おぉきに。

気が向いたら読書感想を書き、ねこに癒され、ありがとうと言える日々を過ごしたい。

『マイ・ディア・ポリスマン』

2017-07-16 18:04:11 | 本の話・読書感想
マイ・ディア・ポリスマン
小路幸也
祥伝社


『マイ・ディア・ポリスマン』 小路幸也 著(翔伝社)
 はい、小路さんの今月の新刊です♪単行本新刊は今年これで4冊目かな?連載されていたものが次々纏まって単行本になってるとはいえ、相変わらずのハイペースです。嬉しいですねえw
 さてさて、この新刊は、早くも続編が出ることが決まっています。もうじきに、また【コフレ】で連載スタートとのこと。
 なので、読者はそのつもりで読みましょう。伏線の回収とかじゃなくて、「できれば続きが読みたいいいい!」と悶絶するんじゃなくて、キャラクタの造形が続編ありきなので、『東京バンドワゴン』シリーズの堀田家と愉快な仲間たちのような感覚で関係性を受け止められるから。



で、ですね。
章ごとに視点人物が変わる、交互に語らせる、というのは普通ですが、なんとこの新作は、レギュラーキャラの全員に語り手がまわってきます。
もちろんポリスマンこと宇田巡査の視点が一番多いんですが、これからのシリーズを支えるレギュラーキャラになりそうな人達の目と耳と声と心が順番に開陳されます。
それでいて混乱がまったくないのがすごい。

魔法や何かが飛び交うファンタジーではないのですが、エンタメ小説でありながらどこかファンタジックなのはやっぱり、キャラクタそれぞれに秘められた特殊能力のせいでしょうね。
これがまたイイ。
宇田のお巡りさんや口の巧い行成さんやあおいちゃんはともかく(この人たちもじゅうぶん凄い能力の持ち主です)、わたしが一番グッと来たのが市川兄弟!大好きだこの二人!
この市川兄弟については、能力的にもツボなんですが、……いやだってこの能力は、名探偵に必須なんですもん、いずれ彼らが宇田のお巡りさんより先に謎の真相に辿り着くような名探偵ぶりが発揮される展開が待ってるかもしれないしわたしはそれを望んでるし。
能力よりも人間的にレベルが高い、と思ったのが、彼らの内面の純粋さ。
弟は音楽でできてる。生きることのすべて、何もかもが彼の音楽のためにある。
兄は素直さが光ってる。小悪党でやさぐれていようと、確かに彼の浅はかな悪知恵で迷惑を被った人もいるんですが、家族や友達の声を素直に受け止めて反省したうえでよりよい未来のために努力できる潔さを持ってる。
この兄弟の資質が、わたしは一番好きです。
できれば今後、彼ら兄弟が協力して事件に立ち向かうような展開があれば嬉しいな。

それとやっぱり、天野さくらおばあちゃん。
この人の存在は大きいですよね。
ていうかね、
それまでは宇田くんや行成くん、あおいちゃんとお母さんと杏菜ちゃん、市川兄弟、かな?語り手。それが。

天野さくらさん。

このおばあちゃんが登場したとたんに、物語が、世界が、ピン!と張りつめたというか、屋台骨が出来たというか。
その存在感で、この物語がしゃんと立った、ように感じました。
若い人達が頼りないんじゃなくて、さくらさんがすごいの。
このさくらさんと、交番の宇田くんの上司である西山さんの対話のシーンがね、この世界に深みと奥行きを持たせています。歴史を作った、と言いかえることもできるかな。
今回はリアル登場シーンのなかった行成くんのお父さん、住職さんが登場したとき、シリーズはまた一段と厚みを増すだろうし、さくらさんと宇田くんのお祖父さんのエピソードが描かれて宇田源一郎さんが話し始めたときにまた世界はぐっと重みが出ることでしょう。

小路さんの小説は、女性はピュアで凛としてるし男性はダンディで誠実で、子供たちはとびきり可愛いんですが、やっぱり、大人、それも年配者が超カッコイイのですよ。堀田勘一さんしかり。
子供たちに、若い人に、背中を見せてさくさく前を歩く、不条理や不義理を年の功で解きつつ丁寧に生きる知恵を授ける、素晴らしく品の良い大人の姿。こんな大人がいたらいいなあ、と心底思う、理想の人達。

大人はね、余計なことに現を抜かす時間が無いんですよ。人生の折り返し地点とか、老い先短いこととか、常に頭の中にある。若い頃には回り道もいいけど、年を重ねるごとにそんな余裕はなくなる。
でも、小路さんの小説には、いろんな人生を経験したうえで得た心の糊代をもって鷹揚に構えつつ多少の回り道も楽しむ大人の姿があります、憧れずにいられないくらい。こういうおばあちゃんになりたいな、なれたらいいなって。
そのために、今のわたしは何ができるのか。
どういう生き方をすれば、こんな理想的な人になれるのかを逆算して、じゃあとにかく今これからは丁寧に生きていこう、誠実に生きていこうって、そう思えるんですよね。

それと、すっきりしたのが、宇田くんがあおいちゃんを諭すラスト。
何も教えないままに誰かを思い通りに動かそう、操ろうとすることは、たとえそれが人助けであってもわたしには許せないことなんです。
助けたい人がいて、高校生の自分の代わりに動いてほしい人がいるなら、まずその人に相談するべきだと。
必然的に、運命的にそうならざるを得なかったというならともかく、問題の根本を隠したままで恣意的に誰かを操ることは、その相手の人生への過干渉というか出過ぎたこと、もしかしたら事情があって協力したくないという相手の選択肢を最初に奪う権利はない、というのがわたしの考え。
なので、わたしはあおいちゃんのしたことは、最後まで受け入れられなかったんです、実をいうと。
……そういうことをもう少しソフトに(苦笑)宇田くんがしっかりとあおいちゃんに言ってくれてよかった。

これで安心して続きが待てますw

始めの方に書いたけど、語り手が次々にスライドしていくことで、ドラマを見ているような感覚で読めました。
シーンのひとつひとつに映像が浮かび、女子高生ズは可愛らしく溌剌として、巡査と副住職コンビ~同級生三人の心安いお酒のシーンにじんわりしたり、あおいちゃんのお父さんに苦笑いしたり、さくらさんの毎日に背筋が伸びたり。
連載中はもちろん細切れ、それが一冊の単行本になって読むのとではグラデーションというか接着面に相当気を遣うのではと。これを連載するって凄い技術ではないかと思うのですが小路さん。
楽しく読みました。


この町は凄ワザを持った住民がまだまだいるんだと思います。
ちょっとした超能力っぽい、ファンタジックな人達の住む町。
続編ではどんな超人が登場するのか、今から楽しみです♪


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