細野豪志ブログ
衆議院議員 細野豪志の活動報告です
 



フランスでのすべての日程を終えて、帰国を待つのみとなりました。一週間の日程を振り返りながら、エネルギー問題について報告します(写真はエネルギーの国際的な大御所IEAのマンディル事務局長、背景はエッフェル塔)。

フランスは、発電の8割を原子力に頼る「核大国」(核兵器も含めて自称しています)です。3月1日のメルマガにも書きましたが、地球温暖化の現実を前に、原子力にはフォローの風が吹いており、フランスもその例外ではありません。

振り返って、わが日本。今回の臨界事故隠蔽に象徴されるように、「原子力は本当に大丈夫か?」という国民の声に、政府と原子力発電を行っている企業が応えきれていません。

再生可能エネルギーを重視する立場から、原子力を過渡的なエネルギーと位置づけてきた私が、考えを整理する必要性を感じたきっかけは、実は環境ではなくて、核兵器と原発の国際的な拡散です。今回の渡仏の目的は、その方向性を決めたかったからです。

今回、フランスの国会議員、関係省庁や国際機関の幹部、民間事業者と会って、相当突っ込んだやり取りを行うことで、私なりに方向性を出すことができました。


原発を巡る目下の国際的な最大の課題は、核燃料サイクルの確立にあります。ウランの高騰が、その流れに拍車をかけています。原発を開始する、もしくは初期段階の国は、「ウランの発掘から、濃縮・加工、発電・送電・売電」に至るフロントエンドに関心があり、原発の規模の拡大している日仏英米などでは、「核燃料の再処理、MOX燃料化、(再び)濃縮・加工から発電」に至るバックエンドへの関心が高まっています。

フランスは、核燃料サイクルをほぼ確立している唯一の国です。その中核的な役割を担っているのが、原子力庁(CEA)とAREVA社です。原子力庁は、日本で言えば公社のよう組織で、原子力発電の推進役だけでなく、技術開発の実施、核の軍事利用まで所管する人員1.5万人の巨大組織です。AREVA社は、ウランの採掘から再処理、MOX燃料化まで、核燃料サイクルを実施しているフランスの国策会社で、(政府の持ち株比率は役8割)。こちらも、全世界で6.1万人の人員を抱えています。

フランスの原子力政策の最大の特徴は、国が全責任を持って、推進役を担っていることにあります。日本との違いとして、知事が官選になっていることも手伝って、自治体の反発が少ないことがあるのですが、私は、国民的議論の重要性を強調しておきたいと思います。政府と議会の姿勢には、大いに学ぶべきところがあります。

間もなく結果が出ますが、ロワイヤル候補は、選挙運動中に原発について何度か政策変更の可能性に言及しました。それに対し、原子力を担当する官僚も、原子力庁の担当者も、「そんなことが出来るわけがない」と、自信満々でした。分厚い官僚機構(これは評価の分かれるところですが)と国民の信任も、原発の推進に重要な役割を果たしています。


フランス南部・マルクールにあるAREVA社のMELOX工場(MOX燃料工場)を見学することが出来ました。ちなみに、近郊は、風光明媚なリゾート地、そしてワインの産地として知られているのですが、本題から外れますので、ここではおきます。

特筆すべきは、AREVA社が国際的なエネルギー需要に応えていることです。MOX化されている燃料の7割はフランス国内、3割は海外のものです。中部電力を初めとした日本の電力会社も、ここでMOX燃料の供給を受ける契約を結んでいます。AREVA社は段階的にその処理レベルを上げていますので、海外への燃料供給は今後更に増えることになります。これは、ラ・アーグの再処理工場も同様です。

興味深いのは、米国の核弾頭に搭載されていたプルトニウムのMOX燃料化を成功したことです。その燃料は、すでに米国の原発で使用されています。核兵器から出るプルトニウムのMOX化は、使用済み燃料のそれと変わりませんので、核軍縮が加速すれば、ここがその拠点となる可能性も秘めているわけです。

