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朝・日間の未来に向けての展望や、在日朝鮮人の若い世代に民族性を養育するためには、略奪文化財問題を伝えて解決!

2017-07-14 | 朝鮮新報より掲載

連載「奪われた朝鮮文化財、なぜ日本に」を読んで/康成銀

日本社会に知らしめた志の高さ

かつて筆者の南永昌氏は、翻訳書「失われた朝鮮文化―日本侵略下の韓国文化財秘話(新泉社、1993年。原書は李亀烈著「韓国文化財秘話」韓国美術出版社、73年)を出したばかりでなく、日帝の朝鮮文化財略奪の犯罪行為を追って、その調査結果を朝鮮時報の連載記事「朝鮮文化財、なぜ日本に」で明らかにした(95年1月23日から翌年1月22日まで23回)。

筆者の仕事は、それまで日本社会において知ることができなかった日帝時代の朝鮮文化財略奪の事実を告発し、世の関心を集めた。評者が、専門外ではあったが朝鮮の文化財問題に直接かかわったとき、最初に読んだのが筆者の論著であった(拙論「日本に散在する朝鮮考古遺物―朝鮮総督府の古蹟調査事業に伴う搬出遺物を中心に」「朝鮮大学校学報」日本語版、第7号、2006年)。

筆者はその後も調査を継続し、新しい知見を加え、満を持しての今回の連載となった。植民地時代に朝鮮の貴重な文化財が、「一体、誰の手によって持ち去られ、いま、それはどこにあるのか」。筆者が、この問題にかかわろうと突き動かされたのは、「文化遺産を奪われ蹂躙されたことに対する民族的怒り」と、「在日の私たちがその由来を明らかにし、返還させるために少しでも寄与しなければならないという使命感」もさることながら、朝・日間の未来に向けての展望や、在日朝鮮人の若い世代に民族性を養育するためには、略奪文化財問題を伝えて解決していくことが大事なことであると確信したからである。

朝鮮総督府が行った、文化財略奪政策である古墳調査報告(1920年)

このような問題意識と新しい知見から始まった本連載は、2015年3月から約2年間、43回に及んだ。まず、19世紀末から日本敗戦までの日帝の国家的な植民地政策としての文化財略奪政策の推移を俯瞰している。日清戦争時の朝鮮王宮所在の文化財略奪、韓国統監・伊藤博文および朝鮮総督・寺内正毅の略奪行為、朝鮮総督府が進めた「古蹟調査事業」、民間の日本人によって奪われ破壊された事実の一部を明らかにした。

次いで、古書、陶磁器、石造物、仏画、仏像、古墳内の考古遺物、朝鮮鐘などの略奪、これにかかわった学者らの植民地的な「学術意識」、民間人コレクターのよこしまな独占欲などをさまざまなエピソードを加えながら告発し、これら文化財の現日本所在地をできる限り明らかにしている。しかし、「その実情は底なし沼のように深く、しかも秘密のベールに覆われて全貌を明らかにすることは不可能」だと、筆者が嘆息を洩らさずにはいられなかったほどであった。「官民総出で略奪、今は所蔵ひた隠し」する「日本の隠蔽体質が壁」となっているのである。

最後に筆者は、朝・日政府間の文化財返還交渉に期待をかけ、「文化財に関心を持ち、日本各地に人知れず、置かれている民族の魂、文化財の新たな発見とその返還運動が幅広く展開されることを願ってやまない」と、万感の思いを込めて締めくくった。

最近の文化財返還事例

国際社会において、文化財現保有国(旧宗主国)と返還請求国(被植民地国)間では長年文化財返還をめぐって激しい論争がたたかわされてきた。保有国側が合法的取得や現在の所有権を主張するにとどまらず、文化国際主義や保存技術上の優位、博物館やコレクションの維持などさまざまな根拠を立てて返還要求に応じようとしない一方、請求国側はあくまで文化財取得と占有の不法性・非道徳性を主張し、民族固有の文化的アイデンティティの回復を強く訴える形で返還を強く求めてきた。

現在では、70年ユネスコ条約のような法的枠組み、国際博物館会議(ICOM)の倫理規定のような道義的枠組み、コロニアリズム(植民地主義)の克服をめざす国際社会の動きなど、多くの要因の相互作用により文化財の原状復帰、返還に大きな進展が見られるようになった。

ここ10年間ぐらいを見ても、スペインから139件の考古遺物がニカラグアに返還、ドイツからイラクへシュメール古遺物の返還、ロンドン大学からエジプトへ約2万5千点の古遺物の返還、エール大学からペルーのマチュピチュ遺物の返還などがある。在日朝鮮文化財でも、「朝鮮王室儀軌」、「李芳子女史服飾」、寺内文庫の書画類134点、北関大捷碑、「朝鮮王朝実録」が引き渡された。2010年には、民間の日本人と在日朝鮮人が「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」を結成し持続的に運動を展開している。

文化財の原所有国への原状回復、返還という国際法の原則は、今日ではすでに国際慣習法規則として確立されているが、現実的には当事国間の交渉、協定を通じた多角的な模索が必要となるだろう。その多角的な返還方式として、(1)条件付き返還、(2)同種、同質、同条件の物件交換、(3)一定期間交代しながら共有する制度、(4)長期貸与、などがあげられる。これらの方式は妥協的ではあるものの、実際においては実質的な返還とみなされ、文化財返還の国際慣行上の原則を強化させるものとなりうる。

在日朝鮮文化財返還問題を解決するためには、まず略奪文化財の来歴、流出の経緯などの事実を明らかにする地道な努力が必要である。また文化財問題を引き起こした背景として、日本の植民地主義の清算という歴史的視点が大事である。1965年の「韓日基本条約」・「文化財協定」では植民地支配責任および文化財返還問題があいまいに処理された。朝・日国交正常化交渉ではこの轍を踏まないことが強く求められている。

在日朝鮮文化財の所在と流入経路を調査し、その不法性・非道徳性を明らかにした本連載は、略奪文化財返還問題の解決に大きく寄与することだろう。必ずしも狭い意味での専門職でもない筆者が、本連載を続けてこられたのは彼の志の高さを示している。ぜひ、質の高い入門書ともいうべき本連載を一冊の本にして、広く日本社会に知らしめることを願うばかりである。

(朝鮮大学校朝鮮問題研究センター長)

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