おぉきに。

気が向いたら読書感想を書き、ねこに癒され、ありがとうと言える日々を過ごしたい。

『花咲小路三丁目のナイト』

2016-12-07 16:20:35 | 本の話・読書感想
花咲小路三丁目のナイト
小路 幸也
ポプラ社


『花咲小路三丁目のナイト』 小路幸也 (ポプラ社)
 早いもので花咲小路商店街のシリーズももう第四弾となりました。商店街に一丁目二丁目三丁目四丁目があって、お店の数だけ物語があると思うので、今後も続く息の長いシリーズになりそう、というかなってほしいです。
 ネタばらししないように書くつもりですが、どこかでうっかりそれらしいこと書くかもしれないし(本文はこれから書く)、前三作のネタも割るかもしれないので、感想にお付き合いくださるかたはそこらへん自己責任でお願いします。まだこのシリーズを読んだことないって人は、四丁目の聖人からぜひ読みましょう!



面白かったし!
シリーズのこれまでの登場人物がわらわら出てくるし。
ちょっと異色作でもあるかなと思ってるんですけど。
その前に、これだけ叫ばせて。

めーぐりーーーん!!!

いやもうアナタ何が興奮したって、わたしの中で小路作品オールタイムベスト不動の第一位に燦然と輝く『HEART BEAT』『HEART BLUE』のメインキャラクタであるめぐりんこと巡矢氏の名前がぽろっと出てきてマジで声出ました(笑)
ニューヨークってあるから仁太叔父さんがめぐりんと知り合いだったらいーなーと思ってたら本当に友達だったw
もういっそのこと委員長も出てきてほしかったけどさすがに無理かな(苦笑)
はー……まだ心臓ドキドキしてるわwww

コホン。
すーはー。深呼吸。

さてさてこの新作。
さっきも書きましたけど、前三作品のキャラクタがぽんぽん出てくるので、もちろんどれから読んでも大丈夫とはいえシリーズ一作目から順に読むと分かりやすい、というより趣向がより分かりますね。
主人公、視点人物は望くん。
で、この彼は、今のところシリーズで一番何でもない普通の人。何しろ商店街には特異な能力者や正体隠したあの人この人がわらわら居て、仁太叔父さんもその例外ではないだけに、望くんの平凡さにどこかホッとします。
もちろん望くんだけのパーソナリティもあるんですけど、それは別に超人的なものじゃなくて、おかしなことでもない。ただまだ彼は生きにくい世の中でもうちょっとだけ風向きが変われば、凪のような感じであれば、きっと花咲小路商店街の喫茶店ではなくてスーツ着た営業職のままだった。
望くんが「逃げた」先の花咲小路商店街は、幸いもっと多種多様な人たちが多く住む絶好の場所でした。
それを、シリーズを読んできた読者は知ってる。

この『ナイト』がシリーズを読む初めてのかたにはピンとこないでしょうが、シリーズ全部を読んできたわたしは、この新作はほんの少しだけ異色作だなあと思いました。
望くんは、仁太叔父さんもですが、セイさんの人生を知らないし、淳ちゃん刑事さんとミケさんの深い事情も知らないし、能力者としての花乃子さんやめいちゃんも知りません。でも読者、わたしは知ってる。
望くんがセイさんと話すシーン、淳ちゃん刑事さんとミケさんと並ぶシーン、花乃子さんのお店で彼女が一瞬動きを止めて見つめ煌めいた瞳の意味、そういうものをわたしは内心ニヤニヤしながら読んでいました。めいちゃんが導いて花乃子さんのお店にお花を買いに行く望くんに、花乃子さんは何を見たのかなって。あぁヴァーベナか!って。ふふふ。望くんゴメンねw
そんなふうに。
この新作は、主人公の望くんがほとんど何も知らされないのに、読者は望くんがどういう意味の出会いをしてるのかを割とさっくり分かってるんですね。神の視点とまでは言いませんが(それは作者である小路さんですし)、まぁそれに近い距離感で読んでました。
思うに、望くんがごく普通の人間であることも、この距離感のために必要だった。話の流れから言っても、登場人物の相関図からしても。もし望くんが何らかの能力者だったら、読者はストーリーからだけじゃなくてキャラクタにも置いてけぼりを食らうわけです。

