『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
ここでは、気軽に読めるエントリーを記していきます^^

[映画『真夏のオリオン』を観た]

2009-06-16 16:28:24 | 物語の感想
☆私は常々、「潜水艦物に外れなし」を語っていた者であり、賛否両論のある『ローレライ』も楽しんで観たものだ。

 しかし、この『真夏のオリオン』は厳しかった。

 その、作品で描かれた戦後左翼風潮的な戦争観も、国家観を無視した「私情」主義さえも、私は許そう。

 だが、何よりも、潜水艦物と同義の「潜水艦という密室内での敵(水面の、もしくは同じく水中の、を問わず)との息詰まる<勝負>の緊張感」というものが皆無なのである。

 それさえあれば、私はこの作品を賞賛も出来た。

 銃後の女や子供との関係(戦う為の動機)などは、適当でも良いのだ。

 そんなものは、観ているこちらが脳内補完すべきものだ。

 しかし、この作品は、そちらがメインであった・・・。

 まあ、北川景子の泣き顔キモカワ№1が見れたからいいけど^^;

 <回天>の乗員たちにさえも、「自分は何で命を捨ててまでも戦うのか」と言う思考の帰結である国家観が全く見られなかったのには驚いた^^;

   ◇

 評判の悪い玉木宏の艦長だが、私は頑張っていたと思う。

 与えられた脚本の中で、独自性を持つ艦長を必死で表現していた。

 他の役者も頑張っていた。

 汗ダクダクで頑張っていた。

 しかし、問題は、その「汗ダクダク」の意味がこちらの感情に伝わってこなくて、「汗ダクダクで、アシスタントさん、いい仕事してるな。全てが噛みあえば、佳作になれる可能性もあったんだな」と思わせてしまうところに問題がある。

 丹念に、密室での長時間の経過を描いていけば、「汗ダクダク」姿もこちらの感情に直結したはずなのだ。

 ・・・映画文法を会得していない作り手だから、かような作品になってしまった。

   ◇

 物語の序盤から、描写の経過の欠落がある。

 例えば、主役潜水艦<イー77>は、魚雷を発射する。

 魚雷は目標の米タンカーを炎上させる。

 しかし、その命中している瞬間を描写しない。

 敵タンカーはいつの間にやら、燃えている。

 映画的に全く面白くない。

 例えば、敵駆逐艦が強襲してくる。

 遠景の駆逐艦・・・、そして、次のシーンでは、駆逐艦の後甲板から水雷が放たれる。

 遠景の駆逐艦が、いきなり水雷を発射している描写に一足飛びなのだ。

 わけが分からないのである。

 映画文法としては…、っちゅうか、物語の最低限に使用されなくてはならない説明において、その経過には、必ず敵駆逐艦の全貌を見せるカットがなくてはならないはずなのだが。

 私は、よっぽど、予算が足りなくて、爆破シーンや駆逐艦の俯瞰映像が撮れないのかと思ったのだが、その後にはちゃんとあるのだ。

 そういった、踏まえておかなくてはならない描写の欠落が多数ある。

 私が、クリント・イーストウッドに偉大さを感じているのは、彼の作品は、徹底的に散文の産物であることなのだ。

 丹念に描写を積み重ねて、その描写描写は「ドット(点)」に過ぎないけど、ドットの集積で芸術作品へと昇華される。

 だが、『真夏のオリオン』の作り手は、物語の肝である、感情を揺るがす勝負の場面に「分断されたドット」を配し続ける。

 故に、全く、リズム感の欠如した、つまらない戦いになってしまっている。

 おそらく、製作のテレビ朝日に、「反戦」「戦争の犠牲になる女・子供」「何よりも大切な命の尊さ」の強調を促されたのだろう。

 別にそれでもいいんだけど、勝負はゲーム的に楽しませて欲しい(『ローレライ』にはそれがあった)。

 所詮は、エンターテイメント作品なんだからよお!

