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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

LOOPER/ルーパー

2013-01-24 21:35:38 | 映画(ら)
評価点:73点/2012年/アメリカ/118分

監督:ライアン・ジョンソン

ループするのは時間ではない。悲しみの連鎖である。

2044年、大都市カンザス・シティは貧富の差が拡大していた。
その時代、まだタイムマシンは開発されていなかったが、その30年後には開発されていた。
しかし、未来から過去への一方通行である。
未来では人を殺すことができないので、未来で人を殺すために、30年前の現在へタイムトラベルさせて、その人間を過去で殺させるという方法をとっていた。
その未来から来た罪人を殺すのが「ルーパー」と呼ばれる人だった。
ルーパーは、未来から送られてくる覆面された人間を、瞬時に殺すのである。
ルーパーには厳しい掟があり、未来で罪を犯したルーパーは、自分が30年後の未来の自分を殺さなければならない。
その場合、通常通常銀である報酬が、金になっている。
死体を見たとき、金が巻き付けられていれば、それは自分の未来の死体であるということだ。
ルーパーの友人のセスから、未来で起こっているルーパー狩りの話を聞いたジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、未来から送られてきた自分を見て、思わず殺すのを躊躇する。
標的を逃がすのは重大な罪となる。
なぜ30年後の自分は、未来からやってきたのか、ジョーはルーパー仲間から追われながら、未来のジョーを追うことになる。

ロビン、いや違った、「ダークナイト・ライジング」でも出演していたジョセフ・ゴードン=レヴィットの主演作品。
いつまでたっても名前を覚えられなかったけれど、この映画で覚える気になった。
ジョセフ・ゴードン=レヴィット。

ヤフーのレビューではあまり評価が高くないが、これはおもしろい。
見に行くべき作品だろう。
特にブルース・ウィリスが好きな人は、おすすめの映画だ。

設定がかなり入り組んでいるので、わかりにくいだろう。
すこしだけ予備知識を入れていったほうがいいかもしれない。
しかし、中盤以降ははらはらさせられることになる。
SFは当たり外れが大きいことがネックとなるが、これは良作だ。

▼以下はネタバレあり▼

最近、「社会を変えるには」という小熊英二の本を読んでいた。
その一節に、
最近の若者は、という老人が考えているのは、自分は変わる気はないが相手に変わって欲しいという考えが裏にあるからだ。
というようなことが書かれてあった。
小熊英二の本については、改めて書こう。
けれども、この映画の本質は、実はここにある。
だから、この映画はおもしろい。

説明し始めると、この映画の設定だけで終わってしまうかもしれない。
劇中で明かされる説明は、都合の良いように省略されている。
タイムパラドックスなどの細かい設定まで気にし始めると、この映画は成り立たない。
劇中で説明されているところだけを問題にするのが正解だろう。
その意味で、「ミッション:8ミニッツ」に似ているかもしれない。

30年後の未来では、レインメーカーと呼ばれる一人の男が、とてつもない力を身につけ、ルーパーを過去に送り続けていた。
つまり、ルーパーを殺すことで、その権力を揺るぎないものにしようとしていたのだ。
そのことを知っていたオールド・ジョー(ブルース・ウィリス)は、レインメーカーというその素性の知れない男を殺そうとする。
過去に来たジョーが、未来へ戻るには、レインメーカーが過去の段階でいなければよいのだ、と考えたのだ。

一方、ヤング・ジョー(ゴードン=レヴィット)は、オールド・ジョーを殺せば、すべては元通りになると考えた。
だから、一時は取り逃がしたオールドだが、殺せばまたルーパーとして30年間は生き続けられる、それがルールだと考えている。
こうして、二人は対決することになる。

もう一つのプロットは、レインメーカーはだれで、なぜ一人でマフィアやギャングをつぶすことができたのか、ということだ。
そのもう一つの要素は、「テレキネス(TK)」と言われる特殊能力である。
人口の10%が突然発症したと言われる、物を触れずに動かせる能力である。
レインメーカーはシドと呼ばれる子どもだった。
彼はとてつもないTK能力を持っていて、人を爆発させるほどの力を持っていた。
その力によって、マフィアを一人で壊滅させてしまったのだ。

ヤングとオールド、そしてシドは終盤ついに邂逅を果たす。
そしてヤングは、オールドがシドの母親を撃ち殺すことを予感し、その結果シドが孤独のまま生きていき心をゆがませていくことを予感する。
オールドを止めるためには、ヤング自身が死んでしまうことだった。
だから、自分を銃で撃つのだ。
物語の発端であった、自分自身を殺すように。

この結論に至るまでに、きわめて巧みに伏線がはってある。
私はそれにうなるしかない。

ジョーは自分のために生きてきた。
それはオールドがヤングに語るところで明かされる。
軽薄で、自己中心的で、麻薬におぼれ、快楽主義者である。
しかし、一人の女性に出逢うことで、麻薬を克服し、女性を愛することを知る。
オールド・ジョーの行動動機はすべて、妻を取り戻すことにある。
だが、実はオールドも自己中心的な行動規範は変わっていない。
自分の快楽のためではなく、自分の妻との生活を守るためと変わっただけである。
だから、レインメーカーかもしれないというだけの理由で子ども殺すことができる。
妻を守るためには、手段を選ばない。
それは利己的で、自己中心的である。

状況を変えたいと願いながら、自分は変わるつもりはないのだ。
自分が得た彼女との幸せを壊されたくはない。
だから、レインメーカーを殺すしかない。
ヤング・ジョーが踏み出したのは、自分も変わろうという〈覚悟〉の世界だ。
やがて母親を失った孤独な子どもが、レインメーカーとなるかもしれない、その状況を変えるためには、相手を変えようとするだけの発想では変わらない。
自分が変わること、すなわち死ぬことでしか状況は変化しないのだ。
それを簡単に言えば、「成長」ということもできるだろう。
だが、そんな生やさしいものではない。
なぜなら、その代償は自分の死であるからだ。

自分が存在しなくなれば、オールドジョーも来ないから、タイム・パラドックスに陥るではないか。
そんなことはどうでもいいのだ。
問題は、状況を変えると言うことはどういうことなのか、という点にある。
相手に変われ変われと要求しても、自分が変わる気がなければ、状況は変わらない。
まさにそのことをこの映画は描いている。

この映画に説得力を与えているのは、設定ではない。
設定はむしろ荒唐無稽にさえ見える。
けれども、SFの世界観が秀逸だ。
世界が荒廃し、これまであったテクノロジーを利用しながら、そのなかにSF的要素を加えている。
だから、荒唐無稽な印象を受けずに、すんなりのめり込める。
目から麻薬を注入するなど、説得力がある。

そして、なんと言っても、年老いた二人が似すぎているということだ。
日本人メイクアーティストが参加して、3時間もかけてメイクして、ゴードン=レヴィットをブルースに似せるという方法をとったらしい。
すでにオールドがブルースだということを知っている私にとっては、序盤の段階で仕草までもゴードンがブルースに見えてしまう。
表情、話し方、所作、すべてがブルースなのだ。
物まねの域を超えている。
この映画の肝は、二大スターとなっている二人がどのように「似ているように見せるか」だったのだ。

ジョセフ・ゴードン=レヴィット、名前、覚えといてやるよ。
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