インドで作家業

ベンガル湾と犀川をこよなく愛するプリー⇔金沢往還作家、李耶シャンカール(モハンティ三智江)の公式ブログ

ダブルネームの利点

2008-04-22 23:47:06 | 私・家族・我が安宿
私は長いこと、自分の名前があまり好きでなかった。第一子に女児を授
かった父が喜んで命名した「三智江」とは、中国の故事、「三つの知恵」
に由来していることを、生存中聞いたことがある。それなら、なんで三
知恵でないのだと、長いこと腑に落ちなかったのである。知と智は同じ
意味だから許せるとして、最後のえを「江」という漢字にした意味がわ
からなかった。俵万智というベストセラー歌人(くしくも、同じ高校出
身)が出てからは、万の知恵にはとうていかなわないなあと、おおいに
気後れ感を覚えずにはいられなかったものだ。

             

最近とあるメルマガを読んでいて、日本では三というのはとても大事な
漢字とあって、「三人寄れば文殊の知恵」とのことわざを引き合いに出
して述べていた。そういえば、三大とか、三聖とか、偉大な要素はすべ
て三という数字に含まれるということだなあと思い当たる。三顧といえ
ば、三度ではなく何度も振り返るという意味。三=無限ということでも
ある。で、はたと悟ったわけ、そうかそうか、三というのは瑞兆のシン
ボルなんだなと。でも、最後の江がわからない。ふと揚子江を思い浮か
べ、うーん河かあ、なら悪くないなあと納得。辞書で当たると、江は
湾、とか、入り江とある。ついベンガル湾に直結、考えてみるに、この
江に深い意味はなく、当時の女児の名前の風潮が、最後の文字がえの場
合、江という漢字が多かっただけのことかもしれない。

                     

それはさておき、私自身、長いこと、こうした漢字を当てるのは、私の
みで、日本国中捜しても三智江という名はただ一人しかいないと思い込
んでいた。何せ、ほとんどの人がこの最初の漢字、三を美、と間違える
のだ。美智江とか美智恵と誤って記述されてしまうのだ。あのー、わた
し、美しくないんですけどーという苦い思いをそのたび味わってきたも
のだった。

               

そういやあ、三智江という名前はほんとうに日本国中ただ一人なのだろ
うかとふと疑問に駆られた私は、早速ネットを当たってみた。すると、
出てくる、出てくる、私以外にも数名、唖然、であった。ただし、姓と
マッチさせれば、やはり日本全国唯一ということになるけど。なあんだ
という感じ。私一人のユニークな名前と勝手に決め込んでいたのだが。
ちなみに、「荒木三智江」で検索すると、「モハンティ三智江」で出
た。これはいうまでもなく、本を書いたせいである。でなければ、社会
的に無名の一人(いちじん)を検索して、出るわけがない。一冊本を書
いただけでも、ネットに乗るのだから、その威力はたいしたもんであ
る。
       

さて、女性は結婚すると、いまさらいうまでもないが夫の姓に変わる。
今は旧姓も認められているようだが、たいていは夫姓を名乗るのが、
日本では習わしとなっているはず。いったん姓が変わると、旧姓は捨て
たも同然となって、独身時代の友人に連絡をとるときカッコ付きで記述
するのみで、普段は新姓で通すのが当たり前。
が、私は例外で、国際結婚したため、巷間に通用する二つの名前を持つ
ことになった。カタカナ姓がこちらでは一般的だが、実は、今なお日本
国籍を保っているため、戸籍上は旧名のままなのである。で、荒木姓は
いまだに健在、堂々とまかり通っている。何せ、申請書などの署名は必
ずMichie Arakiだし、日本領事館との交流においても、荒木で通してい
る。が、国際結婚者と一目瞭然に判明するカタカナ混じりの名前はペン
ネームとして使うにはなかなか便利で、インド関連のノンフィクション
記事を発表するときは、モハンティ三智江を使うのがいつとはなしに習
わしとなった。

なにやら姓名判断によると、このモハンティ姓とは、億万長者になる強
運を持った大吉名とかで、ほんとかなと半信半疑ながらも、にんまり。
私同様、息子も無論、二つの名前を所有、日本の戸籍上は「荒木サミー
ル理秀」となり、インド名は「サミール・リシュウ・モハンティ」であ
る。
インドで生まれ育った息子が常日頃使用するのは無論カタカナのみの後
者。しかし、パスポートが日本国籍なので、サインだけは、何かと使う
機会が多いため、一応日本語特訓しておいた。漢字の書き順がめちゃめ
ちゃだけど、なかなか様になった日本名を書けるようになった昨今であ
る。

                  

*    *    *

★コラム
印パ国名をもつ兄弟

印パボーダーに住む大工の幼い兄弟は、兄が「バーラト」(インド)、
弟が「パキスタン」というまれな命名で、話題を呼んでいる。シク教徒
というこの大工さんは1984年のゴールデンテンプル暴動事件で同教徒が
多数殺戮されたことを憂え、平和の祈りを込めて名づけられたとか。
バーラトはともかく、弟のパキスタンは当初、村人の揶揄の種でもあっ
たそうだが、今ではみなに受け入れられ、そのユニークさが村外にも知
れ渡って、しきりに話題を呼んでいるとか。

仲のいい兄弟を真似て、長年犬猿の仲だった印パ関係も改善されること
を祈るばかり。

                           




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