記憶の中の風景

忘れられない場所、忘れられない季節、忘れられない時間への旅
80%の事実と20%の創作……

Passage’84 夏(16) 沖縄で(3)プールで

2011年11月15日 | 小説:Passage
 ビーチには桟橋があり、海中展望遊覧船とサンセットクルージングの小型の遊覧船が停泊していた。ウインドサーフィンの華麗な夏色の帆が、遠くに見えた。波間にいくつもの白いラインを作りながらジェットスキーが走っていた。僕たちは躍動的な海を遠目に見ながら、ビーチパーラーに向かって歩いた。パーラーの隣にはグリルがあり、2階には瀟洒なデザインの居酒屋の看板がかかり、その建物の向こうにはテニスコートが見えた。
 派手な水着姿の若者たちの間を、ビーチには不似合いな恰好で僕たちは歩いた。僕たちはアパートを出たままの恰好だった。優子のワンピース姿はまだしも、僕の半袖のシャツとコットンパンツにデッキシューズはいささか異質な様相で、僕はそのことで居心地の悪さを感じ、サンダルを履いている優子は歩き難そうで、裸足になるには砂浜が熱すぎた。
 タイミングを外したような間の悪さを少しでも修正するために、僕たちは、パーラーでひと休みすることにした。パーラーでビールを飲む姿は、それほど異質には感じないと思ったからだ。僕は、袋に入ったドラッグストアで買ったアーリー・タイムスをテーブルに置いて、オリオンビールの生を注文した。
 「結局、こうなってしまう私たちの散策」と優子は言って軽快な微笑みを浮かべた。
「こうするために散策したんだ」と僕は言った。「しかし、こんなことなら水着を持ってくればよかったね」
 パーラーには、肌をきれいに焼いた水着姿の若者たちが、トロピカルドリンク飲みながら、開放的な笑顔で夏色の会話をしていた。やはり、異質だ。当てが外れてしまった。
カウンターの中では季節のアルバイトと思われる若い溌剌としたスタッフが、注文のドリンクをリズムカルに作っていた。真夏のエネルギーとバカンスのゆとりがバランスよく交差し隙間なく蔓延していて、居心地の悪さに拍車をかけた。僕だけがそう思っているだけで、優子はまったく気にしていないどころか、妙に落ち着いていた。それが優子の美質のひとつでもあるが。
 「こうなったら、プールで泳ぐしかないね」と僕は優子を見つめて言った。
「時間はたっぷりあるわ。沖縄の時間が、ゆっくり流れるのは体験済みだから」
 僕は優子に微笑みを向けて頷いて、テーブルに置かれたばかりの生ビールのグラスを優子のグラスに合わせ、軽く一口飲んで海を見つめた。視線を遠くに向けるほど、都会の生活で働いてしまう圧縮力によって積層した緊張感が、融けだした氷のように滑らかな垂直面を雫となり落ちていった。
 水平線から静かに湧く白い雲が碧い海を姿を映している光景を見ていると、身体が軽くなっていくのを感じた。僕たちは、沖縄に戻ってきたのだ……視界を支配する海は、日本海でも太平洋でもなかった。普段意識もしない遥か遠くの東シナ海だった。僕たちは確実に都会から遠くに離れ、南の夏の島にいた。そう思うといつの間には居心地の悪さは消えていた。些細で救いようのない僕のスタイリストぶりが、また露わになり、そのことで僕は少しばかり落胆したが、それ冴えも消えた。
 「文字が書けそうなくらい白い雲ね……」と優子が言った。椅子を海に向け脚を組みレモンイエローのワンピースそ裾からのぞく膝の上で手を組んでいた。優子の静謐な視線は、南の島が放散しているエッセンスを五感で感じ取ろうとしている証しだった。僕はその横顔をとても美しいと感じた。
「優子はなんて書くの?」と僕は雲を見つめながら訊いた。
