緑川鷲羽(改名、上杉(長尾)景虎) 上杉奇兵隊日記「草莽崛起」<上杉松下村塾>

政治経済教育から文化マスメディアまでインテリジェンティズム日記

インスピレーションが未来を創る

2017年07月14日 15時54分47秒 | 日記






























インスピレーションが未来を創る

2017.06.05 MON





林信行

Nobuyuki Hayashi






戦前、個人がさまざまな情報を簡単に探せる機械のアイデアを発表したヴァネヴァー・ブッシュから「Mac」を生み出したスティーブ・ジョブズまで──彼らのインスピレーションのリレーが人々の暮らしを変えてきた。インスピレーションが新しい時代を創造するのだ。




スティーブ・ジョブズがMacを生み出した背景

今日、誰もが当たり前に使うパソコン──そのルーツをご存じだろうか。

少しコンピューターに詳しい人なら「ENIAC」というコンピューター名をあげるだろう。第二次世界大戦中に開発された部屋を埋める巨大コンピューターで、弾道計算などに使われるはずが戦後の完成となった。

ENIACが有名なのは世界のIT業界を牽引する米国の初のコンピューターだったからだ。実はその前に英国の「Colossus」 やドイツの「ZUSE Z3」というコンピューターもあった。

こうしたコンピューターは、その名の通り「コンピュテーション(計算)」のための機械で、政府が国力を高めるために技術の粋を集めて開発してきた。今日、我々が生活情報を探したり、エンターテインメントに活用するパソコンとはかなり趣旨が異なる。

パソコン、つまりパーソナル(個人)なコンピューターは、むしろ、情報を誰もが自在に活用できるようにすることで人類全体を進歩させようとする「ビジョン」から生まれてきた。

おそらく最初のビジョナリーはヴァネヴァー・ブッシュだ。彼はまだコンピューターのない戦前に、個人がさまざまな情報を簡単に探せる機械のアイデアを発表していた。1945年には、今日のWebページのようにそれぞれの情報をリンクして行き来を可能にするアイデアも論文発表している。

1968年にはマウスの発明者、ダグラス・エンゲルバートが、開発中のコンピューターを駆使して、マウスで画面上の表示を選択したり、キーボードで文章を編集したりと、今日のパソコンのように情報を自由自在に操る様子を実演。このコンピューターは製品化されたわけではないが、彼の発表は「伝説のデモ(プレゼンテーション)」と呼ばれ、世界中の多くの科学者に衝撃を与えた。

これを見ていた一人がアラン・ケイだ。当時、コンピューターはまだまだ巨大な機械だったが、ケイは、いずれこれがノートほどの小ささになり老若男女問わず誰もが一台持ち歩くようになると「パーソナルコンピューター」 のビジョンを提示していた。彼はゼロックス社のパロアルト研究所(Xerox PARC)で開発されていたキャビネットほどの大きさのコンピューター、「ALTO」の開発に関わり、スモールトークと呼ばれるマウスを使った情報操作環境(今日のOSのようなもの)を開発。これによりALTOではマウスやキーボードで簡単に文字情報を編集したり、プログラムをつくったりすることができた。

このケイの成果を見て衝撃を受けたのが若きスティーブ・ジョブズだ。ゼロックス社がケイの成果を商品化する予定がないと知るや、自らマウス操作のパソコンの開発にとりかかり今日の「Mac」が誕生した。またMac用のソフトを開発していたマイクロソフトも、それにならって「Windows」の開発に乗り出した。

「ナレッジナビゲーター」で描かれた未来はすでにiPhoneで現実のものに

誰もが情報を自在に操って、ほかの人やほかのアイデアにつながれる世界。ブッシュ、エンゲルバートからケイやジョブズらに伝播していったインスピレーションは、その後、我々が日々活用しているスマートフォンという形へとさらに進化し、たった10年ほどで発展途上国も含めた世界数億人の暮らしぶりを劇的に変えてしまった。

テクノロジーだけでは便利なものはつくれても人々の暮らしを変えることはできない。人々の暮らしを豊かに変えるのは希望に溢れたビジョンや、その熱量に感化されて出てきた新時代へのインスピレーションだと思う。そんな素晴らしいインスピレーションのリレーを次の時代にもつなげたい、というのが本連載のタイトルに込めた思いだ。

30年前、ジョブズが去ったあとのアップルで、21世紀コンピューターのビジョンが映像作品として提示されたのをご存じだろうか。当時の経営者ジョン・スカリーがアラン・ケイらに監修を依頼しつくったもので「ナレッジナビゲーター」と呼ばれた。日本語吹き替え版もある。この映像は世界中の研究者に大きなインスピレーションをもたらした。

主人公の教授が書斎に戻って画面にタッチすると、そのあいだに画面にフィルという仮想の秘書が現れ不在中に受信した電話やメッセージを読み上げたり、今日の予定を教えてくれる。30年前というとインターネットが一般に広まる前だが、教授が発表資料をつくろうとすると必要な情報を検索して見つけてくれたり、見る人によっては今でも未来的なビデオに見えるようだ。

しかし、このビデオで提示されている技術、フィルという仮想秘書の顔が表示される点以外はすべて今のiPhoneでも実現している。Siriに向かって「通知を読み上げて」といえば着信通知やメッセージを読み上げてくれるし、「今日の予定を教えて」と言えばそれも教えてくれるし、必要な情報をインターネットで検索もしてくれる。しかも、iPhoneなら百科事典ほどの大きさだったナレッジナビゲーターよりよほど小型でポケットに入れてどこへでも持ち運ぶことができる。

我々は既にかつての想像していた未来より、ずっと先の未来を生き始めている。

我々は今、次の時代へのインスピレーションを求めている。









林信行

Nobuyuki Hayashi

ITジャーナリスト。「ステキな21世紀」をテーマに、これからの時代の風景をつくるテクノロジーやデザイン、そして残すべき伝統を取材。ソーシャルメディアや講演、記事やTV/ラジオ番組を通して伝えたり、その知見を元にした企画政策や企業コンサルティングを行う。最近は特にファッション、教育、ヘルスケア、災害対応といった領域に注力。著書・連載多数。ビジネス・ブレークスルー大学講師。James Dyson Foundation理事、Revolver社社外取締役。
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