 妙に、「反戦」「戦争の犠牲になる女・子供」「何よりも大切な命の尊さ」に重きを置いてしまった主人公の個性であるが故に、

 後に、艦長が戦死した部下の死体そのものを「囮(おとり)」に使うときに、私は、「なんて人非道な男なんだ!」とゾッとした。

 艦長に、あんなにもの戦後民主主義的個性を付加させなければ、その作戦もありだったのだが。

   ◇

 また、対決する両艦長の駆け引きも不気味だ。

 あらゆる可能性の検討もなく、よくお互いを知らないのに、「奴はいる」とか「なかなかやってくれる」、「奴はそんなことはしない」とか「奴ならそう考えるだろう」とか、確信的な物言いで訳知り顔で言うのである。

 これが、デスラーと古代進であったり、マリュー艦長とバジルール少佐の激突ぐらいの関係があったらいいのだが、倉本艦長も駆逐艦パーシバルの艦長も因縁が全くないのに、いきなり、お互いが旧知の間柄のように、結果オーライの「超」心理戦を行なうのである。

 パーシバルの艦長はなかなかいい演技をかましていたけど、腐った脚本・演出の中での、相手を見抜いたような確信的な表情の演技は、

 年末によくやる番組での、UFO研究家の自信満々の言説(笑)を髣髴とさせた。

   ◇

 ところで、作中で、江田島の海軍兵学校みたいな建物が出てくるんだけど、あれはロケしたのでしょうか?

 英霊たちは、みな寛大なので、この作品も歓迎すると思いますけど・・・。

                           (2009/06/16)
『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント (2)   トラックバック (30)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« [口利き民主党議員の名を曝せ!] | トップ | 次の記事へ »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
です! (KLY)
2009-06-16 20:46:10
この作品は戦争映画ではないという方もいるようですが、それならそれでもっと駄目な作品だなぁと。(笑)
戦争映画だから辛うじて陳腐な恋愛物語ですら観てられると思うのです。そして戦争映画はその戦闘シーンの緊迫感で何かを表現するべきで、それが命の尊さであったり、友情だったり恋人との約束だったりする訳で。

爽やかな戦争なんか存在しないし、そんな表現は単なる嘘つきでしかないと思います。
KLYさんへ♪ (ミッドナイト・蘭)
2009-06-16 21:24:02
こんにちわ^^

>>この作品は戦争映画ではないという方

では、なに映画なんでしょうかね?^^;
なんにしても、その映画文法は破綻してました。
う~、考えれば考えるほど、妙な編集が思い出されます。
でも、可哀想ですよね。
演技者は頑張っているのですが、批判のために思い出そうとすると、演技者の顔を思い出してしまうのです。
でも、シズコさんの近くにいる子供たちは、オカッパや三つ編みの少女で可愛かったですよ^^;