「そうね……」と優子は言って時間をやり過ごした。「やはり、朱夏の二人と私は書くわ」
「朱夏という言葉が気に入ったみたいだね」
「とても素敵だから。圭ちゃんはなんて書くの?」
「僕の落書きは11歳の時から決まっているんだ。相合傘の上にハートを書いて、傘の下に自分の名前と好きな女の子の名前を書く」
「あまり笑わせないでよ」と言って優子は真夏の笑顔を向けた。「でも、それもいいかもしれない。黄色いアンブレラに、赤いハートを書いて、ブルーの文字で圭と優子……なんだか純真にドキドキしちゃう」
「真夏の南の島では、真夏の少年と少女に戻ることができるんだ。コントラストの強い光がそれを可能にする」
 僕と優子はゆっくりビールを飲んだ。静かな時間が流れ、潮騒に輪郭をもたらした。
「なんなら、沖縄にいる間、優ちゃんって呼ぼうか?」
「出会った頃のように。付き合い始めた頃のように。少年と少女のように……素敵かもしれない」
「そう言えば、いつから僕は優子と呼ぶようになったんだろう。覚えている?」
「圭ちゃんは覚えている?」
「もちろん覚えているよ」
「ほんと?」と言って優子は少しだけビールを飲んだ。「もしも二人とも違っていたり、一致していなかったらどうしよう?心配じゃない?」
「僕は100%正解だから心配ないよ」
「私は圭ちゃん語録をつけているから間違いないわよ」
僕たちの視線は、中間で交わりそこに微笑みが生まれた。優子は微笑みながらバッグから、手帳を出して、僕の視線を遮るようにして文字を書いた。文字と言うより文章を書いているようだ。そして書き終えると数ページ先に送り、僕に手帳とボールペンを渡して言った。
「そこに書いて。正解かどうか見てあげる」
「いいよ」と僕は言って、白紙のページに“せっかくの軽井沢でのデートが、受難に合い、僕が行くことができなくなり、果たされず、優子が待ち合わせの軽井沢駅から電話をかけてくれた時……”と僕は書いた。書いている間、優子は視線を僕の手先に注いでいた。その視線は休息を与えてくれるような暖かく優しい視線だった。僕は書き終えるとその視線に瞳を合わせて、手帳を渡した。優子は手帳を受け取り、ゆっくり読んでから微笑のランクを二つくらい上げて僕を見つめた。
「ちゃんと覚えていたのね……ありがとう」と優子は言った。
「僕にも見せてよ。僕だって優子の答えを見る権利はあるよね?」
「もちろんいいわよ」と言って優子はメモ帳を開いて僕に渡した。
見開きの右のページに抒情的な伸びやかな文字で
“心待ちにしていた圭ちゃんと軽井沢で過ごすことが、豪雨で道路が遮られ、圭ちゃんが来れなくなってしまった。圭ちゃんは、家まで戻り待ち合わせの軽井沢駅に電話をかけて私を呼び出してくれた。私は寂しかったけど、でも呼び出してくれたことで嬉しくもあり、圭ちゃんに電話をかけた……その時初めて『優子』と呼んでくれた”と書いてあった。
「良かったね。一致していて」と言って僕は優子にメモ帳を渡した。「どうしよう。優ちゃんと呼ぼうか?」
「いいわよ、優子で」と優子は言って微笑んだ。
「ところで、圭ちゃん語録をつけているって冗談だよね」
「さて、どうでしょう。それは秘密」と優子は悪戯っぽく笑った。
 僕は表情こそ平静だったが、優子の短い文章に過ぎ去った季節への言いようのない愛おしさと物静かなときめきを感じた。そこには、確かに僕たちの原点があった。原点と言うよりも起点と言った方がいいかもしれない。あの日僕と優子は、会うことは叶わなかったが、離れていながら起点を探り当て、身体を寄せ合いながら同じ道を歩き始めた。同じ歩幅で、足音を合わせながら同じ方向を見つめて歩いた。希望の中に映っていた不確かな優子の姿ではなく、正真正銘の生の優子が僕の隣に立った日だった。


