偽装の彼らの

偽装の彼らの

まもなくウィル

2017-06-15 11:00:07 | 日記

ニッチやその住民がまったくもってあずかり知らない、何か不可解なものを感じさせたという。その風変わりな点は、ウィルバーがしゃべる内容や、ウィルバーの使う単純な言葉などにあるのではなく、その口調や、声を生みだす発声器官にどことなく結びついているように思われた。顔つきさえも、おとなびていること數碼通寬頻で驚かされるものだった。母親や祖父とおなじ貧弱な顎をしていたものの、早ばやと形もととのってがっしりした鼻は、ほとんどラテン系といってもいい、大きくて黒い目の表情とあいまって、まるでおとなのような見かけと、まったく尋常ならざる知性の雰囲気をかもしだしていた。けれど聡明そうな見かけにもかかわらず、ウィルバーははなはだ醜かった。ほとんど山羊《やぎ》を思わせる動物じみたところが、分厚い唇にも、大きな毛穴のある黄色がかった肌にも、縮れたこわい髪にも、妙に長い耳にも認められた。バーは母親や祖父さえよりも断固として嫌われるようになり、老ウェイトリイにまつわるかつての魔術譚がむしかえされるばかりか、環状列石の只中で大きな書物を腕にかかげて広げ、ヨグ=ソトホースという慄然《りつぜん》たる名を叫ぶや、山が鳴動したとかいう話が、ウィルバーについての憶測すべてに彩《いろど》りをそえるようになったのだった。犬という犬が少年を毛嫌いするので、ウィルバーは吠えたてる犬に襲われないよう、常にさまざま身を護る手段を講じなければならないほどだった。

 一方、老ウェイトリイは牛を買いつづけたものの、その数を多少なりともふやすことはできずにいた。材木を切って、いままで使われなかった部屋の修理もはじめていた――家は尖《とが》り屋根のある広びろとしたもので、裏の端航空が岩の多い山腹に完全にもぐりこんでいて、いままでは一番荒廃の度合の少ない一階の三部屋だけで、老ウェイトリイと娘には十分だったのだ。かなりきつい作業をやりとげたことからして、老人には途轍《とてつ》もない体力がたくわえられていたにちがいなく、あいかわらずときとして気違いじみたことを口にしていたものの、その大工仕事の出来栄えは、確かな計算のうえになりたっていることを示しているようだった。ウィルバーが誕生してまもなく作業は開始され、数多くある道具小屋の一つが急に整頓され、下見板をはられ、頑丈な新品の錠が備えられるにいたった。そしていままで使われなかった二階の修理をする段になると、老ウェイトリイは徹底した職人の腕を発揮した。気違いじみたところがあらわれているのは、修復した箇所の窓という窓をすっかり板でふさいでしまったことだけだった――もっともわざわざ修理をすること自体が気違いじみているのだと、そう断言する者も多くいた。さほど不可解なことではないが、新しい孫のために下の部屋が改装されている――その部屋は何人かの訪問者が目にしているものの、厳重に密閉された二階に通された者は誰もいない。老ウェイトリイは孫の部屋に何段もある頑丈な高い棚を設け、かつてはさまざまな部屋の隅に雑然と積みあげられていた、完全なものもあれば一部が失われているものもある崩れかかった古書を、どうやら注意深い配列でならべるようになった。
「わしもすこしは利用したがな」錆《さび》ついた台所のストーヴで糊を準備し、破れたゴチック書体のページをつくろいながら、老ウェイトリイはそんなことをよくいったものだった。「あの子はわしよりも利用できるはずだろうて。できるだけ身につけるべきなんだ。こういったものからしか学びとれんのだからな」
 ウィルバーが一歳七ヵ月になると――一九一四年の九月のことだが――体格といい、することといい、ほとんど人をた數碼通月費まげさせるほどに生育していた。四歳児くらいの背丈があり、しゃべりかたも流暢《りゅうちょう》で、信じられないような知性を感じさせるものだった。野原や山を自由に駆けまわり、母親が出歩くときはいつも一緒についていった。家にいるときは、祖父の書物に記されている奇妙な挿絵や図を熱心にな

ジャンル:
ウェブログ
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 別に診てもら | トップ | しなやかな太い »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。