週刊!Mac miniのある生活

テクノロジーのお話がメインです。何かお役に立てそうな情報を、紹介できたらいいなと思います。

久しぶりに小説を更新しました

2009年09月15日 | 連載小説:未完成放置中
おそらく、数人というレベルの読者数だと思いますが(苦笑)
随分放置してしまっていましたので、一応ご報告いたします。
もう一つのブログの方へ移転しておりますので、お時間のある方は、是非お立ち寄りください。

こちらからどうぞ。
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連載小説:タイトル未定 第八話(語り:中道 真希)

2009年05月03日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

アップルのiPhoneという携帯端末のことは、わたしも知っていた。
うちの会社がソフトベンダーだからということもあって、この手の機械には目がない人が多くて、発売日の翌日には、わたしと同じチームの佐藤チーフが自慢げに見せびらかしていた。
独特なインターフェイスを持っていて、いかにもアップルらしいという印象だったんだけど、それよりも崇がそれを手に入れようかどうしようか迷っていることを知っていたから、ちょっと興味があったのだ。

「真希も、一緒に見に行く?」
罪の意識がないというのは、本当の意味で悪魔的だ。
上野理沙がiPhoneを買って、それを崇に自慢したいと思うのは別に悪いことじゃない。
そして、それを崇が見に行きたいと思うのも、悪いことじゃない。
二人はAppleのファンなんだし、ごく自然なことだと思う。
でも、できればわたしが知らない間に、立ち話程度に終わらせてくれればよかった。
崇と上野理沙が楽しそうにiPhoneバナしてるのを傍観してるのはイヤ。
でも、それを一人の部屋で想像してるのなんて、もっと嫌。
だからといって「行かないで」なんて言いたくはない。
エスケープボタンのないダイアログみたい。
強制終了って、どうすればいいのかな。
すっかり追いつめられたような気になっていたから、「いや」と答えてしまった。
不機嫌そうに拒絶の意思表示をしなければいけないほどイヤだったわけではないんだけど、その言葉を聞いた崇の顔が、何ともいえず申し訳なさそうにしてたのが、さらに私をヘコませた。
崇は、いかにiPhoneが素晴らしく、見て触るだけの価値があるかという説明をしていたと思うけど、よく覚えていない。
わたしには「久しぶりに上野理沙に会いたい」としか聞こえてこなかった。
もう、いい。

どうして、そんな風に崇に八つ当たりしてしまったのか、よく分からなかったんだけど。
部屋を出て家に向かっている最中、崇から、字数制限を超えてしまって途中から読めない程の長文メールが送られてきた。
彼が表現できる全てで、わたしのことを好きだと伝えてくれていた。
それを読んだときに、はっきりと自覚できた。
わたしは、崇との恋愛に一種の依存症状を起こしてしまっている。
崇のいないこれからの人生はあり得ない。
ずっと、崇のことを感じていたい。
わたしのことだけを見ていて欲しい。
わたしだって、今までに恋をしたことはあった。
でも崇は今までと全然違っていて、わたしの気持ちの大切な部分に、これ以上ないくらいに心地良い感触を与えてくれる。
どこの誰に対してでも、はっきり宣言できる。
わたしは崇のことを、わたしの全てを懸けて愛している。

だから、上野理沙のことをどうにかしておかないと。
会ったことのない彼女のことを、悪く言うつもりはないんだけど。
でも少なくとも、わたしにとっては必要のない存在。
もう少し本音を言うと、余計な存在。
崇のことを大切な友人だと思っているのなら、そっとしておいて欲しい。
崇の気持ちを惹くようなことを、しないでいて欲しい。
わたしの心を押しつぶして、バラバラにするような真似をしないでいて欲しい。

ただ、着信音が違うだけの人。
ただ、彼が一番大切にしているものに共感している人。
ただ、普通よりちょっとだけ可愛らしい人。
崇の彼女はわたしで、上野理沙はただの友達。
そう思って、自分の心を落ち着かせようとしても、どうしても胸の閊えはとれなかった。

崇が私を誘って上野理沙の家に行こうとしていたとき、心の底から楽しそうにしていた彼の顔が、頭の中から消えなかったから。



(以下、第九話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第七話(語り:中道 真希)