Diana Krall - Boy From Ipanema (From "Live In Rio")


 僕たちは、結局プールで泳ぐことにした。ビーチを散策しているうちに、真夏の南の島の水の魔力に吸い寄せられ、身体が疼き、居ても立ってもいられないような焦燥と高揚感を混ぜ合わせたような躍動的な心持になってしまったからだ。
 僕たちは急いで部屋に帰り水着に着替え、優子はその上にパーカーを着て、僕は買ったばかりのTシャツを着て、半ズボンを履いた。着替えを持ち、洗濯物を袋に入れてまずコインランドリーへいってドラムタイプの洗濯機を回した。1時間余りで洗濯が終わる。それまでプールで泳ぐことにした。
 夕方5時を過ぎたプールは、すでに閑散としていて、水もブルーから夕陽を受けてオレンジ色の太陽の道が出来上がっていた。熱心にバタフライで泳いでいた少年と父親の姿もなく、数組のカップルと外国人らしいグループの若者たちが、オレンジ色の太陽の道を横切るように水球のようなことをしながら戯れていた。女ばかりのグループは、トロピカルドリンクをテーブルに置き、ビーチチェアに寝転びサングラスをかけたまま、夕陽を見つめていた。
 僕たちは、バスタオルを受け取り、夕日が見やすいビーチ側の椰子の木の下のビーチチェアに場所をとってプールに入った。優子は、泳ぎは得意ではなく、浮くことと平泳ぎができる程度で、アップした髪をなるべく濡らさないように僕の周りで戯れ、僕は優子の手をとり戯れの平泳ぎに付き合っていた。
 「圭ちゃん、思い切り泳ぎたくて仕方ないでしょ?」と優子は愉しそうな微笑みを向けて訊いた。「よく考えてみたら、圭ちゃんの本格的な泳ぎを一度しか見ていないのね。ムーン・ビーチでブイに向かって泳いだあの姿だけで、あとは熱帯魚君たちと戯れている圭ちゃんしか知らないの。どうかしら、人も少なくなってきたみたいだし、ここで一発本格的に泳いだら。ゴーグルもしっかり持ってきているんだから」
「ホテルのプールでは、本格的に泳がないようにしているんだ。それに競泳用の水着もキャップも着けていないし」僕は優子の手を握り後ろ向きで歩きながら言った。
「一度見たいな。戯れている圭ちゃんじゃなくて、水に乗っている圭ちゃんの姿。東京では見る機会がないものね」
「こうして優子と戯れているのが楽しいんだよ」
「泳ぎたいくせに。でしょ?」
「流す程度は」
「流す程度でいいから見せてよ。見たいの」と言って優子は戯れの平泳ぎをやめて僕の手を握ったまま僕の前に立って微笑んだ。立ちあがるとレモンイエローの地にオレンジ色で抽象的に描かれたハイビスカスの水着が、僕の目の前に迫った。濡れたハイビスカスは、オレンジ色を濃くしさらに抽象性な輪郭を与え、それ以上に艶めかしい胸のふくらみと優子のセクシーな身体の曲線が、眩しかった。
「流す程度だよ」と僕はときめきを静めるように言って、円形のプールで泳ぐ方向を決めるために、辺りを見回した。僕は長い方向を東から西に向かって泳ぐことにした。
「じゃあ流す程度に泳いでくるね」そう言って僕は優子に微笑みを向け、手を離してプールの端に向かって歩いた。
 途中でゴーグルをかけ、潜水で5mほど泳いでから、プールの壁に向かって歩き、そのまま寝そべり壁を軽く蹴って、バックで泳ぎ始めた。ゆっくり大きく水をかき、キックも水飛沫が飛ばないように配慮しながら泳いだ。首を反らせ進行方向に人がいないことを確かめながら、オレンジ色に染まった水をかいた。優子は壁を背にして優しい表情で僕を見つめていた。夕陽の一部が優子を照らし、レモンイエローの水着と優子のまだ焼けていない白い肌を薄くオレンジ色に染めていた。反射した光が緩い波の間で物静かに煌めいていた。
優子の姿が次第に遠くなり、プールの端まで来たことを感じさせ、僕は注意深く進行方向を確認し、クイックターンをしてブレストに入った。
 同じように大きく水をかき、大きくゆっくり水を蹴った。泳いでいるうちに僕の泳ぐラインから人が遠のいた。僕はこんなふうに見ず知らずの人に神経を遣わせるのが嫌で、コースのないプールでは、本格的に泳ぐことを躊躇い、これまで泳がなかった。しかし、優子のリクエストとあれば、スピードは出さないにしても、真剣に泳がないわけにはいかなかった。
 残りの20mほどのうち15m程を潜水で泳ぎ、壁の手前5mで浮かび上がり、クイックターンをした。潜っている間、バタフライで泳ごうかどうか考えた。気を使っても水飛沫が飛ぶことは否めない。しかし、水と戯れても水飛沫は上がるし、泳いで生まれる水飛沫が多少かかっても、大差がなく悪意の水飛沫ではないのだから、許されるだろうと僕は判断し浮かび上がった。
