このブログでも、様々な視点から取り上げたことのある、
俺のお気に入りの曲、
そしてお気に入りのPVでもある「炎の化石」。
ちょうど今と同じくらいの夏の季節に発表された名曲だ。
1998年のツアー「ONE NIGHT STANDS TOUR」前に発売されたベスト・アルバム、
『Collective SOULS ~THE BEST OF BEST~』
の最後を飾る曲として、
すでに発表済みの曲達が並ぶ中、
異質を放つ新曲として、突如俺たちの前に現れた。
そんなタイミングでの新曲発表ということもあり、
当然ライブでは披露されるだろうと思いきや、
オーラス横浜スタジアムにおいてまでも、その欲求が叶うことはなかった。
後のライブ「CASE OF HIMURO」で初披露された時は、
さいたまスーパーアリーナの天井にも届きそうなくらいに吹き出されたファイヤーボールの演出に、
度肝を抜かされたという人も多かったことだろう。
そんな激しさを余所に、後ろに流れる静寂な世界。
そう、そのスクリーンに映し出されたいたのは同曲のPVだったのだ。
なんの混じり気もなく、淡々と流がれてゆくそのPV演出に、
あの時、そこにいた誰もが頷いたのではないだろうか。
「やはり、それでいいよな」、、と。
そこに一切の捻りを必要としない、完成度の高い芸術だからこその演出。
その演出こそが、最高の芸術であるという証し。
最高の芸術に余計なセンスは必要としない、
理にかなったそのシンプルに、誰も異論を唱えなかったことだろう。
そして、そんなPVに関しての裏話が、
"【100152】を巡るとっておきのストーリー"
と題し、
2000年のKING SWING No.42に綴られている。
あの鳥は、、、
あの女性は、、、
そう、まるで化石を採掘するかのごとく、
その作品に隠された秘話を感じ、
改めて、その静寂に溺れてみるのも悪くはないだろう。
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LAから大西洋を渡り、ヨーロッパの中央に位置するチェコの古都、
プラハに飛んで行われた撮影。
オール・ロケで3日間、それも早朝から夕暮れ時まで、
ぎっしり詰め込まれたスケジュールの中で、
氷室は美しく且つドラマティックな映像作品を創り上げた。
プラハは2度目という氷室は
「前に来たときにも思ったけど、ここは時間が止まってるよね」
とポツリ。
どこまでもアグレッシヴに進み続け、とどまることをよしとしない氷室にとって、
それはあまりにも異質な空間だったのだろうか・・。
けれどその街並みはこの曲のイメージにはハマりすぎているくらいハマっていた。
撮影中、「炎の化石」のメロディーがカメラの後ろで流れると、
そこは一瞬にして時空を超えた不思議な場所に変る。
プラハの中央駅の構内にある古い時計塔の中。150年前に建てられたという国民劇場の屋上。
ゴシック様式のカテドラル・クトィナーホラーを後ろに望む土手。
全身、黒い衣装に身を包んだ氷室は、そこで古い伝説を今に伝える華麗なSPIRITとなる。
撮影にはLAからラルフたち、いつものクルーがやってきた他、
現地チェコのプロダクション・スタッフも参加した。
ヒロインにはチェコのモデル、クローディー。
そしてこのビデオの名脇役であるレイヴンもチェコの出身だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Raven
このレイヴンはとてもナーヴァスな上に狂暴にもなる鳥だということで、
撮影にはかなり神経を使った。氷室がレイヴンを腕に乗せて歌うシーンを撮影した時には、
周りは静まりかえり、氷室も「出来るだけ動かないように」という指示をうけて、
緊張感漂う中でのシューティングとなった。
KYOSUKE HIMURO PRIVATE MAGAZINE
WINTER 2000 No.42『KING SWING』より抜粋
http://blog.goo.ne.jp/midnight_xxx/