ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

愛は面影の中に (The First Time Ever I Saw Your Face)

2007年10月05日 | 名曲


 
 この曲は、ロバータの歌った中では最高に美しいバラードではないでしょうか。
 バックの編成はごくシンプルで、ピアノ、アコースティック・ギターにストリングスが加わるだけです。その中で、つぶやきかけるように、そして高音部では伸びやかに歌うロバータの声が、一種厳かに聞こえてきます。





 ロバータは著名なジャズ・ピアニスト兼シンガーのレス・マッキャンに認められて、1969年にデビュー・アルバム『ファースト・テイク』を発表します。『愛は面影の中に』は、その中に収録されていたものです。
 この曲は、もともとはユアン・マッコールが1950年代に書いたもので、1962年にはキングストン・トリオがレコーディングしています。ロバータはデビュー前に学校で教鞭を取っていましたが、合唱団を指導する時によく練習で歌わせていたそうです。


 1971年、クリント・イーストウッドが監督兼主演で『プレイ・ミスティ・フォー・ミー(邦題…恐怖のメロディー)』という映画を制作しました。これはイーストウッドの監督第1作です。ラジオのディスクジョッキーが恐ろしい事件に巻き込まれる、というミステリー映画で、エロール・ガーナーの作で有名な曲『ミスティ』が効果的に使われました。このあたりが大のジャズ好きで知られるイーストウッドらしいところですが、彼はロバータのファンでもあったので、『愛は面影の中に』を主題曲として使いました。
 曲の使用にあたっては、イーストウッド自身が直接ロバータ本人に電話をかけて、許可を貰えるよう頼んだんだそうです。



ロバータ・フラック『ファースト・テイク』


 そこでレコード会社は、『ファースト・テイク』発表後3年経った1972年にこの曲をシングル・カットし、映画の公開に合わせて発表したわけです。しかし、なにせ強烈な刺激やビートを持つ音楽がチャートを賑わせている状況だったので、静かに歌われるこのバラードがどれほど売れるのか、レコード会社もさほど期待していなかったようです。


 しかし72年4月から6週間に渡ってこの曲は全米チャートの1位に上り詰め、ミリオン・セラーとなる大ヒットを記録しました。そしてグラミー賞の1972年度レコード・オブ・ジ・イヤーと、ソング・オブ・ジ・イヤーを獲得したという訳です。


 フォークとゴスペルを合わせたような静かなイントロはとても清らか。ナチュラルな感のあるロバータの歌は知的で、美しいです。
 ピアノとアルコ(弓)で弾かれるコントラバスのみの伴奏となるエンディング、これがまた雰囲気があって良いんですね。





 この曲はロバータが録音する前に、ピーター・ポール&マリーやブラザース・フォアなど、フォーク系のミュージシャンがレパートリーとして取り上げています。
 そのほか、アンディ・ウィリアムス、シャーリー・バッシー、レターメン、最近ではセリーヌ・ディオンなどもこの曲を取り上げていますね。



[歌 詞]

[大 意]
初めてあなたに会った時 私はあなたの瞳にバラ色の太陽を想った
暗く果てのない空に 月とたくさんの星を贈ったのはあなた
初めてあなたとキスした時 世界が私の手の中で震えたように感じた
とらわれた小鳥のふるえる心のように それは私の意のまま
初めてあなたを強く抱いた時 私の胸にあなたの鼓動が伝わってきた
そしてふたりの喜びが世界を満たすでしょう 
この世が終わる時まで 
この世が終わる時まで