2009年02月19日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

由実さんとランチを食べていた時に、気になっていたことを聞いてみた。
上野理沙って人、知ってます?
「仲良かったみたいよ、3人同じ大学で。って、ねぇ、どうかしたの?何かあった?」

別に何もない。
崇とは、本当に相性がいいと思う。わたしたちは、きっとこの先ずっと上手くいく。
自分の持っている「好き」という感情を、我慢してみたり、意図して打つけたりする必要がない。
気兼ねなく、自分がこうありたいと思う距離感を保っていられる。
もちろん、付き合い始めた最初の頃なんて、誰だってそんな風に思うんだろうけど。
電話を切るときに「おやすみ」を言うのも、メールのときによく使うトボケた語尾も、食事に行ったときにメニューを決めるのも、席を立つのも、部屋でキスを仕掛けてくるのも、キスとセックスの変わり目も、終わったあと、わたしの頭を手で引き寄せるのも、それぞれが「わたしのタイミング」で来てくれる。
相性が合っているということの本当の意味を、崇が教えてくれた。
だから、崇のケータイが「上野理沙」という名前を表示しながら、いつもと違う着信音を発したときも、わたしは素直に「誰なの?」と聞けたし、崇も「親友。今度紹介するわ。」と言えたんだと思う。

「写真で見たことあるけど、顔がちっちゃくて、黒いロングヘアで、可愛らしい感じの子だったわよ。」
崇と付き合ってたのかどうか、聞こうかどうしようか迷っている間に、由実さんから答えが出てきた。
「悠一の元カノよ、ご心配なく。」
別に心配はしてなかったんだけど。
「崇くんとは、タダの友達でしょ。パソコンオタクっていうの?二人。そういう意味じゃ、真希ちゃんフツーに入っていけるんじゃない?」
崇は、いわゆるマカーだから、きっと上野理沙もそうなのだろう。だとしたら、わたしの世界とは全然違う。普通の人にしてみたら、マッキントッシュでもウィンドウズでも同じパソコンだろうけど。Objective Cなんて触ったこともないし、そもそも正直、Mac信者は苦手。

崇がわたしのノートPCを手に取って、いろんな角度から眺めていたとき、どんなことを考えていたんだろう。
上野理沙と崇との世界があるのなら、わたしの世界はそれより外の世界なのだ。
わたしにしてみたら、OSの違いなんて取るに足らない問題なんだけど、きっとその壁を2人は感じていて、そのサインが、あの着信音なんだろうな。

嫉妬心とか、そういう感情はなかったんだけど、何となく悔しいと思った。
わたしの知らない崇を、上野理沙が知っていて、そこに強い結びつきがあるのが、イヤだった。



(以下、第八話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第六話(語り:西原 悠一)

2008年11月04日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

「それをあたしに言うために?こんな時間にわざわざ?飲んでるのに車で来たわけ?相変わらずのアホっぷりには呆れるわ・・・。まーとりあえず中、入る?」
理沙は、気分が高揚したとき、こんな感じでマシンガンの銃口から乱射された弾丸のように言葉を放つ。
理沙の声を、随分久しぶりに聞いたように思った。
そういえば、どのくらい会っていないのか。
ここに引っ越してきて何年になる?
「3年くらいやない?悠一、引っ越し手伝ってくれたの以来よ、多分。」
いや、3回目やな。
「そやったかな?」
2回目でも3回目でもどうでもいいのだが、理沙がそれを全く意に介していなく、翻って自分ははっきりと覚えているのが癪に障った。
崇と二人で、理沙の新しいパソコン(アップル社が作っている例の何か特別なモノらしいヤツ)を見に来たのだ。
多分、それが2年前とかそれくらいだろう。
それ、買ったのいつ?
そう聞こうと思って、言葉を飲み込む。
そんな話を振ったら、ガラステーブルの上に置いてある銀色のノート型パソコンについての話を、軽く1時間は聞かされるハメになる。
『パソコンじゃないの。マックよ、マック。』とか。
ああそうだ、マックだ、マッキントッシュだ。
懐かしいな。
部屋は変わっていても、絵の具の匂いと理沙の生活の匂いが混ざり合った、あの頃と変わらない空気が、そう思わせるのかも知れない。