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

30 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
「真夏のオリオン」 (かいコ。の気ままに生活)
試写会で 観てきました。「真夏のオリオン」公式サイト第二次世界大戦下、日本海軍潜水艦の乗組員が過酷な戦況下で戦い抜く姿を描く戦争サスペンス。福井晴敏大好きなので(本の方)これも原作読もうかと思ったら原作は別の方で福井晴敏は「監修・脚色」なんですね・・終...
真夏のオリオン (一言居士!スペードのAの放埓手記)
真夏のオリオンは玉木宏主演の第二次世界大戦での戦争サスペンス映画です。玉木宏はイ-77潜水艦艦長役ですが、共演は北川景子やケミストリーの堂珍嘉邦などです。
真夏のオリオン (Akira's VOICE)
「勿体ない」は明日を繋ぐ。  
★真夏のオリオン (・*:・ふわゆら生活・:*・)
試写会で「真夏のオリオン」観て来ました■出演■玉木宏 北川景子 堂珍嘉邦 平岡祐太吉田栄作 鈴木瑞穂 吹越満 益岡徹 他■監修・脚色■福井晴敏第二次世界大戦が終わり64年の歳月が経ったある日。。倉本いずみ(北川景子)の元にアメリカから手紙が届く。それに...
真夏のオリオン (かりんのつれづれなるblog)
真夏のオリオンを見てきました。 土曜に見に行ったので、封切り初日。 それでも半分
試写会「真夏のオリオン」 (流れ流れて八丈島)
本日夜の部は、九段会館で試写会「真夏のオリオン」を観てきました。「亡国のイージス」「ローレライ」と同じ監督なんで、三部作かと思うほど、かなり似た感じの映画でしたねしかし、玉木宏とCHEMISTRY堂珍が潜水艦の艦長って、若過ぎでしょうと思ったら、どうも当時は二....
真夏のオリオン (LOVE Cinemas 調布)
『亡国のイージス』、『ローレライ』の原作者・福井晴敏が監修・脚本。原作は池上司のデビュー小説です。主演は映画は『ミッドナイト イーグル』以来久しぶりの玉木宏、共演に『ハンサム★スーツ』の北川景子、CHEMISTRYの堂珍嘉邦、『ミッドナイト イーグル』でも一緒だ...
「真夏のオリオン」みた。 (たいむのひとりごと)
観ない予定だったのだけど、招待券を貰ったので早々に鑑賞。一応千秋先輩贔屓の私なのだが、玉木君演じる倉本艦長から「昔は音楽を志し、オーケストラの指揮者のなるのが夢だった」・・なんてセリフが吐かれた時は、
「真夏のオリオン」試写会、感想。 (Beinthedepthsofdespair)
公式サイト福井晴敏氏と言えば、映画「ローレライ」が思い出されますが、アレは、かなーり突っ込み所満載な、でも、個人的には好きな映画ですけど、香椎由宇とか、で、今回も、福井晴敏氏監修、脚色で潜水艦もの、一つ間違えば、二番煎じになりかねない、そんな危険性も、...
真夏のオリオン (勝手に映画評)
池上司原作の『雷撃震度一九・五』を元に、終戦間近の日本潜水艦対米駆逐艦の死闘を描いた作品。これまではあまり見ないプロットで描かれた戦争映画になっています。 現代に伝えられたメッセージ(遺品)から過去を振り返ると言う手法は、やはり福井晴敏が係った『ローレ...
映画「真夏のオリオン」@ヤクルトホール (masalaの辛口映画館)
 客入りは空席が目立つ6~7割ほど。  映画の話 第二次世界大戦末期、日本海軍はアメリカ海軍の燃料補給路をたたくためイ-77をはじめとする潜水艦を配備していた。イ-77の艦長・倉本(玉木宏)や同作戦に参加する海軍兵学校からの親友、イ-81の艦長・有沢(堂珍嘉邦....
劇場鑑賞「真夏のオリオン」 (日々“是”精進!)
真夏のオリオンオリジナル・サウンドトラック「真夏のオリオン」を鑑賞してきました池上司の処女作『雷撃深度一九・五』を「ローレライ」「亡国のイージス」などの原作者で知られる福井晴敏の監修・脚色で映画化した戦争ドラマ。第二次世界大戦末期、恋人が綴ったある楽譜...
真夏のオリオン (映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP)
終戦まであと数日というのに、何もかもがこざっぱりしてまったく極限状況に見えない戦争映画だ。悲壮も絶望も、むろん希望も感じられない。亡くなった祖母が持っていた楽譜「真夏のオリオン」の哀しい由来を語る形で、米国海軍駆逐艦と決死の駆け引きを繰り広げたイ-77潜...
『真夏のオリオン』・・・オリオン座が時を超え導いたもの (SOARのパストラーレ♪)
これはまた一風変わった戦争映画だ。自己犠牲の精神を美談とすることもなく、あるいはそれを客観視して愚かさを嘆くというスタイルにもなっていない。そういうありがちな作品とは明らかに異なる作風に戸惑いも感じたが、これはなかなかよかった。
「真夏のオリオン」最後まで人間として生きるための戦いを続けた潜水艦艦長の生きる戦い (オールマイティにコメンテート)
