千葉県の戦争遺跡

千葉県内の旧陸海軍の軍事施設など戦争に関わる遺跡の紹介
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伊号第六三潜水艦航海長、大野博少佐の死

2007-03-16 | 千葉県の地域情報
千葉県船橋市の中心地とでもいうべき、本町の繁華街に程近い、船橋市民文化ホール裏の路地に面した小さな墓地に、ひときわ大きな角柱の墓がある。これは、「海軍少佐大野博」の墓である。法名は「輝海院殉勇博道大居士」で、この人の最期を象徴している。小生、以前からこの墓のことは知っていたが、地方の名望家出身の下士官兵クラスの戦没軍人の墓によくある規模にも関わらず、海軍少佐という肩書きがあり、気になる存在であった。近所の稲荷屋さんで大野家の親戚の家を教えてもらい、そこで親戚の人からいくらか話を聞いたので、ここに記すものである。

<大野家のあった船橋市本町1丁目周辺>


大野博は「船橋尋常高等小学校から千葉中学(現・千葉高校)に進み、1930年(昭和5年)4月に海軍兵学校に61期生として入学、1933年(昭和8年)卒業。 海兵卒業後は、軍艦浅間、山城、羽黒に乗艦した。日中戦争勃発後の1938年(昭和13年)4月、特別陸戦隊副官兼第五艦隊司令部附となり、5月厦門(アモイ) 島攻略戦で敵前上陸、同島占領。1938年(昭和13年)11月には海軍大尉に昇進した。1939年(昭和14年)2月2日伊号第六三潜水艦の航海長兼分隊長として訓練に参加、豊後水道の水の子灯台付近で碇泊中、伊号第六三潜水艦は僚艦である伊号第六〇潜水艦に追突され、沈没。この事故は、伊号第六〇潜水艦が、伊号第六三潜水艦の舷燈と艦尾燈を漁船二隻の燈火と見誤り、間を通り抜けようと直進したことによる。なお、伊号第六〇潜水艦は、艦首に大きな損傷を負ったが、沈没を免れた。 この事故で大野博大尉も、伊号第六三潜水艦の81名の殉職者の1人となった。大野博大尉は、同日少佐に特進。享年二十八歳。この事故で沈没した伊号第六三潜水艦の船体の引揚げ、殉職者遺体の収容は、翌年1月下旬にようやく行われた。」(Wikipediaより引用)

上記記事は、大野少佐の墓誌に書かれている内容を含んでいるが、墓誌にはもう少し詳しく、伊号潜水艦同士の衝突事故が起きた場所を水の子灯台から「三一九度五小浬附近」としている。
この伊号潜水艦同士の衝突事故は、有名な事故であり、今も現地にそのときに犠牲となった人々の慰霊碑が建っている。
惜しくも、若い命を不慮の事故でなくした大野博少佐は、船橋の本町一丁目の製麩業を営む「麩屋」という屋号の家の出身で、地元の人からは、「麩屋のせがれ」と呼ばれていたらしい。父は大野善兵衛、母は正子、兄が一人で夭折、弟で中央大学に進んだ四男隆とやはり海軍に入った五男信夫がいた。父大野善兵衛は町会議員をつとめ、消防関係や各種委員にもなった町の世話役であった。大野善兵衛家では長男が夭折したので、大野博少佐は事実上嫡男であったが、潜水艦の衝突事故で亡くなってしまった。現在の大野家の当主も、大野博少佐の息子ではないそうである。また麩屋の家は、マンションに立替えられ、昔の家としては現存しない。
その生前のエピソードが、「船橋地誌 ~夏見潟を巡って」(長谷川芳夫著・2005年・崙書房出版)のなかに、「一丁目の麩屋(屋号)の伜が、同期の友達と舟遊びに来たときは、次々と船から海に飛び込んで、沖に向かって泳いだっけ」という、筆者のまさに父親の言葉として紹介されている。

大野博少佐がなくなったときは、伊号第六三潜水艦の航海長兼分隊長であったが、小生の昔お世話になった方がやはり海軍兵学校出身の元海軍大尉で、戦時中、伊号第五六潜水艦の航海長をしていた。フィリピンで全魚雷を撃ちつくした後、敵と遭遇、きわめて長時間潜航して難を逃れた経験をお持ちであったが、惜しくも戦後軍事評論家として活躍中に交通事故でなくなった。

<伊号第五六潜水艦>


大野博という人には、小生あったこともないが、恐らく海兵在校中か卒業時と思われる前のエピソードや経歴から、地元では秀才といわれ期待されていて、心身健全な、輝かしいような青年であったのであろう。だが、陸海軍を問わず、かつての軍隊では下級将校や下士官は、最も減耗率の激しい「消耗品」であった。
それは、主に戦闘においてであるが、事故でも同じであろう。
もし、大野博が千葉中学から海軍兵学校などの軍隊の学校ではなく、普通の大学に進んでいたら、この人の人生は随分と違ったものとなり、天寿をまっとうしたかもしれない。

<大野博少佐の墓の近くにある太宰治の植えた夾竹桃>
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