 バタフライは久々だった。それほど自信があるわけでもないのだが、ゆっくり大きくうねり水をかくことで、無駄な動きがなくなり、上手く水に乗れることができた。いったん水に乗ってしまえば、バタフライは特別にキックを意識しなくても、身体のうねりから自然のキックが生まれる。
僕はバタフライで完璧に水との間で親和性を手にすることができた。たぶん軽快な泳ぎに見えるはずだ。いったん親和性が生まれれば、スピードを無闇に上げない限り、相当な距離を親和性を保ったまま、水に乗って魚のように泳ぐことができるはずだった。
 西側の壁には、想定していた以上に早く付き、僕は軽快にターンした。ターンをした時、水面を通してオレンジ色からミッドナイトブルーに変わろうとしている夕暮れのグラデーションが、水の揺らぎを介して見えた。水面に上がれば、沈んでいく夕陽を背中に浴びながらクロールで泳ぐことになる。案の定、夕陽の道の真ん中を鋭角的な波を後ろに作りながら泳いでいた。臍の下で水をかき、ゆっくり鋭く手つかずの水に手を差し込み、身体を半身に目いっぱい伸ばし、水を交互にかく。キックは水飛沫が上がらないほど緩いツービートにする。呼吸の方向は、どちらでもいいのだが、優子が立っている右側ですることにした。優子の姿が次第に近づき、優子の前を通り抜ける。ゆっくり大きく水をかくことだけに注意を払っていると、すぐに優子の前を通り過ぎてしまった。優子は微笑みを浮かべながら、僕を励まし、僕に小さく手を振る。僕はそれに答えるように大きく水をかく。大きく、大きく……これが、水泳の基本で流すということだ。
親和性を得た水は、それほどの抵抗を感じることなく、道を開けてくれる。やがて泳ぎ始めた東側の壁に着く。僕はもう一度ターンをして、クロールで泳ぐ。大きく水をかきながら少しだけスピードを上げてみる。息はほとんど上がっていなかったし、水との間で生まれた身体のうねりに余裕が生まれ、必然的にスピードとリズムを水と身体が一体的に求めた。
 僕は夕陽の道を泳ぐ。
 西側の壁に着いた僕は、ターンして方向を優子の居る場所へ変えた。ゆっくり、静かに優子に近づき優子を見つめる。揺らぎの水の中で優子の下半身が見えた。片方の膝を折って足の裏を壁に付け、静かに佇んでいる。ブルーの壁の前のレモンイエローの水着姿の優子は、溌剌とした成熟さを感じさせ、美脚といってもいいセクシーな脚の揺らぎに僕は、かすかに艶めかしい刺戟を感じた。
僕は優子のウエストにふれ、ゴールタッチとして優子の前に立ってゴーグルを上げた。
 優子は立ちあがった僕の腕にふれて「凄い!」と言った。ウォールナットの瞳に煌めきが深く沈み、微笑みは僕を間違いなく祝福していた。
「少なくとも、これまで私が知っている人で、こんなにきれいに泳げる人はいなかったわよ」
「この程度に泳げる人は、日本中で1000万人以上いると思うけどな」と僕は優子を見つめて言った。
「そんなにいるわけないじゃない」と言って優子は両手を僕の肩の上に置いて笑った。「調査して統計を取ったわけでもないのに」
「統計を取ったわけじゃないけど、これまでの水泳歴の中から推定するとそのくらいいるんだよ」
と言って僕は優子のウエストに手を回した。
「またもっともらしい冗談を言う。それよりみんな圭ちゃんを見ていたわよ。水球している外人さんたちも動きを止めて、しばらく見ていたわよ」
「気の利いた女性で見ていたのは優子だけかな?」
「そんなことはないわよ。ちょっと誇らしくもあったけど、ちょっとジェラシーを感じるほどじっと見つめていた素敵なお姉さんがいたわよ。嬉しい?」
「どの人?」と言って僕は反対側のプールサイドを振り返った。
「いいの、見なくて」と言って優子は微笑んだ。
「気が利いているかどうか確認したかっただけだよ」
「いいの、確認なんかしなくて。まったくもう、圭ちゃんは綺麗なお姉さんに弱いんだから」
「大丈夫、心配しなくていいよ。僕はこれまで特にもてた試しはないし、中学生と高校生の頃、本命以外の女の子からいくつかバレンタインにチョコレートを貰ったけど、みんな冥王星的な女の子ばかりだったから」
「冥王星的な女の子ってどんな女の子なの?」と優子は訊いた。
「冥王星は冥王星だよ。まったくもって普段気にならない遠くにいる女の子という意味かな。だから心配はいらない。ただし、本命は、優子を筆頭にみんな美人さんで僕より頭のいい女の子ばかりだったけどね。スタイルも良かったし」
優子何も言わず首を傾けて、僕を見つめて小さく笑った。
 その後僕たちは、プールに照明が灯る頃までプールで戯れ、コインランドリーへ洗濯物を取りに行き、部屋に戻らず大浴場でたっぷりのお湯に浸かった。相変わらず僕は、温泉や銭湯に行った時のように優子を待ち、優子は僕を待たせた。それはそれでとても幸せなひと時だった。



