福島正伸の「夢しか実現しない」

一人でも多くの方に、夢と勇気と笑顔を与えたい

馬のダイちゃん(第二部)

2007年10月08日 | Weblog
いよいよ、「馬のダイちゃん」第二部、感動のフィナーレへ。


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 ある知人に、今回のことを相談しました。洗いざらい全部話しました。
 その知人は、普段から特別親しいという訳ではありませんでしたが、私の中での彼女の存在が、少し特別なところにあったので、この人に話してみようと思い立ったのです。彼女は自分ひとりで事業を始めたばかりの獣医さんでした。
 小さなプレハブを診療所がわりにして文字通り、体を張って頑張っている、凛とした方でした。
 きっとこの人なら、他の人と違うことを言ってくれるに違いない、私はそう思い、私の背中を押してくれるようなそんな言葉を求めて会いに行きました。
 その獣医さんは言いました。「その一途な思いを貫いてごらん。あなたがこんなに本気だということを、周囲にもっと伝えなきゃ。頑固になって、わからず屋になって、駄々っ子みたいになるのも、いいんっじゃない?本気なんでしょ、決めてるんでしょ、もうそれしかないでしょ。そうした場合、対外相手はそんなあなたに飽きれて、そして次に諦めるから・‥。私は本気なんだということを相手が飽きれて諦めるまで伝えてみるというのも、ひとつだと思うよ。」
 私には、何にも変えられない励ましのメッセージでした。
 そうか、私の武器は、この「思い」だけなんだと気づかされました。
 よし、この気持ちでひとり戦い続けようと決め、御礼を言って、一路車を飛ばしました。
 運転している私は、妙に穏やかな気持ちになっていくのを感じました。
 翌朝、上司に自分の思いを再度伝えました。
 一時の感情で言っているのではないということ、私なりにきちんと決意があるということ、会社の提示している金額は持ち合わせていないけど、その提示金額の五分の一なら用意できる、馬を手に入れた後の具体的なことは何も決まってないけど、必ず何か方法を探す、私に内密に話を進め、馬の行き先を決めたり、処分場へやったりしても、私は追跡して探し出し、連れ戻すつもりだ。第三者に会社の希望額で売ったとしても、私はその相手から買い戻すつもりだ。お金はサラ金でも何でも貸してくれるところはいっばいあるんだ、と。
 直属の上司は、ただでさえ残務処理に追われていて頭が痛い毎日だというのに、よりによって、こんな部下がいる訳ですから、さぞ大変だった事でしょう。
 でも、彼もー緒に馬の仕事をしてきたのだから、私の気持ちは痛いほどわかるんです。
 彼は大学生のとき馬術部にも在籍していたし、愛着のある馬と別れるのは、どんなにか身を切られる思いをするか、というものちゃんと知っている方でした。
 彼はそんな私に飽きれて、部長にこの件を預けました。
 私は同じ態度を取り続けました。冷静になるべく穏やかな口調で気持ちを伝えました。
 とうとう取締役が登場しました。応接用の部屋に通され、困りきった表情を浮かべてこちらを見ていました。まるで蛇に睨まれたカエルです。でも怯んでなんかいる場合ではありません。
 私は本気なんだということを、わかってもうらおうと必死でした。
 しばらく話は平行線でした。向こうは、ため息ばかりついています。ため息つきたいのは、むしろこちらの方です。細い一本の糸がなんとか私を支えていました。
「私が会社の提示している金額を持ち合わせてさえいれば、今すぐ売ってくれますか?そういう事であれば、この足でサラ金からお金を調達してきます。親にも相談しましたが、協力はしてもらえませんでした。誰に話してもダメです。だからこの足で、サラ金に行って耳そろえて全額用意してきます。その方法しか思つきません。そしたら売ってくれますか?」
「いや、そう言うことを言っているんじゃない。あなたの人生はどうなるんだ、大きな馬を引き取ったって、飼う場所も無ければ、世話する人もいないだろう。大きな足手まといになるだろう?」
「何を言っているんですか?ダイちゃんがいない人生の方が、よっぽど考えられません。農家のどっか空いている納屋でも見つけて、何とかそこで飼わせてもらって、私が朝晩世話しに通います」
「何馬鹿なことを言って・・・」
「私にしたら、他人の手に渡ってしまったり、処分される事の方が、よっぽど馬鹿な話です。」
 私を支えていた一本の細い糸が、とうとう切れてしまいました。涙が溢れ、止まらなくなりました。憤りも悲しみも悔しさも孤独感も全て、こみ上げてきました。
「もう泣くな、君の気持ちはよくわかった。少し時間をくれ」
 疲れきって、職場に戻りました。他の先輩スタッフは、完全に私の応援団になっていました。
 最初は色々説得を試みようとしてくる人もいましたが、その時はもう完全に応援の姿勢でした。
 もうやることはやったのだ・・・次はどうしようか考えなくてはと思いつつ、何も考えられない状況にありました。「心ここにあらず」とはよく言ったもので、そんな状態で四、五日ぐらいたった頃、部長から連絡を受けました。色々相談の結果、私が用意できると言った五分の一の値段で、ダイちゃんを売るとのことでした。
 最初ピンときませんでしたが、じわりじわりと喜びがこみあげ、その時ばかりは神様の存在を意識し、感謝したのを覚えています。
 先輩スタッフもー緒に喜んでくれ、私の使命が果たせた嬉しさでいっぱいでした。 早速、獣医さんに連絡をいれ、結果の報告とお礼を伝えました。
「あたしは何もしてないわよ、あなたが全部やったのよ。」と相変わらずクールでしたが、「あたしの知り合いに、ダイちゃんを置いてもらえそうなところがないか、数件あたってみるね」と言ってくださり、お礼を伝えても、伝えても、伝えきれない程でした。
 問題は山積みで、一難去ってまた−難、という状況でしたが、その時の私は「きっと何とかなる」「必ずうまくいく」と信じるしかなく、根拠の無い、幸せな未来を想像して進んでいくしかなかったように思います。
 いつか、どこかでまたダイちゃんと馬車営業して、皆に喜んでもらうぞっ!全ては今始まったばかりだ、と感じていました。
 諸手続きを済ませ、正式に私のものになりました。上司や会社の決断に深く感謝しました。
 いよいよ今日は、旅立ちの日。しばらくの間、離れ離れになるけど、すぐ迎えに行くということ、必ず馬車営業をするということを、心の奥深くに誓い、安比高原から新天地に移動するための、トラックに乗ったダイちゃんの後姿を、複雑な心境で見つめていました。
 最後トラックが出発したとき、ダイちゃんの大きな噺きが聞こえました。
「わかってる、わかってる・・・。待っててね」
 そして一年後、私はダイちゃんのいる、小岩井農場へ転職しました。
 仕事内容は、馬とは関連の無いことだったのですが、同じ敷地にいるためすぐ会いに行けるということだけで充分でした。
 あれから五年、色々と寄り道をしてきたけれど、ウエディング馬車パレードという夢に向けて、準備していきたいと思っています。

