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財政構造を成長モデルから変えろとは言うけれど

2011-11-16 | 日記
水野和夫・萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』 ( p.180 )

萱野 最後の章ではこれまでの議論を受けて、日本の経済は今後どうなっていくのか、そしてどのような方向にすすんでいくべきか、という議論をしたいと思います。

(中略)

水野 これについては、日本にかぎらずアメリカでもヨーロッパでもそうだと思いますが、低成長時代に入ったにもかかわらず経済成長を前提とした税収・歳出構造のままであることが大きな問題だと思います。

萱野 現実にはかつてのような経済成長はありえない社会になっているにもかかわらず、かつてと同じような財政構造のままだから、赤字が膨らまざるをえないということですね。

水野 ええ。一般会計の歳出と税収の推移をあらわした折れ線グラフのことを、経済界では「ワニの口」とよくいいます。つまり、歳出は右肩上がりに増えるのに、税収は下がっていくから、ワニのアゴが開いたかたちに見えるのです。
 バブルが崩壊した一九九〇年代から現在にかけて法人税は大幅に減税されました。減税によって企業活動が活発になり、企業の業績が上がれば、結果的に税収は増えるはずだという想定だったのでしょう。しかし実際にはそれが増収となって跳ね返ってこないという状況になっている。つまり、減税しても名目GDPが拡大しなくなっているのです。
 その一方で、社会保障費はうなぎのぼりに増えています。いま一般会計の歳出のなかで額がもっとも大きいのは社会保障費ですよね。歳出のほうは、高齢化の進展による社会保障費などの自然増や、国債の利払い費の増加などで、名目GDPの増減とは関係なく増えるようになりましたので、名目GDPに占める歳出の比率が上がっていくのは当然でしょう。

(中略)

萱野 ただ、低成長を景気循環における一時的な不況として考えると、どうしても財政構造は成長モデルのままになってしまいますよね。たまたま現在は不況だけど、また好景気になれば昔のように問題は解決されるのだ、と。

水野 そうです。でもバブルが崩壊したあと、四回の不況を日本は経験して、そのたびに財政出動をしたけれど、景気は回復しませんでした。ですから、もうそろそろいまの財政赤字が巨額であるのは、不況が原因だとか、景気循環的な問題で生じているとか考えてはいけないと思うのです。
 二〇〇九年に政権交代した民主党は、歳出を徹底的に見直して平成二五年度までに一六・八兆円を捻出できるとマニフェストで謳い(うたい)ました。内訳は、国の総予算二〇七兆円を徹底的に効率化し、ムダづかいや不要不急な事業を根絶することで九・一兆円、埋蔵金の活用などで五・〇兆円、租税特別措置などで二・七兆円、です。それが本当に実現すれば、従来の成長モデルとは異なる予算編成がおこなわれる可能性もあったと思うんですが、現実には簡単ではありませんでした。

萱野 民主党は政権獲得後に成長戦略がないと突き上げられて、慌てて成長戦略を掲げましたよね。やっぱり低成長を前提として政権運営をするというのは難しいんでしょう。
 とくに社会保障を低成長モデルに移すことは難しいですね。公共事業なら利権の問題もあるし、ムダな部分というのもわかりやすいから、削減しても世論は納得しやすい。でも、社会保障のほうは、低成長だからこそもっと拡充しろという意見もでてきやすいし、年金については、受給者の世代は自分たちが働いていたときの経済成長のモデルで給付されるのが当然だと考える。ただ、このまま成長モデルで社会保障制度が維持されていくなら、財政赤字は相当深刻になっていくでしょう。
 ギリシャがまさにそうだったわけで、あの国は選挙のたびに集票のために公務員のポストを増設したり、社会保障を手厚くしたりということをずっとやってきました。みんな経済が成長してパイが拡大すると思っているから、そうなってしまうんですね。財政的なリソースが無限にある、たとえいまは財源が足りないとしても経済成長やインフレによってそれも将来は解決されるだろうという思い込みで、政府に財政支出をどんどん要求することができた。それをつづけてきた結果、もう解決できないところまで財政赤字が累積してしまったというのがギリシャの教訓です。なにせ労働人口の四人に一人が公務員ですからね。

水野 年金の受給額も驚くべきものがあります。ギリシャは現役時の九割以上の額を年金としてもらえる。しかも、OECD加盟国のなかでギリシャの年金支給額は退職前平均年収比率でもっとも高いのです。スペインも八割台で高い。一方、日本は三割台で英国などと同じ水準です。そして、ドイツやアメリカは日本より少し高く四割台です。

萱野 まさにギリシャの事例は、無限の経済成長を前提としてきたことの必然的な帰結ですね。
 しかし現在はその前提が崩れてしまった。なぜ崩れてしまったのかというと、ここまで議論してきたように、交易条件が大きく変わり、市場が飽和化してしまったからですね。市場経済があらゆる領域へと拡大し、もはや市場が新しい需要や欲望を喚起できなくなってしまった。


 すでに日本などの先進国では、経済成長が不可能になっている。なぜなら、交易条件が大きく変わり、市場が飽和化してしまったからである。政府の財政赤字は、経済成長が不可能になっているにもかかわらず、いまだに経済成長を前提とした政策を続けているからである、と書かれています。



 この考えかたには、たしかに一理あります。

 しかし、そもそも経済成長しなければ、状況は改善しないのではないでしょうか?

 日本の場合、日銀がデフレを許容していることもあって、財政面でも、徐々にデフレシフトが敷かれつつあるとも考えられます。たとえば年金支給開始年齢をずらしたり、年金支給額を減らす動きや、消費税率を上げようとする動きです。

 しかし、年金を減らすといっても限度がありますし、消費税を上げるといっても限度があります。これらの方法では、日本の財政赤字は解消(解決)しないでしょう。

 つまり、財政赤字問題を解決するためには、経済成長するしか方法がないということです。



 そもそも、先進国は今後も経済成長を続けることが可能だと思います (「資本主義における定員15%の制約!?」参照 ) 。

 たしかに交易条件は大きく変わっていますが、資源価格が上昇すれば代替技術の開発が進みます。また、市場が飽和化してしまったとはいえ、iPhone・スマートフォンといったヒット商品は出ています。悪いところにばかり注目すれば、著者らのような考えかたも成り立ちますが、もっと良いところにも目を向けてみてもよいのではないでしょうか。

 もっとマクロな視点でいえば、イギリスはかつての栄光を失って没落したといわれていますが、それでもいまのイギリスは、全盛期(大英帝国の時代)に比べGDPは大きく増えています。全盛期のイギリスよりも、現在のイギリスのほうが豊かで、生活水準も高いのです。

 したがって、先進国ではもはや経済成長は不可能である、などと考える必要はなく、ペースは落ちるかもしれないが、今後も経済成長は続くと考えるほうが自然だと思います。なお、経済学者も、同様な考えかたをされているようです (「投資のもたらす経済成長と、限界生産力逓減」参照 ) 。



 したがって、著者らは財政構造が成長モデルのままではいけない、と主張しておられますが、

 私としては、財政構造を経済成長「不可能」モデルにする必要はないし、また、してはならないと思います。あえていえば、成長「減速」モデルがよいのではないかと思います。



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