ジャンル:
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キーワード
オレンジ色 レモンイエロー コインランドリー バスタオル ミッドナイトブルー ツービート バレンタイン 1000万 ウォールナット 微笑みながら
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2 コメント

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誠実さ (沙織)
2011-11-16 17:34:10
もう暗いからこんばんは♪

<「文字が書けそうなくらい白い雲ね……」>と優子さんが言った、そこからの会話が微笑ましく、とても圭さんらしいですね。
日向の匂いがする、ほのぼの感とおとぼけぶりがいいのね。
物語の前半でよく描かれていた、優子さんの翳りが、薄くなったのは、圭さんの性格や会話も大きな力になっていることを感じさせてくれる。
それは、表現していく上で、とても地道な作業だと思うの。愛情が前提であっても、二人の密接な関係が、大きな要因であっても、それだけではない”小技”が、きちんと描かれていて、繊細さを感じます。

そして、深まりのきっかけを白い雲に見立てた手帳の白紙に書くところは、ある種の回想シーンですよね。実に上手く小物を使っているという、作者の技を感じます♪
技師、C-moonさん♪

そして
<あの日僕と優子は、会うことは叶わなかったが、離れていながら起点を探り当て、身体を寄せ合いながら同じ道を歩き始めた。同じ歩幅で、足音を合わせながら同じ方向を見つめて歩いた。希望の中に映っていた不確かな優子の姿ではなく、正真正銘の生の優子が僕の隣に立った日だった。>

確信に満ちた考察。こうしたひとつひとつの圭さんの心情ともC-moonさんの回想ともとれる微妙な描き方が、共感を呼ぶと思います。
作者の誠実さと主人公の誠実さが一致するのね。

そして後半は、『Boy From Ipanema 』の軽快な曲に乗って圭さんのひとり舞台。
たまにはこういうシーンがあってもいいかもです。
そしてたぶん、近々優子さんがビーチを歩くシーンでは、『The Girl From Ipanema』が流れるのでしょう♪
でしょ?
私だけではなく誰でも分かりますよ〜♪
でも、とてもよく似合っている。

プールでの会話も素敵というか面白い!

<「少なくとも、これまで私が知っている人で、こんなにきれいに泳げる人はいなかったわよ」
「この程度に泳げる人は、日本中で1000万人以上いると思うけどな」と僕は優子を見つめて言った。>

<「大丈夫、心配しなくていいよ。僕はこれまで特にもてた試しはないし、中学生と高校生の頃、本命以外の女の子からいくつかバレンタインにチョコレートを貰ったけど、みんな冥王星的な女の子ばかりだったから」
「冥王星的な女の子ってどんな女の子なの?」と優子は訊いた。
「冥王星は冥王星だよ。まったくもって普段気にならない遠くにいる女の子という意味かな……」>

さて、本日のベストセンテンスです!

<「真夏の南の島では、真夏の少年と少女に戻ることができるんだ。コントラストの強い光がそれを可能にする」>

朱夏を純粋に過ごせば、真夏の少年と少女に還ることができるのね♪

このセンテンス、意味が深いと思うな。

主人公は? ( C-moon)
2011-11-17 05:47:34
沙織さん♪>

おはようございます。

文中のどこかで、会話文でも考察している部分でもどこでも、ほっと一息ついたり、できれば微笑んでもらったりしていただけるように日々努力研鑚していきたいと思います。
本当は、笑いがとれればいいのですが、そこばかり狙っていると、下手なジョーク満載になり品位の低下は免れないので、抑制しています。
結局のところ、独りよがりになってしまうから。

それはそれとして、いつものことながら、よく読んでいただいてありがとう♪

手帳を白紙のページを二人が見つめていた、白い雲に見立てて……
僕は明示していないわけですが、イメージとして重ねて描いているわけで、沙織さんの診立ては正しい。
そんなふうに想像力が膨らみ感じていただけると「やった!」と思わず歓喜している自分がいます。

曲ですが、バレバレですね♪
もちろん本家は『The Girl From Ipanema』で『The Boy From Ipanema』は、分家のわけで、この物語も登場する女性が――優子と香織――主人公で圭は脇役なのかもしれません。
描き進むうちにそんなふうな予感♪

さて、朝です。沙織さんもごゆっくりの出勤かと思います。
どうぞ、充実した一日を♪

寒いから暖かい支度で♪

それではまた。

これからアッップです!


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