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この手紙を読み終えるまでに、八丸さんは、何度も声がつまり、頬を伝った涙がぽたぽたと落ちました。

発表が終わるとすぐに、会場の中で警察官の中本さんが手を上げました。会場全体が、急に緊張感に包まれました。中本さんは、立ち上がって、太く、大きな声で言いました。
「八丸さん、お伝えしたいことがあります。実は、私は来月から警察署長になります。県北の地域が管轄ですが、私の所管内であれば、私が許可しましょう。年2回行なう今年の交通安全パレードでは、先頭をダイちゃんの馬車に御願いしたい。そうすれば、みんなに知ってもらうことができる。それをマスコミに取り上げてもらえば、次の機会につながるかもしれないでしょう。どうですか?引き受けてもらうことはできませんか?」
 止まらぬ涙を拭きながら、八丸さんは答えました。
「えっ・・・ホントですか・・・」
「みんなにダイちゃんを見せてあげてください」
「・・・ホントにいいんですか?」
「是非やりましょう!」
「ううう・・・・うううう・・・・」
 八丸さんは返事もできずに、ただうれしさのあまり、泣き続けました。
 会場中からも、嗚咽する声が聞こえました。

後に、中本さんの絶大な支援の下、この日のために練習を重ねてきたという地元の小学生たち70人の鼓笛隊とともにダイちゃんは誇らしげにパレードを先導し、地元のマスコミにその勇姿は取り上げられました。

