偽装の彼らの

偽装の彼らの

別に診てもら

2017-05-15 11:29:44 | 日記

わたしが狂っていると思う必要はないんだよ、エリオット――これより奇妙な偏見をもっている者は大勢いるからね。自動車に乗ろうとしないオリヴァーのじいさんを、どうして笑わないんだ。わたしがあの地下鉄が嫌いでたまらないとしても、それはわたし個人の問題で、きみの知ったことじゃない。それに、ともかくタクシーに乗ったから、ここへ早く来れたじゃないか。地下鉄を利用していたら、パーク通りから丘を登らなきゃならなかったんだからね。
 去年きみに会ったときより神経質になっているのは、自分でもわかっているけど、う必要はないよ。理由はいろいろとあるし、ともかく正気でいるのを幸運だと思っているんだから。どうして第三度だなんていうんだね。きみも以前はそんなに詮索好きじゃなかったのに。
 ああ、どうしても聞きたいというんなら、仕方がないだろうな。ともかくきみには話しておくべきかもしれない。わたしがアート・クラブと疎遠になりはじめて、ピックマンともつきあわなくなったのを聞いてから、きみはまるで胸を痛める親のように、ずいぶん手紙を送ってくれたんだからな。ピックマンが行方《ゆくえ》をくらましたことで、いまではときどきクラブに顔を出しているけど、わたしの神経はもう以前のようなものじゃなくなっているんだ。
 いや、ピックマンがどうなったか知らないし、想像したくもないね。わたしがピックマンと絶交したのには、何か内幕でもあると思っているんだろう――それがあるからこそ、ピックマンがどこへ行ってしまったのかなんて、考えたくもないんだよ。何がわかるか、警察に調べさせればいいさ――ピックマンがピータースの名前でかりていた、ノース・エンドの古い家のこともまだ知らないことからして、そう多くのことはわからないだろうがね。わたし自身、その家をもう一度見つけられるかどうか、まったく自信がないんだ――いや、真昼でさえ、見つけようとしたことはない。ああ、ピックマンがその家をかりていた理由は、知っているというか、たまらないことだが、わかっていると思うよ。いまようやくわかりかけているんだ。きみもこの話を聞き終わるまえに、どうしてわたしが警察に知らせないのか、その理由が理解できるだろうな。警察に知らせたりしたら、案内させられるに決まっているけど、たとえはっきりした道順を知っていたとしても、わたしには二度と行けやしないんだから。あそこにあるものがいたんだ――だからわたしはもう地下鉄を利用することができないし、(こんなことをいうとまた笑われるだろうが)地下室におりることすらできないんだ。
 あのリード先生やジョウ・マイノーやロスワースといった、こうるさい婆さん連中とおなじ理由で、わたしがピックマンと絶交したわけではないことは、きみもわかっているだろう。わたしは病的な絵画に驚いたりはしないし、ピックマンほどの

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