私は、現在一級建築士で設計や現場監理の仕事をしている。
昔は大工職人でした、一級技能士・建築大工指導員の資格を持っている。
大工をやめた頃の話です。
私と、同年代の大工と、若い大工と3人での会話です。
私 「和室の天井はこうしてやったほうがきれいに納まる」
若い大工「あっ、そうか。今まで気がつかなかった」
私 「天井の回り縁の仕口を加工して、足場に上がる前に天井材を木取ったほうが良い」
「足場に上がると一気に作業が進む」
若い大工「足場に上がったら、そのまま天井を張り上げる。無駄がなくなった。ありがとう」
そばで聞いていた大工は、若い大工がちょっといなくなったときこう言った。
大 工 「時遊人、そう簡単に技術を教えたら本人のためにならない」
私 「いや、違う。昔は他人の技術は盗んで覚えろといった」
「今の若い連中には教えてやらないと技術を習得できない」
大 工 「自分の持っている技術をすべて教えたら、時遊人の上になるだろう」
「そうなると時遊人の仕事が減る、今後不利になるだろう」
私 「そんなことはない、彼が私に追いつくには時間が必要だ」
「彼が勉強しているあいだに、私も先に進んでいる、追いつかれるとは思わない」
そして、続けた。
私 「彼にはりっぱな大工になってもらいたい」
「逆に追いついてきてもらいたい、私は追いつかれないように先に進む」
「だが、彼はあなたを確実に追い越すだろう」
その後、大工は私と一言も口を利かなくなった。
みなさんは、この会話どう思いますか? 私が間違っていますか?