secret boots

ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

2013年 映画総括

2014-01-25 22:47:07 | 不定期コラム
2013年は29本の映画を映画館で鑑賞した。
同じ作品を二度見に行ったことはないので、29作品ということになる。
やはり前半は良いペースで見られたのだが、後半からは満足に映画館には行けなかった。
見逃した作品も多く、悔いは残る。
さっそく、ベスト10を発表しておこう。

1位「悪の法則
抽象的な物語で、ほとんど具体的に何が起こっているかわからない。
にもかかわらず、死に方は誰もが具体的でリアルである。
絶対にハッピーエンドにならないことをわかっていながらも、どんどん物語に引き込んでいく展開は、誰もが心を射貫かれる。
ほとんどが対話で構成されているこの映画はどこか小説的で、どこまでも映画だ。
はっきりとしたメッセージ性が、「何が起こっているかわからない」現実をさらに怖くする。
本当に見たくない映画だが、鮮烈に心に残る。

2位「ゼロ・グラビティ
重力というメタファーに、孤独/関係性というメッセージを込めた。
静寂とサウンド・エフェクト、サウンド・トラックともに秀逸で、本当に映画館を飛び出して宇宙空間に放り出されたような恐怖がある。
長回しの撮影に、カメラアングルまでが縦横無尽に動くその映像体験は、1年に1本の出来だ。

3位「ゼロ・ダーク・サーティ
プロパガンダ映画と言われても仕方がないほど完成度の高いドキュメンタリー。
悲惨な現実に、理想的な物語を見出した監督の手腕は見事だ。
戦場の空気まで漂ってくるような緊迫感ある映像は、「ハート・ロッカー」で見せた技量がウソではなかったことを証明している。
こちらも、静寂がすばらしい演出効果を生んでいる。

4位「風立ちぬ
個人がどのようにして時代の中で生きていくのかをまざまざと見せられた。
この物語は、2013年という年だからこそ描けたのではないか。
反戦でも反核でも、帝国主義でもない。
思想や主義を超えたところに、人が生きることの悲しみがあるのではないか。
主人公の声優だけがひどかったが、それ以外は監督業引退にふさわしい作品だ。

5位「トランス
利用しているのは男か、女か。
おしゃれでこわく、そしてかわいい映画。
画面の色の使い方も秀逸で、絵を盗んだ後、どのように絵が消えていくかを思い出すその泥沼の真実は、どす黒くおぞましい画面で構成される。
それでもどこかさわやかな結末にもっていかれるのは、なかなか楽しい。

6位「愛 アムール
2013年は密室映画が多かったのか。
究極の密室映画が、この作品だった。
ハネケ監督らしい、静寂とピアノの旋律は、二人の関係を象徴する。
もう一度みたい。
けれども、それには勇気が要る。
人が一人を愛することの偉大さと、罪深さを思い知る。

7位「ライフ・オブ・パイ
こちらも密室劇だ。
予想していた内容と違っていてびっくりしたのを覚えている。
人が生きるには物語が必要だ。
それは現実と空想を結ぶ、一つの真実となる。
トラとの物語を終えたとき、その極限状態を示す最後のシークエンスに心がふるえる。

8位「愛さえあれば
スザンネ・ビア監督のラブコメディ。
消せない過去を抱えた男が、いかに現在に向き合うかというテーマを持つ。
笑えるし、かわいいし、ばかばかしい。
けれども、どうしても他人事だと思えないのは、そこにしっかりとした悲しみがあるから。
悲劇と喜劇には境はないのかもしれない。

9位「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命」
批評にできなかった作品。
二人の男がのこした遺恨が、息子たちへと繰り返される。
善と悪との価値観が交錯し、倫理観を激しく揺さぶる。
死んだ男と生き残った男、その息子たちは等しく悲しみを味わう。

10位「アイアンマン3
前作ではどこか「おごり」があり、「アベンジャーズ」もやはり食傷ぎみだった。
その反省を踏まえてか、アクション映画として大成している。
ヒーローであるという目線を失わずに、しっかりと「トニー」らしさが描けていた。
「アイアンマン」をやめると言うことが、次の「アベンジャーズ」にどのように変化をもたらすのか楽しみでもある。

今年も次点は多く、迷った部分もある。
けれども、ワーストはダントツで「レ・ミゼラブル」だろう。
全くおもしろくなかった。
なぜこれがこれほど多くの人に評価されているのか理解できない。
ダイハード」、「96時間リベンジ」も捨てがたいが、こちらは続編なので妙な安定感はある。
前作までの良さを全て消してしまったという意味では、罪深いのだが。

2013年の総評としては、映像技術が洗練されてきて、ようやく「撮りたいものがあるからその技術を使う」ということができてきつつあるのかと思う。
とりあえずCGやとりあえず3D、とにかくIMAXというような技術だけが先行した映画が少なくなってきた。
同時に、何を撮るのかということと、どう撮るのかという目的と技術(方法)が洗練されつつあるということでもある。
もはや観客が度肝を抜かれるような映像だけで映画を撮ることは難しい。
安価でCGを利用できるようになってきたからこそ、きちんとそのなかに工夫と哲学が反映されていなければ感動は与えられない。
役者も役者で、「ない」ものを「ある」ように演じるという根本的な力が試される作品が多くなっている。
一つの映画に関わる人間が多くなる傾向がある昨今であるからこそ、人の力、チームの力が傑出しなければ大作と称される作品は成立し得ない。
技術が向上すればするほど逆接的に人間の本来の力が試されるとはおもしろい。

2014年も続編やシリーズ物だけではなく、新しいアイデアの作品が多数公開されるだろう。
よりよい作品が正しい評価を得ることを期待して、この文章を閉じよう。


コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ゼロ・グラビティ | トップ | かぐや姫の物語 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2014-01-27 18:58:51
今度、生涯ベスト10のランキング作ってもらえませんか?
書き込みありがとうございます。 (menfith)
2014-01-27 21:35:26
管理人のmenfithです。
宝くじの換金に行って参りました。
今回は売り場のおばちゃんに見せるまでは一切自分で確認しない、という方法で挑戦してみました。
結果、3万円の投資は6千円となって帰ってきました。

脱サラ計画はまだ実行に移せそうにないです。

>Unknownさん
書き込みありがとうございます。

生涯ランキングですか。
さすがにそれは考えたことがないですね。
映画館でみたものとそうでないものがあるので、比較が難しそうです。

いつになるかお約束は出来ませんが、ちょっと考えてみます。
気長にお待ちください。

コメントを投稿

不定期コラム」カテゴリの最新記事