「良かったやん、崇。あの子が選ぶくらいやし、多分おとなしくて、かわいらしい子なんやろな。あと、メガネ!メガネかけてない?どーなん?」
突っ込みどころ多すぎやわ。まず、30手前の男を「あの子」は可笑し・・・
「ねーメガネは?その子、メガネかけてるん?」
・・・いや、どうやったっけ?ちょっと覚えてないんやけど。
「悠一は、ホントに使えん子やなぁ。」
我が子を諭す母親を真似た口調に、思わず笑ってしまった。
しばらく振りに使った顔の筋肉が、引き攣って軽く痛みを感じる程、こみ上げてくる感情をそのまま顔に出してしまっていた。
理沙だ。間違いなく、あの頃のままの理沙だ。
オレたちにハグの習慣があったら、「懐かしいよ!」とか何とか言いながら、大きく手を広げて理沙の腕ごと抱きしめるところだ。
でも酔っていてすら、そんな恐ろしいことがオレにできる筈もない。
理沙がオレを拒絶するあの顔は、もう二度と見たくない。

崇って、メガネフェチやもんな。でもたしか、コンタクトやなかったかな、真希ちゃん。
コンタクトレンズを使っているかどうかなんて知っているはずがない。でまかせでそう言ったのだ。
わざわざそんな嘘を言う必要などある筈がないのに、どういう訳だか、口を突いて出た。
ちなみに、実際に中道真希はコンタクトレンズを使っているんだということを、後に崇に教えてもらった。
「ふーん。まきちゃんてゆーん。じゃあ、その子の家に遊びに行って、まきちゃんがコンタクト外して家メガネかけたりなんかしたら、崇、それだけで鼻血出して口まで真っ赤になるんやない?」
アハハというよりは、ガハハに近い笑い方で、理沙は楽しそうに笑った。
何かの気持ちを隠そうとして無理していると思ったのは、オレの思い過ごしだっただろうか。
理沙が冗談を言うのはよくあることだ。
でも、話の組み立て方に何となく違和感を感じたのだ。
崇に彼女ができたことを聞いて、動揺を宿した目を見られたくないから、目を閉じて笑っていたんじゃないのか。
肝心な時、理沙はいつも上手に自分の気持ちをすり替えて表現する。
本当の自分を見られないように。

でもそれは、オレが勝手にそう思いたかっただけなのかも知れない。
その方が、オレ自身をこれ以上傷つけなくて済むから。
気持ちをすり替えているのは、オレの方だ。
理沙を好きだという気持ちを人に、いや誰より理沙に気付かれたくなくて、狡賢く隠そうとしているのは、オレの方なんだ。



(以下、第七話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第五話(語り:西原 悠一)

2008年09月12日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

オレが、理沙にフラレた方だ。
別れたいと言ったのはオレだったのだが、フったのは確かに理沙の方だ。
あの時のオレには、アレを受け止めることはできなかった。

今なら、分かる。しかし、あの時には理解することができなかった。
理沙にとって、恋の相手はオレでなくてもよかった。
他の誰でも良いというわけではなかっただろう。ただし、オレは唯一の存在として認められていたわけではなかったのだ。
理沙にとって恋とは、心から欲望し希求する対象ではないのだと思う。
理沙は恋を信用していない。そういうところがある。
自分の母親との「愛」を諦めて、別の女との「恋」を選んだ父親に対する復讐の一種なのか、それとももっと根源的な原因に突き動かされているのかは分からない。
身体的なことのみならず心理的にも、本能的な欲求が理沙を揺すぶったとき、そこに理沙自身がブレーキをかけるのだ。
二十歳にも満たないオレに、それを理解しろというのは酷な話だったと思う。

そんな風にしかオレの方を見ることのない理沙の顔を、それでもオレは素敵だと思っていた。
あの時。
講義に遅刻し、隠れるようにして教室へ入って行った。
いつもオレたちが座っていた机の辺りを、中腰の姿勢のまま顔を上げて見たあの時。
理沙が崇と話していたあの時。
天からの遣いか何かのような、やわらかくて満ち足りた微笑を見るまでは、理沙の最高に素敵な顔を知っているつもりでいたのだ。
1mmも動けなくなる程美しいと感じたあの微笑は、バイクで転倒した時のような吐き気を催す程の悪感と同時に記憶から消えない。
怒りに震えることができなかったし、気持ちを放り捨てることもできなかった。
あの時に、ほとんど隙き間なく喪失感でいっぱいになった心は、今でも所々無惨な穴を晒して、塞がりきっていないままだ。
未練がましいと思うが、オレは今でも理沙のあの微笑に釣り合う価値を有するものを求めているんだと思う。