日本でも、青森県の六ヶ所村に再処理工場とMOX燃料工場が出来ますが、国内処理に特化していますので、フランスとは根本的な位置づけが異なります。原子力庁の国際部門の担当者には、「自国の核兵器のMOX化もやったらどうか」とチクリと言ってきましたが、実績を前にすると説得力はイマイチです。もとより、NPT体制に象徴される国際的な枠組みは、決して平等なものではありえませんが。

6カ国協議の最大の焦点は、北朝鮮の核開発能力の無力化です。それすらも危ういですが、仮に北朝鮮が約束を履行したところで、すでに保有しているプルトニウムと濃縮ウランをどこかで処理しない限り、わが国の脅威は去りません。再処理・MOX燃料化をやるのであれば、そこまで視野に入れるべきではないか。核保有国のフランスより、Mox for peaceというキャッチフレーズが似合うのはわが国です。


フランスが苦労しているのが、高レベル放射性廃棄物の最終処分場と、次世代の原子力発電の技術開発です。

意外だったのは、核大国を自任するフランスでも最終処分場が悩みの種であったことです。1990年代から候補地を探していますが、未だに決まっていません。関係者は、核大国の責任で何としてもつくると口を揃えていましたが、地層処分の是非については、原発に理解のあるフランスの世論ですら二分しています。日本の東洋町のことを、さかんに質問してきました。

帰国後、日本では最終処分場に関する法案を審議します。品の良い表現ではありませんが、トイレのないマンションをつくってしまった(売ってしまった?)責任を取るのは当然のことです。ただ、最終処分場の場所ついては、急がないほうが良いのではないかという思いが残りました。東洋町であれだけのことがあったのですから、技術開発、国際協調の動きなどを見ながら、ここは少し時間をかけるのが得策だと考えます。

技術面での解決の一つの方向性が、廃棄物を格段に減らすことのできる高速増殖炉の開発です。今回、同じくマルクールにあるフェニックス原子炉も見ることが出来ました。先日、視察した敦賀のもんじゅと同種の高速増殖炉の実験炉です。もんじゅも古く感じましたが、1974年に運転を開始したフェニックスは、それ以上に老朽化が進んでいます。

開発にかかる膨大な時間とコストには、各国が悩まされています。第四世代の原発の開発が始まってすでに40年。商業発電に至るには、まだ相当の時間がかかります。2年後には、フェニックスは停止され、フランス国内には高速増殖炉の稼動施設はなくなります。フランスにとって、この分野での日本の協力は欠かせません。


最後に、アジア地域での国際協調の必要性について言及して、報告を締めたいと思います。欧州には原子力発電に関する地域協力の枠組みとして、ユーラトムという組織が存在します。ウランの安定供給を目的として50年前に発足した機関ですが、核燃料サイクルや最終処分について協調も視野に入っています。

「アジアトム」構想は、これまでも何度か提唱されてきたのですが、実現には至っていません。アジアでのエネルギー需要が拡大し、核兵器の脅威が高まっている今こそ、アジアトムを設立すべきときです。最大のウラン産出国であるオーストラリアも入れて、パシアトムも検討に値します。

アジアにおいてわが国は、原発に関する技術・実績とも圧倒的に先進的立場にあります。しかし、すでにアジア地域では、ウランの争奪競争は激化しています。また、ウラン濃縮、核燃料サイクル、最終処分など、あらゆる施設を国内ですべて抱えることは、実質的に不可能です。アジアで原発の開発を目指す国が出るたびに、核拡散の脅威に悩まされる状況は、わが国にとって悪夢そのものです。

原子力庁のある幹部に、アジアトム構想を実現するために大切なことは何かと、ユーラトムの経験を踏まえて、アドバイスを求めました。彼は、少し考えてから、「最も大切なのは、運命を共有する意思」だとこたえました。エネルギー・環境、そして核拡散。これらの面で、わが国とアジア諸国は運命を共有しています。必要なのは、厳しい現実を乗り越えようとする政治的な意思なのかも知れません。

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