愛は面影の中に (The First Time Ever I Saw Your Face)
■録音
  1968年
■収録アルバム
  ファースト・テイク/First Take(1969年)
■シングル・リリース
  1972年3月7日
■作詞・作曲
  ユアン・マッコール/Ewan MacColl
■プロデュース
  ジョエル・ドーン/Joel Dorn
■録音メンバー
  ロバータ・フラック/Roberta Flack (piano, vocals)
  バッキー・ピザレリ/Bucky Pizzarelli (guitars)
  ロン・カーター/Ron Carter (bass)
  エマニュエル・グリーン/Emanuel Green (violin)
  ジーン・オルロフ/Gene Orloff (violin)
  アルフレッド・ブラウン/Alfred Brown (viola)
  セルワート・クラーク/Selwart Clarke (viola)
  セオドア・イスラエル/Theodore Israel (viola)
  チャールズ・マックラッケン/Charles McCracken (cello)
  ジョージ・リッチ/George Ricci (cello)
■チャート最高位
  1972年週間チャート アメリカ(ビルボード)1位(1972年4月15日付~5月20日付 6週連続計6週)、イギリス14位
  1972年年間チャート アメリカ(ビルボード)1位


『愛は面影の中に』



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8 コメント

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こんぶゎんわ~ (Nob)
2007-10-05 18:26:43
出ましたね~ 
彼女と言えば 「やさしく歌って」のイメージが強いですが、私はこっちの方が好きです♪
静かで深いですよね! 
そんなにいろんな人が歌っているんですか!
私はエルビス・プレスリー版を聴いてみたいんですよ。
しかし、これまた 「純ちゃんが選んだブレスリー」 に入っているらしいです(汗)
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うっとりしちゃいました。 (まり)
2007-10-05 21:37:03
詩といい メロディーといい ラヴバラードは こうでなくちゃね。
やはり しっとりと歌い上げるところが 女性シンガーの いいところです。
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Nobさん (MINAGI)
2007-10-06 10:22:18
くぉんにちわ~
出してしまいました~(^^)
「やさしく歌って」も名曲ですが、ぼくもこの「愛は面影の中に」とか「ジェシー」などの方が好きかな。やっぱり「ジーン」と沁みわたるものがありますよね。
プレスリー盤もあるんですか。男声で歌われるとどうなるかちょっと興味ありますね。
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まりさん (MINAGI)
2007-10-06 10:26:36
とても雰囲気がある曲ですよね。
ロバータの歌がいっそう深みを与えているような。
そうですよね、しっとり感が出るのはやはり女性シンガーならでは、でしょうか。
この曲は数あるバラードの中でも好きな曲なんですよ~
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Unknown (土佐のオヤジ)
2007-10-06 16:47:03
この曲、小学生ぐらいから知ってたのに、ロバータ・フラックが歌ってるって事を知ったのは、20才を過ぎた頃でした。「やさしく歌って」と共に、頭から離れない名曲ですね。
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土佐のオヤジさん (MINAGI)
2007-10-06 20:55:00
小学生でロバータ・フラックの曲を知っていた、ってちょっと早熟?(^^)
CMで浸透しているせいもあって、ロバータと言えば「やさしく歌って」というイメージがありますよね。
知り合いの元バンドマン(大先輩)によると、一時は「愛は面影の中に」ばっかり演奏させられた、って言ってました。
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おはよござます。 (ひろ)
2007-10-07 08:06:33
昨夜は、コメントをありがとうございました^^;
ロバータ・フラックと言えば、ボクらはネス●フェのCMでお馴染みの気リング・ソフトリー・ラヴ・ソングしか思い浮かびませんでした><
ボクもNobちゃんの影響で最近は、数多くのミュージシャンを聴く機会が増えてきたので、遅ればせながらも聴いております。
「ゆうつべ」も大変便利なので重宝しますね^^;先ほど、画面をボクに似た(大汗)オーランド・ブルームで聴きなおしてみました・・・なかりいい感じでした。 
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ひろさん (MINAGI)
2007-10-07 10:08:38
ロバータといえば、CMのおかげでやはり「やさしく歌って」が最も有名なんでしょうね。
ひろさんのブログを読んでいると、いろいろ聴いてるな、と思ってましたが、Nobさんの影響も大きかったのですね。Nobさん、幅広いですもんね~

>「ゆうつべ」
 日本語版ができたのでいっそう見やすくなって何よりです~。ぼくも重宝しておりますよ。
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