言語空間+備忘録

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ユーロの特質

2009-11-08 | 日記
安達誠司 『恐慌脱出』 ( p.187 )

 この「ユーロブーム」のメカニズムを詳述すると、以下のようになる。
 まず、1999年1月に単一通貨ユーロが導入され、ユーロ参加国の金融政策は、ECB(ヨーロッパ中央銀行)が一括して行うことになった。そのため、ユーロ域内ではECBが政策目標とする短期金利は同一水準となり、各国政府が発行した国債利回りである長期金利もほぼ同一水準となった。
 本来、国債利回りには各国ごとの経済事情、とくに財政事情が反映されるため、単一通貨ユーロを各国が導入したとしても、その利回りは各国で異なるはずである。ユーロ参加国の国債利回りには、このプレミアムがほとんど加味されず、ほぼ同一金利となった。
 一方、ユーロ参加国のマクロ経済状況は、依然として各国で大きく異なっていた。とくに、すでに世界有数の先進国の仲間入りを果たしていたドイツやフランス等のユーロの「中心国」の経済成長率と、スペインやアイルランド等の「周辺国」の経済成長率には、大きな格差があった。経済発展段階においてドイツやフランスほど成熟していない(というより発展が遅れていた)スペインやアイルランドの成長率は、ドイツやフランスと比較して高かった。
 このような状況下で、前述のように国債利回りだけが一律に低下した。これは、ユーロ圏の低い金利で資金を調達し、スペインやアイルランドの高成長が期待できる案件に投資すれば、ほぼ確実に高いリターンを得られることを意味していた。
 また、ユーロ圏の金融政策は成長率が低いドイツやフランス等の中心国にあわせて運営される可能性が高かった。とくにドイツは、アメリカのITバブル崩壊の影響を最も強く受けており、なおさら緩和政策に対する要請が強かった。スペインやアイルランド等の周辺国にとっては、低金利政策の継続によって、高成長と低金利の併存が続くことを意味した。そのため、スペインやアイルランド等の周辺国への投資が一気に活発化した。これにより、周辺国では不動産ブームが起こった。実際、図表6-4で示すように、ヨーロッパの不動産価格上昇率は、成長率と金利の差が大きい国ほど、すなわち高成長・低金利の程度が大きい国ほど、高かったのである。
 さらに、このブームに拍車をかけたのが、東欧や中欧諸国のユーロ参加の機運の高まりである。これらの国は旧ソ連経済圏から脱却し、ユーロへの参加を実現すべく、経済発展のために積極的な投資促進策をとった。
 当時の状況では、東欧・中欧が将来的にユーロに参加すれば、これはスペインやアイルランド同様の投資ブーム(成長率と金利のギャップの拡大)が到来することは確実であった。海外資本は、われ先にと投資資金を流入させた。そのため、スペインやアイルランドで発生した不動産等の投資ブームが、東欧・中欧に波及した。

(中略)

 なぜユーロがドルや円に対してこれほど強かったのかという問いに対し、「ユーロ圏の経済が予想外に強かったから」という理由がまことしやかに言われていた。実はこの間、ドイツやフランス等の「中心国」の景気がそれほど好調ではなく、ユーロ圏全体の景気がそれほど良かったわけではなかった。それゆえ、為替分析などで用いられるいわゆる「景況感格差」でユーロ高になったとは言えない。
 むしろ、ユーロ高をもたらしたのは、前述の「高成長・低金利」の組み合わせが実現した「周辺国」、および将来的に「高成長・低金利」の組み合わせが実現する可能性が高まった東欧・中欧諸国に向けて、グローバルに展開している投資資金が多く流入した、という資金フロー的な要因であろう。

(中略)

 しかし、アメリカ発の金融危機によってこのような「ユーロフォリア」は、完全に剥落しつつある。
 まずは、不動産ブームの過熱によるインフレ圧力の高まりによって、ECBやその他のヨーロッパ諸国の中央銀行は、こぞって政策金利を引き上げ始めた。この流れは、2007年半ば以降の原油高によるインフレ率の上昇によって加速した。そのため、不動産ブームや株式ブームの1つの前提条件であった「金利を上回る成長率」という構図が崩れ始めた。これによって、不動産ブームの到来が早かった国から順番に不動産価格の下落が始まり、アイルランドからイギリス、スペイン、そして東欧・中欧へと不動産価格の下落は波及していった。
 この動きに、世界的な金融危機が拍車をかけた。サブプライム・ローン関連の証券化商品から始まった市場機能停止は、その範囲をあっという間に広げ、信用市場全般の機能停止となった。それによって不動産や株式の購入資金も手当てできなくなり、ヨーロッパの不動産市場でも一気にバブルが崩壊した。
 そのように考えると、すでに不動産価格の調整局面に入ったユーロ圏では、今後は、投資家の換金や投げ売りという形で資金流出が相次ぐ可能性が高い。


 ユーロ圏では、経済状況・経済成長率の異なる国々で、ほぼ、同一金利になったために、ユーロ高になり、経済成長が遅れている 「周辺国」 でバブルが発生したが、バブルは崩壊しつつある、と書かれています。



 「金利を上回る成長率」 だったというのですから、「動学的効率性の条件」 を満たす、本物の経済成長だったのだろうと思います。したがって 「周辺国」 の景気は本当に良かったはずであり、バブルだと思っていた人は、ほとんどいなかったであろうと思います。ユーロ高も、ユーロの 「実力」 と捉えられていたのではないかと思います。

 そして、その 「本物の好景気」 の背景には、経済成長段階の異なる国で、ほぼ同一の金利水準になってしまう ( ならざるを得ない ) という、ユーロ圏の構造的な要因が存在していた、というのですから、ユーロ未参加の国々が、ユーロに参加しようとするのも、当然といえば当然だったとも考えられます。



 しかし、「マンデル・フレミング理論」 を引き合いにだすまでもなく、経済政策としては、金融政策がもっとも効果的である、とされている以上 ( 「ルーズベルトの政策 ( 量的緩和 )」 ・ 「政友会政権の昭和恐慌対策」 参照 ) 、域内でほぼ同一金利にならざるを得ないユーロ通貨は、経済運営の面で、かなり厳しい制約を課されることになります。

 事実上、( 各国ごとに最適な ) 金融政策はとれない、と考えられますから、大部分が、財政政策によることになると思います。ユーロが成功し続けるなら、経済政策として、財政政策も有効である、と立証することになるとも考えられます。その意味でも、ユーロ圏・通貨ユーロの命運 ( 成功し続けるか否か ) には、興味のあるところです。



 なお、ユーロが、その構造的な要因によって好景気を迎えたなら、なぜ、日本の各地で、同様の好景気が発生しなかったのか。それがわかりません。ドイツ・フランスに対するスペイン・アイルランド、という構図は、東京に対する地方、という構図と、実質的には同じだと思われるのですが。。。
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