理沙にとって崇は、父親とも兄弟とも違う、しかしそういう種類の関係が与えてくれる温度を望む対象なんだと思う。
兄弟も姉妹もおらず、父親からは捨てられたに等しいと思っている理沙が、その代償を崇に求めたとしても不思議ではない。
無論、オレに理沙のことが理解るはずもない。
人の心は一時として同じ場所にとどまらないし、同じ形をしていない。
このオレの考えは自己勝手な推論に過ぎないかもしれない。しかし、断言していい。見当違いなどであるはずがない。
そうでなければ、オレが別れをきりだした時の、理沙の涙に説明がつかない。

崇は、自分という軸を動かさないくせに、強さを感じさせない。
只やさしいのとは違う。オレが唯一無防備で接することのできる親友だ。
崇のような男になりたいと思う。
そんな崇とは、何度か合コンをやった。
親友と一緒に楽しみたかったのが半分。
恋人の一人くらい欲しいだろうと思ったのが残り半分。
しかし、もしかしたら、理沙に対する復讐がわずかにあったかも知れない。
崇を合コンに誘った理由は、それぞれそんな割合で占められていただろうと思う。
こんな思いをさせられるくらいなら、そのどれも掃いて捨てられたのだが。

理沙の部屋に飲酒運転で向かいながら、その衝動を止められなかった。
行って話す言葉なんて何も思い浮かばなかった。
ただ、何かに焦る気持ちがどんどん膨らんできて、胸の辺りを鈍く強い力で圧迫し続けていた。



(以下、第六話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第四話(語り:佐々木 崇)

2008年09月08日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

「理沙のやつ、だいじょうぶやろか?」
悠一がそんなことを言い出すなんて、全く予想外だったので返答に困ってしまった。いや、僕が普段の僕だったら、予想出来ていた範囲だと思ったのかも知れないけど。
他の誰かじゃあるまいし、悠一はそういうことを言わないと思っていた。
そもそも、今回のコンパの幹事は悠一だ。
僕と中道真希をくっ付けるという以外に、どれほどの意味があったか分からないコンパを、自分の彼女と一緒にセッティングしたのは悠一だ。
それ、どういう意味?
「えーと。つまり崇がオレなら、何も心配せんわけよ。でも、崇は崇やんか。だから、理沙が心配というか、理沙に対する崇も心配というか、まーそんなとこやわ。」
意図しないで口をついてしまった台詞に対して、それを取り繕おうとするとき、大抵の場合、人はシドロモドロになるものだけど、この時の悠一はそんなイメージそのものという反応をした。

悠一は親友だし、今回のコンパをセッティングしてくれたんだし、きちんと報告しておくべきだと思った。
真希は、自然に生きている感じがする。
必要以上に僕に合わせることをしないけど、自分勝手な我がままを通さない。
まだ、彼女のことは何も分からないはずなんだけど、でも、分かる気がする。
真希はプログラマなんだけど、それは僕にとっては尊敬の対象でもあり、理路整然とした話し方は、頭の良さを感じさせて、本当にすばらしい。
真希も、僕のことを好きだと言ってくれたので、付き合うことにした。
というような話を聞かせている間、悠一は、僕の話に同調するでもなく、否定するでもなく、複雑な表情を含んだ笑みを浮かべて僕のことを見ていた。
「要するに、惚れたん?」
だから、そう言いよるやん。
そして、変な間をおいて冒頭の言葉だ。

前の彼女とは大学を卒業する少し前に別れたから、僕はそれなりに長い社会人生活を彼女がいないまま過ごしてきた。
でもそれは、理沙のためにそうしてきたわけじゃない。
理沙は、社会人になってから彼氏が出来たことがある。
一年とか一年半とかして別れてしまったけど、僕と理沙との間に、その前後で何かがあったわけでもない。
理沙が悠一と別れた後、何事もなかったのと同じように。
僕らは、ずっと親友だ。おそらく、これからも変わらず。多分そうだ。

