人間の生活には、効率だけを重視するなら、けっこうムダと思えるものがたくさんあります。
お正月の門松がなくても、新年を迎えることはできます。
年賀状がなくても、お正月は過ごせます。
桜がきれいに咲かなくても、新しい学年になれます。
風鈴があろうがなかろうが、気温は変わりません。
秋の紅葉を眺めなくても冬はやってきます。
教室に花が生けてなくても授業はできます。
校内に生徒の作品が飾っていても飾っていなくても、美術科の評価とは関係ありません。
しかし、これらのものがなくなった生活を考えてみてください。
なにかさびしくないですか。
なにか味気なく思いませんか。
なにか心がすさんでくるのです。
教室にごみが落ちていれば、拾いごみ箱へ捨てます。
黒板がチョークで真っ白になっていたら、ていねいに黒板消しのチョークをとり、何度も黒板を消すときれいになります。
雑然とロッカーの上に、個人のカバンがおいてあると、ロッカーの中にしまうとか、机の横にかけます。
そのままにしておくと、子どもたちはその環境に慣れてしまいます。そして、心はどんどんすさんでいくのです。ごみが落ちていても平気になり、ますます教室は汚れていきます。
私たちは、日々の忙しさに流されて、おざなりにしてしまうことがけっこうあるようです。
しかし心が穏やかになるような工夫を考えて実行してみると、ムダと思われることが輝きだし、その価値を放つのです。
一見ムダと思えるものがあるから情緒が生まれます。心に潤いができます。よって、人の心がなごんでくるのだと思います。