「真夏のオリオン」は第2次世界大戦の終戦前夜まで繰り広げられた日本潜水艦とアメリカ駆逐艦との激しい攻防戦を描いた生きる戦いのストーリーである。1945年8月15日の終戦まで日本は潜水艦を投入し、人間特攻魚雷回天まで投入したが、その中でも最後まで回天を使...
真夏のオリオン (だらだら無気力ブログ)
池上司原作の『雷撃震度一九・五』を『ローレライ』や『亡国のイージス』、 『機動戦士ガンダムユニコーン』の原作者である福井晴敏が監修・脚色で 映画化。第二次世界大戦末期の太平洋上で日本海軍潜水艦と米海軍駆逐艦の 緊迫の攻防を描く。第二次世界大戦が終結して...
「真夏のオリオン」 理想の上司 (はらやんの映画徒然草)
本作の原案となっている池上司さんの小説「雷撃震度十九・五」はずいぶん前に読みまし
『真夏のオリオン』 試写会鑑賞 (映画な日々。読書な日々。)
現代。倉本いずみはアメリカからの手紙を携え、かつて日本海軍で潜水艦艦長を務めた祖父を知るただ一人の存命者・鈴木を訪ねる。手紙に同封されていた、古びた手書きの楽譜が、なぜ戦争相手のアメリカ海軍駆逐艦の艦長に渡ったのか…。第二次世界大戦末期。日本海軍は、最...
真夏のオリオン (りらの感想日記♪)
【真夏のオリオン】 ★★★★ 試写会(12)ストーリー 現代。ある日、倉本いずみのもとに、元米海軍駆逐艦艦長の孫が差出人の手紙が届く。またそ
「真夏のオリオン」 (みんなシネマいいのに!)
 戦時中に日本人の手によって書かれた楽譜「真夏のオリオン」が何故か64年の時を越
『真夏のオリオン』(2009)/日本 (NiceOne!!)
監督:篠原哲雄監修・脚色:福井晴敏原作:池上司出演:玉木宏、北川景子、堂珍嘉邦、平岡祐太、吉田栄作、鈴木瑞穂、吹越満、益岡徹試写会場 : ヤクルトホール公式サイトはこちら。<Story>現代。倉本いずみ(北川景子)はアメリカからの手紙を携え、かつて日本...
真夏のオリオン 演技過剰ながら・・・ (労組書記長社労士のブログ)
【 35 -8-】 予告編を見ながら「なんでみんな髪が長いのだろう」と不思議に思いながら、試写会が当たったら見に行きたいけど、お金を出してまではどうだろうと思っていた。 すると試写会には当たらなかったけど、無料鑑賞券をいただいたので、見に行った。  1945年夏、...
【真夏のオリオン】 (日々のつぶやき)
監督:篠原哲雄 出演:玉木宏、北川景子、堂珍嘉邦、吉田栄作、平岡祐太、吹越満、益丘徹、黄川田将也    きっと帰ると、オリオンの星に誓った。 「64年の時を超え、ある楽譜が日本に戻ってきた。 戦争を知らず祖父母から話も聞いた事がないいずみは、戦時
真夏のオリオン (Diarydiary!)
《真夏のオリオン》 2009年 日本映画 1945年の夏、潜水艦イ-77は倉本艦
「真夏のオリオン」完成披露試写会 (アートの片隅で)
ブログパーツならブログデコ!! 邦画の試写会としては珍しい国際フォーラムAホールでの大規模な試写会でした。 座席はほぼど真ん中の前から十数列目というかなり良い座席でした。 周りは玉木宏と堂珍嘉邦が占拠していましたけどね。 MCは、テレビ朝日アナウンサーの渡...
真夏のオリオン (伊東良徳のとき・どき★かるちゃ~)
 第2次大戦中最後に1隻残った日本軍の潜水艦の艦長の戦いと決断を描いた映画「真夏のオリオン」を見てきました。 封切り2日目日曜日午前中は、4割くらいの入りでした。 第2次大戦末期、連合艦隊は壊滅し、米軍の本土上陸を妨害するのは補給路に対する潜水艦攻撃だ...
真夏のオリオン (ダイターンクラッシュ!!)
6月22日(月) 18:15~ TOHOシネマズ日劇3 料金:1250円(有楽町のチケットフナキで前売り券を購入) パンフレット:600円(買っていない) 『真夏のオリオン』公式サイト 先ごろ俺の友人の友人であることを知った篠原哲雄監督作品。友人は、彼の映画を観ていない...
真夏のオリオン(2回目) (必見!ミスターシネマの最新映画ネタバレ・批評レビュー!)
[真夏のオリオン] ブログ村キーワード ↓ワンクリックの応援お願いします↓ 評価:8.0/10点満点 2009年60本目(55作品)です。 ついに60本に到達しました。 2009年に入ってまだ半年も経過していないのに、60本に到達するとは開始当初は考えもしませんでした…。 ...
真夏のオリオン(完成披露試写会) (必見!ミスターシネマの最新映画ネタバレ・批評レビュー!)
[真夏のオリオン] ブログ村キーワード ↓ワンクリックの応援お願いします↓ 評価:8.0/10点満点 2009年46本目(42作品)です。 完成披露試写会の招待券を知り合いから譲ってもらったので、6月13日の公開に先駆けて見に行きました。 場所は有楽町の東京国際フォー...
真夏のオリオン(2009) (佐藤秀の徒然幻視録)
公式サイト。池上司「雷撃深度一九・五」をベースにしている。英題:Last operations under the Orion。篠原哲雄監督、玉木宏、北川景子、堂珍嘉邦、平岡祐太、鈴木拓、吹越満、吉田栄作、益岡徹。太平洋戦争末期の末期、いつ日本が降伏してもおかしくない状況での沖縄東南...