「誤解せんで欲しいんやけど。真希ちゃんとのこと、良かったと思っとるよ。それは、嘘やない。」
とりあえず、ありがと。
「理沙のことは、多分、オレの考え過ぎ、つーか。あいつとはしばらく会ってないし、ちょっと理沙の輪郭がボヤけてるんやろ。」
悠一は、「輪郭」というところで、両方の手を使って頭から腰の辺りまでの人型をなぞるようにした。
嘘をつく人は大げさなジェスチャーをしがちだ、という話を聞いたことがある。
何か、上手いこと誤摩化そうとしとるよな?
でも、悠一は黙ったまま、半分くらいは残っていたはずの500ml入り缶ビールを飲み干した後、「悪い、由実を迎えに行く時間やわ。今度絶対、もっとちゃんと話すし、な。」
そう言って客人を残したまま、そそくさと出て行ってしまった。

僕と真希のことを喜んでくれる気持ちがあったのは間違いないだろうし、悠一は、馬鹿げた冷やかしをするタイプでもない。
理沙が、どうなると思ったんだろう。
このことが、理沙にどんな影響を与えると思ったんだろう。
それとも、悠一にとって壊して欲しくない何かを、僕が壊そうとしてしまっているんだろうか。
親友だと思っていた悠一のことも、理沙のことも、僕は何も分かっていなかったんだろうか。
理沙が僕に惚れているなんて、そんな風に思ってるんだろうか。
そう思いながら家路について、しばらく車を走らせていたんだけど、家に着く頃には、結局は真希のことを考えていた。
僕なら30分はかかるだろう文書量を、真希は10分とかそのくらいでメールしてくる。
ケータイでメールするのは苦手なので、こちらからの返信はぶっきらぼうな感じで許してもらっているんだけど、真希はかまわずにどんどんメールを送ってくる。
でも、電話なら話は別だ。帰るなり、すぐにベッドに転がって、充電器を繋いで早速電話する。
何時間もかかって話した僕の話を要約すれば、「どれだけ真希のことが好きか」ということだったし、それは真希の方も同じだった。
真希の声を聞いているだけで、空気の匂いや色まで変わって、身の回りのもの全てが祝福してくれているような気になった。
恋愛が与えてくれる、何物にも換え難い幸福感を、真希も僕も、五感の全てを使って感じていた。



(以下、第五話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第三話(語り:中道 真希)

2008年09月05日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

他でもない由実さんに誘われたんだし、断ると角も立つしと思って、行くと返事をした合コン。
メンバーは、由実さんと、由実さんの彼氏、そしてその友達に、わたしの4人。
正直、ちょっと、後悔していた。
由実さんは話も面白いし、好きな人。
でも、彼氏の悠一さんはあまり好きじゃない。
好きじゃないというより、苦手、ああいうタイプは、悪いというのじゃなくて。
多分、誕生日には、前々から欲しいと思っていたものをプレゼントしてくれるだろうし、他の記念日にも欠かさず、誰よりも早くメールをくれると思う。
ちょっと拗ねたフリをすれば機嫌を取ってくれて、休みの日には、色々なところに連れて行ってくれるのに違いない。
わたしにだって、そうされれば嬉しいという気持ちはある。
でも、やっぱり何か苦手。落ち着かない。
もしかして、同じようなタイプの人が来たらどうしよう。
会話に一瞬の澱みもなく、わたしからメールアドレスを聞きだして、解散したらすぐに「会えてうれしかった(ニッコリ絵文字)」なんてメールをよこしたり。
要するに、ちやほやされるのは居心地が悪い。
その場から逃げ出したくなる。
なんで、こんなに素直じゃないのかな。わたし。
そんな風に思いながら、でも遅れちゃ悪いと思って律儀に早く家を出たおかげで、随分一人で待っていたし、あの日のわたしはちょっとテンションが下がっていた。
彼の、わたしに対する第一印象は「暗くてノリの悪そうな女」とか、そんなところだったはず。
普通にしていても地味な見た目なんだから。