その直後、隣町にあるリゾートホテルから、連絡がありました。
「たまたま新聞を見たよ。以前手書きのパンフレットを送ってもらったけど、その時はわからなかった。すばらしいね。ウエディング馬車について、一度相談させてもらえないだろうか?」
ホテルの責任者からの連絡でした。
 こうして、とうとう八丸さんの夢であるウエディング馬車が実現することになりました。ただ、パレードというわけではなく、リゾートホテルの敷地内を散策する程度でしたが、それでも八丸さんにとっては、夢が実現したことに変わりはありませんでした。

同時に牧場用地も見つかり、いよいよ牧場作りもスタートしました。日中は、ご主人とふたりで一緒に、当時荒地だった農地を手作業で開墾整備していきました。
少しずつでしたが、ダイちゃんの仕事も増えていきました。しかし、ダイちゃんを養い、生活するためには、まだまだ、まったく仕事量が足りません。
他に何があるのだろうか、八丸さんはまた、新たな悩みに苦しむことになりました。

 どうしていいかわからずにいたところ、たまたま地元紙で奉仕活動の団体が発足したというニュースを耳にしました。地域の清掃活動をしたり、献血の促進活動をしたりします。早速、入会を決め申し込み手続きをしたところ、そこには地元の名士といわれる人がたくさん参加していました。その中に、たまたま地域の活性化をしている方がいて、ダイちゃんのお話しする機会がありました。
「八丸さんといったね。あなたの話を、私の所属している団体で話してもらえませんか?」
 こうして、八丸さんに初めての講師の依頼が来ました。

 講演の当日、八丸さんは、町の中を走るウエディング馬車パレードをやりたいという、自分の思いを必死に伝えました。参加者は、みな興味津々で話しを聞いてくれました。そして、講演が終わると、びっくりするくらいの拍手が、いっせいに沸き起こりました。
みんなが八丸さんの夢に関心を寄せてくれました。参加者の多くが、これからの地域の活性化をどうするか、まじめに考えている地元の人たちばかりでした。八丸さんの発想に、驚かない人はいませんでした。

しばらくして、八丸さんに地域団体の方から連絡がありました。
「盛岡をどう活性化するか、私たちはずっと考えてきました。その結論は、三つのキーワードにまとめることになりました。それは、『盛岡』『観光』『馬』です。この三つの中で、私たちは、馬のことがまったくわかりません。地域の未来のために、是非協力していただけないでしょうか?」
八丸さんがお願いしたいことを、反対にお願いされることになったのです。
「こちらこそ、なんでもします。私とダイちゃんにできることなら、何でもします!」
「それで、実は・・・馬車ってどうかなって、思っています。八丸さんは、馬車を持っているんだよね」
「はい、持っています」
「地域を活性化するためには、他の地域ではやっていないことをする必要があるんです」
「はい、私もそう思います」
「町の中心部を走る『定期運行馬車』ができないかと思っているんです。それをダイちゃんにお願いできないだろうか?」
 「す、すごい!『定期運行馬車』ですか!・・・やります!」
「いろいろ難しい問題もある。でも、私たち全員で力を合わせれば、必ずできます。町中の人たちと一緒に協力し合えば、定期運行馬車だって必ずできると信じています。」
「・・・できます!・・・できます!・・・ううう・・・」
 また、八丸さんの目が真っ赤になって、涙があふれてきました。
一方で牧場作りもゆっくりではありましたが、確実に前進していました。それまでは知人の牧場に預けていたダイちゃんですが、いよいよ手作りの馬小屋も完成し、自分達の牧場で飼うことができるようになりました。

定期運行馬車については何度も打ち合わせしまいた。八丸さんは、馬のこと、馬車のことを、何回も何人もの人にたくさん話しました。

そんな頃、たまたま警察官の中本さんから連絡がありました。
「八丸さん、ダイちゃんは元気ですか?盛岡の警察本部に帰ってきました。何かできることはありませんか?」
「あります!あります!」
八丸さんは、中本さんのところに飛んでいって、定期運行馬車という夢の話をしました。
「地域の未来を担うというのは、私たち警察官にとっても大切なことです。私も是非お手伝いしますよ」
「本当ですか!?」
「安全であるためには、何もしてはならないのではなく、地域の未来を担うことを安全に行えるように支援することが、私たちの役目ですから。任せてください」
「・・・ううう・・・」
また、泣きました。

