnlich)対象を広く解釈している(fassen)がゆえ、弁護士連盟からも批判されている。そこには、居住用の建物の建設に反対してデモをするための座りこみのストライキや、音楽の違法コピーも含まれている。

[法律の広大な適用範囲(Ausgedehnte Anwendung)]

国連の特別報告者は既に5月、「(277もの対象の)多くの場合において、組織犯罪への関連がはっきりと分かるものではない」と非難した。ジョセフ・ケナタッチ(Joseph Cannataci)は、「日本は、この法律のせいで、プライヴェートな領域を侵害されない権利や、言論の自由の権利が不当に(ungebührlich)制限される危険を冒すことになる」と批判したのだ。彼は木曜、日本人の諸々の自由権を守るためのさらなる保護条項(Schutzklauseln, 注:国がいかにして国民の自由権を守るのかを記した約束条項)をこの法律に盛り込むよう促した。日本において、この法律の賛成者と反対者の数は、世論調査によると、ほぼ同数で釣り合っている。政府は、「国際的な組織犯罪と戦うための国連の協定を、日本がついに批准できるようにするため、この法律は必要だ」と主張している。

国会の会期末を目前に控えた数日間、政府はこの法律を大急ぎで(in grosser Eile)国会を通過させた。非常に稀に用いられるやり方で、政府は水曜、すぐに本会議での審議を始めるために、参議院の専門委員会での採決を断念した。木曜の早朝、法案が採決されるに至った。政府は、離れ業(Verfahrenstrick)でもって、国会の会期延長と、野党からの不快な質問に答えることを回避したのだ。

[疑惑の只中にある首相(Regierungschef im Zwielicht)]

安倍首相は、彼の友人の一人が大学の学部を新設する際に特別扱いされた(begünstigt werden)と言われているがゆえに、重圧にさらされている。文科省は木曜、政府の上層部からの圧力があり得たことを指し示す文書を見つけたことを認めた。文科省はそれまで、「そうした文書の存在は確認され得ない」と説明していた。国会の会期を延長せずに、国会を閉会させることでもって、政府はいまや、質疑の時間において、このスキャンダルを公の場で効果的に問題とする機会を、野党を奪ったのだ。

(以上)

以下はZDFホイテの報道の日本語訳(拙訳)です。原文で敬称が略されているところはそのまま敬称略で日本語訳しました。

国会前の抗議運動:日本は「共謀」に対する法律を可決

日本は世界で最も安全な国の一つだ。それなのに右翼保守の政府は重大な犯罪行為の計画ですら罰する新しい法律を策定することを必要と考えている。公式にはテロに対する保護だが、批判者たちは監視国家になることを恐れている。

怒りの抗議運動をものともせず、右翼保守政府は異論の多い重大な犯罪行為計画に対する法律を強硬に国会を通過させた。野党の猛反対に対して安倍晋三首相の政権側は参議院の絶対多数を使い、木曜朝にその法律を可決した。

批判者らは、これにより日本で市民の大規模な監視に繋がると恐れている。法学者らはその中に日本の民主主義が脅かされる危険を見出している。それに対して安倍はその法律が2020年の東京オリンピックを控えて、テロ攻撃を防止するのに必要だと考えている。

市民らは国会前で抗議

その法律は、「テロ組織またはその他の犯罪組織」が277つの犯罪カタログにある犯罪を計画または準備した場合に適用される。その中には例えば放火や著作権侵害などの犯罪行為が含まれる。その法律は、日本が国連の国際組織犯罪防止条約を批准するのに必要であると右翼保守政府は告知した。市民グループは東京の国会前で抗議運動をし、安倍政権の憲法違反を非難した。

反対者らは「共謀罪」と新法を呼び、日本警察が拡張された捜査・監視の可能性を濫用するのではないかと恐れている。法学者らも言論の自由の抑圧やプライバシーの侵害および市民グループや組合の恣意的な迫害などが起こりうるかもしれないと警告している。国連の情報保護特別報告者であるジョゼフ・ケナタッチは最近安倍首相に公開書簡を送り、市民の基本的な自由権に関する大きなリスクについて警告した。

(以上、ZDFホイテの記事拙訳)

 

以下はドイチェヴェレの報道の拙訳です。原文で敬称が略されているところはそのまま敬称略で日本語訳しました。

日本の国会は異論の多い反テロ法を可決

情報保護運動家や市民権運動家らの烈しい抗議に反して日本の国会は異論の多い反テロ法を可決した。批判者らは監視国家になることを恐れている。

日本の右翼保守政権は非常に異論の多い、重大な犯罪行為計画防止のための法律を国会で強硬に通過させた。安倍晋三首相は、その法律が2020年の東京オリンピックを控えて、テロ攻撃を防止するのに必要だと考えている。反対者らは、国家が拡張された操作および監視の可能性を濫用し、自由権を制限し、抗議運動を押さえつけるのではないかと恐れている。

