福田の雑記帖

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映画 2014(2):山田洋次監督「東京家族」、小津安二郎監督「東京物語」

2014年03月24日 18時18分49秒 | 映画評
 若干時間に余裕ができたので自分の書斎にセットしたDVD、Blu-rayの再生装置で映画やドキュメンタリー作品を観ている。
 机上にはいろいろ懸案事項が並んでいるために「ながら鑑賞」にならざるを得ない。映画館で見るのとの違いはこの点が大きいが、気楽に観れる、何度かに分けて観れるなど、別な視点からのメリットもある。

 2月末に山田洋次監督「東京家族」、3月中旬に小津安二郎監督「東京物語」を見た。前者を録画で観て、興味を感じて後者を購入した。


 ■「東京家族」は2011年公開予定であったが東日本大震災のために制作がおくれ、2013年1月に公開された。この作品は小津安二郎監督の『東京物語』のリメイク作品と言いうる。
 『東京物語』は尾道に暮らす老夫婦が、東京で暮らす子どもたちの家を訪ねた数日間を描いている。『東京家族』のストーリーは『東京物語』と同じだが、現代風に構成をかえている。
 老夫婦の長男は東京で医院を開業している。長女は美容院をやっている。両者ともに上京直後にこそ両親を迎え入れたが多忙で十分かまってやれず、滞在が長くなると両親をホテルに宿泊させたりする。旧知の友人宅を訪れたがそこの家庭では家族間の折り合いが悪く歓迎されず、東京の生活環境に疎外感を感じてしまう。

 もう一人の息子である次男は舞台美術の仕事をしていて生活は不安定だが明るい恋人がいて二人は両親を歓迎する。明るくこころが休まるひと時を過ごすが、老母は長男宅で急死する。尾道に帰った老父を長男長女はゆっくり世話できなかったが、次男と恋人はしばらく世話し親交を温める。

■「東京物語」は1953年の作である。両作品の間には60年間の開きがある。『東京物語』では終戦直後の作品で、次男は戦死し、未亡人になった嫁が長男宅に同居している、と言う設定になっている。モノクロ映画と言う事もあって終始どこか暗く物悲しい印象が漂う。老夫婦は寂しく尾道に帰ったのであるが、老母は病に伏し死去する。


 前者は蒼井優、他が出演しているが、殆どは私が知らない俳優である。後者では原節子、笠智衆、東山千栄子、杉村春子等の懐かしい名優たちを見る事が出来る。時代背景が異なるために前者は比較的陽気な、若者の自由闊達な生活をも描き出している。

 両作品は、ほぼ同じ情景を描きながら、世代間の考え方の相違、老化と死の問題、生活に追われる余裕の無い都会の生活などを通じて、家族とは何だろうか、と問いかける。 60年間の時の差はあっても人間の本質は変わらない。

 私は概してドラマ仕立ての作品は好きでないが、「家族」については普段私も考えているテーマだから共感を持って見る事が出来た。両監督の視点の違いも面白い。
コメント (2)
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