そして、社会実験として、町の中をダイちゃんの馬車が走るというニュースは、地元紙の一面を飾りました。ダイちゃんが走るコースまで詳細に紹介されました。
実験の当日は、たくさんの人がダイちゃんのまわりを取り囲み、まるでお祭りのような盛り上がりになりました。そして起業家大学で知り合えた大切な仲間達も、大勢駆けつけてくれて、まるで自分のことのように喜んで下さいました。そしてダイちゃんの馬車を引く姿は、さまざまなマスコミに取り上げられました。
 町の反応は、予想をはるかに超えたものでした。85%の人が、“是非実現したい”、と言ってくださり、“ないほうがいい”、と言った人は、ほとんどいませんでした。
 渋滞の問題も、コースをうまく設定すれば、ほぼ解決することができました。
 それでも、車が馬車の後ろにつくと、ゆっくり走らなければならないことに変わりはありません。馬車の後ろについてゆっくり走らざるを得なくなった、ある運転手は、アンケートに対して、次のように答えました。

「この町で、急いでどうするんだ」

 こうして、八丸さんとダイちゃんは、自分たちの夢を超えた、地域の将来を担う定期運行馬車の実現に向けて着々と準備が進んでいます。

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■10月20日12:30より、岩手県立大学講堂にて、
「感動と共感のプレゼンテーション・いわて大会」
を開催します。

お問い合わせ090-2957-5516(オフィス朝比奈・朝比奈)

■そして、さらに東京、岩手、島根からの選抜者によるプレゼンテーション大会を
12月15日(土)に東京で開催します

○感動と共感のビジネスプラン発表会
【夢(ドリーム)プラン・プレゼンテーション2007】
(アントレプレナーセンター、HPにて、詳報)
http://www.entre.co.jp/dreamplan/index.html

感動の涙を拭くタオルをご持参ください!


福島正伸



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Unknown (オリーブ)
2007-10-08 09:47:19
だめです!泣けます!
盛岡の町をはじめて、馬車運行のテストをした時のことを思い出しました。
みんなで泣きましたねー!
Unknown (Unknown)
2007-10-08 21:10:23
この話を読むだけで、

いったい、

何人の人生がかわるのでしょうね。


ほんとうに、

凄いです。
Unknown (遠野の永田)
2007-10-08 22:12:40
八丸さんとダイちゃんのストーリーを
福島先生自ら、ブログで紹介してくださって
ありがとうございます。

いつも、みなさんが持って私に足りないもの!?
「何かある、ナンだろう?」と
ずっと思っていました。

本当に申し訳ないことをしてしまった。
事の重大さに気がつきました。
ブログを読んで、わかりました。

「私に足りないもの」がようやくわかりました。
私なりにですが。


八丸さんをはじめ、このブログに出てきた起業家大学の皆さんは、懐が深く、心優しい人達ばかりです。

もっと早い時期だったら、気づかなかったかもしれない
今、やっと気づけるようになりました。
「大切なこと」

「試練」や「困難」は乗り越えた後は、すばらしいがあるんですね。

今まで、自分の中になかった「やさしい」が生まれてきました

八丸さんの強さ、やさしさ、大きさは、こんなすごい体験があって、今があるんですね。
そして、みなさんの応援も。

すべてのことが、ストレートに強烈に伝わってきました。
ありがとうございます。
感動をありがとうございます (toshi)
2007-10-11 00:35:06
先週のアタッカーズ講演会に出席させていただきました。福島先生のお話はすばらしくとても感動しました。駐車場のおじさんからヤクルトまでうるうるし通しでした。ダイちゃんのお話もすばらしいですね。
私もこのような夢を早く見つけたいと強く思います。
ダイちゃんに逢ってきた! (夢よつば)
2007-10-11 14:56:14
夢創塾の湧き水を見た帰り、どうしても八丸牧場に行ってみたいと思い、グルグルと道を迷いながら主人とラリー犬でダイちゃんに逢ってきました。

八丸牧場の馬さんたちは、上品でゆったりとかまえていた。

一際大きい、話題のだいちゃんは何度みても美しい!
前回に来た時、音パニックだった私はダイちゃんに
頬をつけたのです。
美しい透明感溢れている大きな目に、私はとても癒
されました。ありがとうダイちゃん

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