野党の猛反対を前に、政府側は通常の審議手続きを短縮し、夜間のもみ合いを経て、朝早くに参議院の承認を得た。衆議院は既にこれを可決していた。

批判者らは日本の民主主義が深刻に脅威に晒されていると見ている。彼らは同法が曖昧過ぎると見なしており、言論の自由の抑制、プライバシーの侵害および市民グループや組合の恣意的な迫害につながると警告している。法文はあまりにも明確さに欠け、捜査関係者らによる罪のない市民の盗聴に対する制限があまりにも少ないという解釈だ。日本弁護士連合会などは情報保護の制限および電話やオンライン・チャットの盗聴の大幅な拡大を恐れている。


安倍晋三首相は右翼コースにのっている

この法案に対して過去数か月心配する市民たちが何度もデモをした。政府は最終的に多少緩和したバージョンを提出した。当局が反テロ権限を適用できる犯罪行為の数が600以上から約270まで減らされたのだ。この法律は、「テログループまたはその他の犯罪者組織」がこの犯罪カタログのうちにある犯罪行為を計画または準備した場合に適用される。それには放火や著作権侵害も含まれる。

国連への上訴

金田勝年法相は、同法が組織犯罪グループにのみ適用され、犯罪項目は明確に定義されていると強調した。また同法は実際にその犯罪行為の準備がなされた場合にのみ適用されるという。同法はまた国連の国際組織犯罪防止条約の批准に必要である、と政府は説明した。

数千人の市民が夜まで抗議運動をし、安倍の同法を強行採決する「独裁的な」やり方を非難した。また情報保護に関する国連特別報告者であるジョセフ・ケナタッチも市民の基本的な自由権に関する大きなリスクを安倍にあてた公開書簡で警告した。政府広報官はこの手紙を「不適切」と評し、その法律が大幅な監視に繋がるという批判を拒絶した。


金田勝年法相は新法を正当化する

同法は、安倍の長年の念願である、日本の平和的な戦後憲法の改正に向けた更なる一歩である。それ以前に彼は既に異論の多い国家秘密漏洩に対する法律および軍隊の役割拡張のための法律を国会に通過させていた。安倍は自衛隊の存在が憲法で承認されることを望んでいる。批判者らは日本の戦争と軍隊の所有を禁ずる憲法第9条を空洞化すると非難している。安倍は2020年のオリンピックまでに憲法改正されることを望んでいる。この為には国民投票が必要だ。批判者らはこの「共謀罪法」が世論操作の手段の一つであると見ている。

憲法改正反対の抗議運動や汚職疑惑にもかかわらず、安定した経済のおかげで、在任数年経っても約50%の比較的高い支持率を得ている。

以上、ドイチェヴェレの記事の拙訳。

ここまで記事を読んで頂いた方はお気づきになられたと思いますが、安倍政権を「右翼保守(rechtskonservativ)」と形容するのが既に通例となっています。日本政府に対する直接的な批判こそ記事中ではしていませんが、政権批判側を取材し、その批判意見を記事に掲載することで、間接的に日本政府のスタンスから距離を取っていることが窺えます。

新安保法に秘密保護法、そして全然テロ対策になっていない今回の「共謀罪」法。安倍首相の政治を私物化しているとしか思えない政権運営。坂を転げ落ちるように日本の民主主義が崩壊していく様を見るにつけ、日本に居なくて良かったと胸をなでおろす半面、日本に住む日本人たちの今後を心配せずにはいられません。国民はもっと怒りを表明すべきです。

参照記事:

ダイヤモンドオンライン/ハフポスト日本版、2016.06.17、「共謀罪」法成立を海外はどう報じたか、BBC「キノコ狩りも対象」と紹介、和田千才

BBC News, 15. June 2017, Japan passes controversial anti-terror conspiracy law

Guardian, 15. June 2017, Japan passes 'brutal' counter-terror law despite fears over civil liberties, Justin Mccurry

Neue Zürcher Zeitung, 15. Juni 2017, Proteste in Japan: Umstrittenes Gesetz gegen Verschwörungen, Patrik Welter

ZDF heute, 15. Juni 2017, Proteste vor dem Parlament: Japan verabschiedet Gesetz gegen "Verschwörung"

Deutsche Welle, 15. Juni 2017, Japans Parlament verabschiedet umstrittenes Anti-Terror-Gesetz

ジャンル:
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