細く柔らかそうなストレートヘアに、ふわっとボリュームを持たせた髪型。
インテリっぽいセルロイドのメガネ。
「頑張ってお洒落した感」まで行き過ぎず、グダグダに落ちる一歩手前で踏みとどまっている服のセンス。
もっと普通の女の子だったら、「タダの人」としか感じないかも。
実際、わたしもそう思ったんだけど、でも好ましい。
初対面の男の人が必ずするような、わたしを品定めする目線を飛ばしてこなかった。
なんとなく救われた気分になった。
今にして思えば、わたしに話しかける時に、少し照れたように黒目をクルっと動かすのが可愛かった。
でもその時には、まさか、そんな仕草を好きになるなんて思ってはいなかったんだけど。
わたしと、佐々木崇との出会いは、ちょっと洒落た創作料理を出す居酒屋で。
ロマンティックで、ドラマティックな展開の予感なんて、まさかまさかという感じで。
予定を予定通り消化して終わった。

もしわたしが日記か何かを付けていて、その日のことを書いていたら。
---合コン参加。意外にも楽しく飲んで、おつかれさま。---
とか、その程度のことだったと思う。
由実さんと悠一さんが一緒に帰って行くのを見送って、崇とわたしがそれぞれ別のタクシーに乗り込む時に、「おやすみなさい」と言った崇の、酔って潤んでいた細く小さめの目のことを書いてはいないだろう。
わたしの場合、恋心を抱くというプログラムを走らせるためのコードが、そのために記述されたものであったと気付くのは、後になってからのことが多い。
なんて思ってみたけど、コードなんて言い出すのは職業病っぽくてイヤだな。
せっかく、恋する乙女な雰囲気でいられたところだったのに。



(以下、第四話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第二話(語り:佐々木 崇)

2008年08月31日 | 連載小説:未完成放置中
【第一話は、こちらへ】

理沙より、もっとストレートな表現で親友と呼べる西原悠一は、中学で出来た友人の中で、唯一今でも付き合いのある男だ。
悠一は、よくモテる。
背が高く筋肉質な体格をしていて、月に一、二度程度サッカーに興じる悠一は、一年中日焼けしている、絵に描いたようなスポーツマンだ。
なのだけど、悠一がモテる理由というのはそこではなくて、ちょっと違うところにポイントがある。

「んでね、その子が合コンセッティングして欲しいって言ってるらしいんだわ、来ない?」
最近、悠一の彼女が勤める会社に転職してきた同僚のために、そんな話が持ち上がっているらしい。
ああ、そか。悠一の今の彼女って事務員やっとったんや?
彼女も把握できてなくて親友と呼べるのかどうか怪しいものだとも思うけど、今どの子が悠一の彼女で、どの子がただの友達で、どの子が友達以上彼女未満なのか、正確に把握できていないのは、同じ彼女と長続きしない悠一の所為というべきだ。
「相変わらず、趣旨を外したとこ突っ込んでくるな。」
放っとけって。
「由美がね、崇が良いと思うって。アイツけっこう男目線的に女見れるから、多分良い話やと思うし。」
いや、良い話だろうが悪い話だろうが、断る理由はないんだけど。
「おけ、段取りできたらメールする。いーね、楽しくなってきた。」
悠一は例えば、お前彼女いないから紹介してやるよ、みたいなことを言わない。
期待して待ってろよ、みたいなことを言わない。
オレが女の作り方教えてやるよ、みたいなことも言わない。
彼女がいるかどうかなんて、人生を楽しむ上で大した問題ではない、という態度で合コンの話を持ってくる。
そういう居心地の良さを持っている。
きっと、悠一と付き合いたいと思う女の子たちは、僕が感じているのと同じような居心地の良さを感じているんだと思う。
だから、悠一はモテるのだ。
来るもの拒まずという尻の軽さがなければ、と思うけど、悠一はその辺りについての他人の評判に全く無頓着という態度なのだ。

