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気が向いたら読書感想を書き、ねこに癒され、ありがとうと言える日々を過ごしたい。

『紐結びの魔道師』

2017-03-21 20:38:11 | 本の話・読書感想
紐結びの魔道師 (創元推理文庫)
乾石 智子
東京創元社


『紐結びの魔道師』 乾石智子 著(創元推理文庫)
 今や国内ファンタジーの作家さんではこの方が一番有名なのでは。いや、わたしがファンタジー小説を網羅しているわけでもないので、わたしの観測内に限りますが。
 〈オーリエラントの魔道師〉シリーズもこれで何冊目になったんかな?デビュー作『夜の写本師』の鮮烈なことと言ったら、読んだ時の興奮は今もはっきり覚えてますが、それ以来このシリーズは特に好きでたぶん全部読んでる。
 シリーズなだけに、時系列はいったりきたりですが世界は同じ。既刊とのリンクというかあの魔道師のルーツだったりあの魔道師の国の未来だったり。
 新刊が出るごとに世界が重厚になっていくので、シリーズ未読のかたは早いうちに読みましょうね♪


リクエンシスという魔道師を主人公にした連作短編集、だと思うんですが、時系列がちょっと行きつ戻りつというか短編ごとの時間的間隔がガバッと開いてるというか。
普通の人間が主人公の場合、こんなスパンでは生きてませんからw
長寿の魔道師を視点人物にすると、数百年後のお話~とかそういうことになるんですね……。

そんなわけで、コンスル帝国は衰退~滅亡という時代の中の、各地方都市のそれぞれの様子を、リクエンシスという一人の魔道師の目を通して描かれた短編集。
同じ魔道師ならともかく、例えば【紐結びの魔道師】に出てきたあの人達はもうそのあとの物語には登場しない。エンスの人生を駆け抜けていきました。国もしかり。まだなんとか残照程度の明るさがあったコンスル帝国はバラバラになり。国境付近ではコンスル語もカタコトになる。
ローランディア。キスプ。エズキウム。
シリーズを読み続けているわたしの記憶の中の、懐かしい土地の名前も、どこか寂しい。

紐結びの魔道師として、魔法を体系化し、完成させていったリクエンシスの、数百年にわたる旅。

出会った人達、闘った銀戦士、語り合った魔道師たち。

軽やかに笑いながら、おおらかに受け止めながら、諦めず前に進みながら生きてきたリクエンシス。

シリーズの魔道師たちの中でも異色です。

そんな彼でも、長い長い時のなかで、生きることに疲れてくる。
あまりにも多くの人達との別れに彼の心が麻痺してしまった結果もう世界は新鮮味を失い、くすんで見えたんですよね。
わたしは本来、「一人でいたいキャラは恋愛要素だの因縁だの絡ませずに、孤高のままでいさせるのが良い」と思う読者で、本当に色恋とかそういうの大っ嫌いなんですけど、このリクエンシスに関しては例外的に「ああ、この娘っこのおかげで心がまた動いてよかったなあ……」としみじみしました。どこのおばちゃんですか。

【形見】からリクエンシスの心が少しずつ硬くなっていってる気がしました。
そういうお話じゃないんですけどね、不思議。
たぶん、大事な人との別れを覚悟していくうちに、恐怖に対抗するために武装したんですよねきっと。
寿命の短い人間とのかかわりは、そうして魔道師を傷つけていく。
魔法の種類は違っても同じ長寿の者同士である魔道師たちの組織、魔道師たちの国は、必然だったんですね。

リクエンシスの目を通して見る、描く世界は、優しく、狡く、暗く、厳しく、楽しい。

オーリエラントの物語、まだまだ続くようなので、これからも楽しみにしてます。
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