ところで、シリーズを重ねてより深くなったものがありまして、それが「商店街は大きな家族」。
〈和食処あかさか〉も、セイさんが家主であるマンション矢車も、花の店にらやまも、何かあれば商店街の人達がよってたかって気にかけていましたが、さて今回の〈喫茶ナイト〉もその商売?柄、商店街のいろんな人たちが立ち寄っていろいろ話して望くんをあたたかく受け入れて、誰かに何かあったら全力で助ける。
商店街という共同体を超えて、ひとつの大きな家族のよう。
ここで、こずえちゃんの存在が大きく舵を切るキーパーソンになってるなと思って、相変わらずキャラクタの配置が上手すぎます小路さん。
こずえちゃんのような輪郭のはっきりしたキャラクタが、あの人この人その人までを繋ぐ存在になってて、それなのにこずえちゃん自身はただピカピカとそこに光ってるだけですごく印象深い女の子。ものすごく真っすぐである意味大人びてるところが、可愛いというよりも美しい。

小路作品には、頭のいい人や頭が良すぎて変人っぽい人や、素直で一途で柔らかい精神の人、育ちのいい人や上品で美しい佇まいの人、それから普通の人、友達になりたいと思わせられる魅力的なキャラクタがてんこ盛りです。そういう楽しそうで気持ちのいい人たちの住む町の一角のお話です。
つまり、読んでいて嫌~な気持ちにならない。ひたすら楽しい。この安心感。
丁寧に、品よく生きる人たちを描く小路さん。この新刊ももちろん。
素敵なキャラクタたちの中で、やっぱり一際輝いていたのは、こずえちゃんだったなとわたしは思います。揺るがない透き通った心をアイシングで包んで甘い女子高生に見せて。
わたしがこんなに肩入れする女の子も珍しい(苦笑)。いつもだったら仁太叔父さんとかゴンドさんとか淳ちゃん刑事さんとかでドキドキするんですけどw

クライマックス、いろいろオオゴトになりそうなあっちとこっちとそっちの話をどうやって繋げていくのかと思ったら、仁太叔父さんがかっこよくて痺れましたw
誰にも話さなかった過去が重くて、でもそんなことさえ、若い人達のためにぜんぶ見せて若者たちの背中を蹴っ飛ばす豪快さ。
叔父さんがこの先はセイさんや花乃子さんとも気後れせずに付き合えたらいいな。

余談ですが、それから最初の雄叫びに戻りますが。
案外、望くんとめぐりんは波長が合うんじゃないかな。
いや、彼らの恋愛事情じゃなくて、めぐりんが委員長をあれほど大事に守ったのは委員長がひたむきで優しい性格なのはもちろんですが「普通」であったことも大きいんですよね。
望くんにもそういうところあるし。人を見る目と口の堅さと誠実さと、それから、特にこれと言って特徴的なもののない普通の人。
出会えれば、良い友人になりそう。
ハイ、わたしの妄想ですよ分かってますとも。
でももしめぐりんシリーズの完結編かスピンオフがあるとしたら、望くんは結構自然にそこに居そうやなって思ったりするのでどうでしょうか小路さん!(←分かってへんやん)

各章のタイトルや、叔父さんがガジェットに使うDVDの選択が名作映画にちなんでいて、名画がまるでフィルムで掛かってるようで、そこには煙草と洋酒がよく合いますね。
映画をたくさん観てるというこずえちゃんの振る舞いや、仁太叔父さんの心の拠り所にもなって、いろいろ学ぶ教材として名作映画って良いものなんですね。

さてさて、お次はどこのお店のどなたの物語でしょうか。
続編を楽しみにしておりますー!
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