ちなみに、悠一と理沙と僕は、同じ大学の同じクラスにいた。
入学してしばらくすると、悠一は理沙と付き合い始めたんだけど、年度が変わる頃にはもう別れていた。
僕が理沙と初めて喋ったのより、悠一が理沙を彼女にする方が早かったので、僕は悠一と付き合うより前の理沙を知らない。
付け加えれば、二人が別れた理由も僕は聞いたことがない。二人とも何事も無かったという風にしていたので、特に理由を聞くきっかけがないまま今に至っている。
そんな三人は、大学を卒業してからも仲良くやってきてるんだけど、最近は三人で一緒に何かをすることは無くなってしまっている。
もし僕に、僕らの年齢に相応しく、将来を見据えた彼女が出来たりしたら、三人の関係はそのままフェイドアウトしてしまわないかな、という想像を巡らせてみたけど、何となく理沙に失礼な気がしてやめた。
それより、2対2という頭数は合コンという範疇に入るのだろうか。合コンというよりは、紹介に近いと思う。
悠一が段取りする時は、大抵大勢で賑やかにやる。その方が全く悠一らしい。
他の誰かじゃなくて、僕に紹介したい女の子って、どんな子なんだろう。
そんなことを考えながら、その日はいつもより遅めに眠りについた。



(以下、第三話へつづく)
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連載小説:タイトル未定 第一話(語り:佐々木 崇)

2008年08月28日 | 連載小説:未完成放置中
---クソドザ氏ね---
上野理沙は強烈なMacintosh信者で、僕の友人で、先生でもある。
具体的に理沙から何かを教えてもらっているわけではないんだけど、理沙は僕にとってMacの師匠だ。
「相手にしなきゃ良いのに、相変わらずやんね。」
久しぶりに理沙の部屋に遊びにきている。
まず最初にすることといえば、理沙のMacを触ることだったりする僕も、やっぱりマカだ。
ちょっとした用件を引き受けたことがあって、理沙のMacのログインIDもパスワードも知っているのだけれど、でも僕らは付き合っているわけじゃない。
僕が彼氏だったとしたら、理沙は不用意にも、僕にIDやパスワードを教えることはしなかったんじゃないかな、と思う。
銀行から預金を引き出されることを怖がる必要のある並の友人ではないけれど、自分を情けなく見せてしまう種類の気恥ずかしい事実を隠しておこうとする必要もない、ということ。
「勝手に人のMac触らんとってくれる?」
実際には嫌がる素振りを見せずに、僕が買ってきたロールケーキの箱を開けた後、ペットボトルのキャップをプシュッといわせながら、理沙はこっちを向いた。
「だって、ムカつくんよ。コイツ。」
理解らないわけじゃない。
理沙が指し示すそこには、どうしようもない嫌悪感に満ちた酷いアンチMacな書き込みがあった。
「うん、そうやな。」
僕も自分の部屋でこの書き込みを見つけていたら、反射的にキーボードを叩いていたように思う。
でも、理沙の部屋で理沙と一緒にいる今は、そんな感情が起こらない。
自分は今、「そっち側」には居ないから。

「ね、崇。ヒドいと思わん?」
理沙のバイト先の上司がいかに段取りが悪く、気が回らず、イヤな言葉遣いをするか、ということを延々聞かされるのは予想の範囲内だ。
そういう鬱憤を晴らしたくて、僕を呼んだのに違いないと思っていたから。
理沙が新しいアップル製品を買ったという話は聞いていないし、他に思い当たるとすれば、描きかけの絵に何らかの「躓き」が出来てしまっているのかもしれない。
辞めちゃえばいいやん。
「うん、そうする。明日から、もう行かない。」
その言葉が本当なら、理沙はもう何十回とバイト先を替えていなければいけない。
理沙にとっては、言葉の持つ意味より、言葉の持つ感情の方が重要なんだろうと、そんな風に思う。
だからこの場合、「今度の休みに、服を買いにいく。」であったとしても、理沙にとっては殆ど同じ意味なのだ。

僕の勤める会社から、理沙の住むワンルームマンションはすぐ近くだ。
そんな事情もあって、異性の友達としてはやや多い頻度で理沙の部屋に来る。
共通の趣味を持っているから、ということもあるし、なんとなくウマがあうのだ。
何かの間違いがあって、泊まっていくことにでもなったらどうしようか、という妄想を抱くこともあるけれど、実際には僕は帰っていくし、もし泊まったとしてもスヤスヤと眠る理沙を見ながら、しばらくは寝付けないというだけだろう。
二人の関係というのは、そういうことになっている。
少なくとも、僕はそう思っている。



(以下、第二話へつづく)
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