福田の雑記帖

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本:「下流老人」 一億総老後崩壊の衝撃ー 藤田孝典著 朝日新書 2015年(1)

2017年02月06日 04時51分27秒 | 書評
 いま、高齢者の貧困について関心を持って色々調べている。その過程で今までチェックしていた書籍を何冊か見直したが、その中でも本書は優れた内容の本であった。いま集中的に読み返している。

 「下流老人」とは著者の定義によると「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」とのこと。
 本書は貧困状態にある高齢者に関する資料が豊富に掲載されていてそれだけでも価値がある。
 わが国では裕福な老人も多数いる一方で、貧困な老人がさらに多いことがわかる。高齢夫婦世帯の生活も決して楽でないが、死別、離婚などでの高齢者単身世帯になった場合、男性は4割近くが、女性は5割以上が貧困となっている。

 著者は、貧困対策を行うNPO活動の経験から、具体的なケースと統計データを駆使し、高齢者の置かれている貧困実態を描き出す。本書の前半部分の、我が国の高齢者が置かれている実情と、将来、かなり裕福な一部の高齢者を除き、ちょっとした人生の回り道、例えば同居の家族や、自分、配偶者の病気などによって、ほぼ全てがそう時間をおかずに「下流老人」化するという現実、このことを知らなかった人々に対する忠告部分は見るべきものがある。ある程度の蓄えがある多くの高齢者はこの厳しい現実に気づいていない。著者の言いたいところはここにある。

 最終章に近づくとナショナルミニマムとしての社会保障の再構築を主張している。その中で生活保護についての考え方が詳細に示されている。著者の言うごとく生活保護受給を通じて貧困老人を助けるべきと言う考えは理屈では成り立つが、少子高齢化の状態にある我が国では経済的に成り立たないのではないか。
 さらに、人として必要な「備え」も列挙している。豊富な現場経験を持つ著者ならではのアイデアが示されており、教えられるところが多きい。

本書の構成は以下の章からなっている。
●第1章 下流老人とは何か
●第2章 下流老人の現実
●第3章 誰もがなり得る下流老人
●第4章 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日
●第5章 制度疲労と無策が生む下流老人――個人に依存する政府――

●第6章 自分でできる自己防衛策――どうすれば安らかな老後を迎えられるのか
●第7章 一億総老後崩壊を防ぐために

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